第34話--三年生の春、消えたネックレスと凛の想い--
三年生になり、彩と凛は再び同じクラスになってから約一か月が経った。
春の光が差し込む教室で、私は少し緊張しながら座席に着く。冬休み明けの冷たい言葉と
距離を思い返し、心の奥に小さな棘を抱えたままだった。
その日の体育の授業、更衣室で着替えをしていると、私はふと首元に手をやった。
すると――スフェーンのネックレスが、もうそこにはなかった。
――あ……
胸の奥が少しひんやりとする。ネックレスを外したのは、自分だった。
冬休みの間、凛と過ごした特別な時間を思い出し、あの温かさを噛み締めた。
しかし、彩の中で「もう、終わったんだ」という気持ちが芽生えていた。
自分で決め、自分の手で外すことが、自然で正しいと思えたのだ。
その瞬間、友人の望月 結が私に気づき、少しからかうように笑いながら言った。
「ねえ、彩……失恋したの?」
彩は驚きつつも、微笑みを浮かべて答える。
「違うよ。ただ……自分で外しただけ。」
翠も横でにっこり笑い、私の微笑みに呼応する。友人たちとの日常は、
こうしてほんの少しずつ私の心を軽くしていく。
だが、胸の奥にはまだ凛の存在がくっきりと残っていた。
その日の体育授業、凛もまた彩の首元に目をやった。
――なんで……
凛は心の中で呟く。冬休み明けに放った冷たい言葉で距離ができ、
彩が近づいてこなかった日々。
だが、彩の首元から自分の贈ったネックレスがなくなっていることは予想外だった。
胸の奥に、言い知れぬ焦燥と切なさが湧き上がる。
放課後、私は一人で歩きながら、冬休み明け最初の登校日のことを思い返す。
あの時、冷たい言葉を口にし、距離を作ってしまった自分。
それが彩を遠ざけ、今の状況を招いたのだ。
家に着き、私は制服のままベッドに横たわる。
目を閉じ、指先で枕を握りながら、静かに涙を流す。
「彩……会いたい。ずっと私のあげたネックレス、つけていて欲しかった……」
言葉に出すことで胸の奥の思いが押し寄せ、嗚咽混じりに涙が零れ落ちる。
何度も彩に謝る。
――ごめん……
――ごめんね、彩……
冷たくしてしまったこと、距離を作ったこと、伝えられなかった気持ち。
私の心は揺れ、彩への想いはより強く、切実なものへと変わっていった。
ベッドに寝転びながら、心の中で強く誓う。
――もう、彩を一人にしない。
その夜、凛は涙を拭いながらも、胸に残る彩への想いを抱きしめ、静かに眠りについた。
外は春の柔らかな夜風が吹いていた。
凛の心に芽生えた後悔と決意は、これからの日々に彩との再接近をもたらす序章と
なるのだった。
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