第二章:二人の影
だが、学者が手を汚すことはできぬ。
南冥は二人の協力者を選んだ。
ひとりは彫金師・
酒に溺れ零落していたが、その技は他に代えがたい。南冥は意匠図を差し出し、低く告げる。
「この金印を削り新たに五文字を刻め。『
彫辰は、それを歴史の遺物に化かす企てに戦慄した。だが、南冥の眼には金銭の欲ではなく、使命に燃える炎が宿っていた。それに気圧され、彫辰は首を縦に振った。
もうひとりは志賀島の貧農・甚兵衛。
無学だが、素朴で口が堅い。南冥は彼に告げる。
「お前が掘り出すのだ。歴史は人の手であらわれる。これを果たせば、藩の恩寵はお前を一生養う」
甚兵衛の胸に芽生えたのは欲ではなく、「藩に尽くした」という誇りであった。
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