第一章: 10 揚げ物地獄の終焉
ズゴオオォォォン!!!
唐揚げ王の腹が裂けた。
奥から赤黒い光が漏れて、まるで“巨大なフライヤー”が暴発寸前みたいに揺れている。
油煙で喉が焼ける。汗が滝みたいに流れる。
「な、なんだよこれ……!!?」
目の前の化け物は膨れ続けている。
皮は割れて、油の蒸気が吹き出して……もう止められない。
【警告:ボス形態変化 → 第二段階】
視界に浮かぶ赤いウィンドウ。
心臓がドクン、と跳ねた。
---
「止めないと……! 爆発する……!」
ゆめが叫ぶ。
「わかってるけど、どうすんだよッ!!」
俺は卵を握った。残り3個。
……いつものみたいに投げればいいのか?
でも、さっき吹き飛ばされたじゃないか!
——でもやるしかねえ!
「たぶん! いや、ひょっとすると! スコーしだけでも効くかも!!!」
全力で投げつける。
パキィィィィン!!!
卵が弾け、光の鎖が走った。
【スキル発動:エッグチェーン】
【補正値:おそらく上昇中……】
(まただ! なんでこのアナウンスだけ、ヘンに歯切れ悪いんだ!?)
鎖が裂け目に絡んだ。
けど次の瞬間——
ズボォォォォッ!!!
油の噴射で鎖ごと吹き飛ばされた。
「効いてねえええええ!!!」
俺は頭を抱える。
---
「みんなで合わせるんだ!」
ゆめの声が飛んできた。
ゆうじが叫ぶ。
「全員の武器を重ねろ! 今しかない!」
安井さんはホチキスを構える。
「俺もやる! でんちゃんのために!!」
藤広は白い霧を撒く。
「ひぃぃ……怖いよぉ……!(でもこれでお前らの視界も揺らぐだろ)」
(……よし。やるしかねぇ!)
---
「もう一回だ……!!!」
俺は卵を掲げた。
【スキル発動準備:エッグチェーン】
【周辺補助スキルと連携可能状態】
【注記:不確定要素検出。推奨行動=全員同時】
(……あ? 今なんか“全員同時”って出なかったか!?)
「ゆめ! トングでこじ開けろ! ゆうじ! 水ぶっかけろ! 安井さん、針で止めろ! 藤広、霧撒けえぇぇぇ!!!」
声が勝手に出た。
気づいたら、みんな動いてた。
---
卵を投げる。
パキィィィィン!!
光の鎖が走る。
【スキル発動:エッグチェーン・リンク】
【コンボ成立:拘束 → 固定 → 割裂 → 冷却 → 視覚攪乱】
【結果:成功確率……たぶん上昇中……】
「たぶんってなんだよぉぉぉおお!!!」
俺の叫びに重なるように、全員の一撃が繋がった。
ズガァァァァァァン!!!
唐揚げ王の胴体が裂け、油と蒸気が天井へ吹き上がる。
光の柱が突き抜け、耳をつんざく轟音がフロア全体を揺らした。
【討伐完了:惣菜軍団の王】
【ボーナス獲得:コンボ発動による隠し補正】
---
「……はぁ……はぁ……」
俺はその場に膝をついた。
体が重い。視界が揺れる。
「おそらく……たぶん……スコーしだけど、勝ったんじゃねぇか……?」
思わず笑いながら言った。
「バカ。勝ったんだよ」
ゆめが拳で頭を小突いた。
その顔は、泣きそうに笑っていた。
俺は汗だくで笑う。
安井さんは「ホチキス、もう針切れです……」って落ち込みつつも誇らしげだ。
ゆうじは「コンボ成功……理論上は不可能のはず……」と呟いている。
藤広は「ひぃ……死ぬかと思った……」とか言いながら、妙に目が冷静だ。
油煙が晴れ、崩れた売り場の奥に、新しい扉が見える。
その先には、まだ地獄が待ってる。
でも今は——
「……やったぞ!!!」
そう叫ばずにはいられなかった。
——続く。
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