第4章のあらすじ 後半
「君がテーマパークちゃんだね。噂はかねがね聞かせてもらっているよ。僕はこの家の当主をしております、ポープ=クレードゥールです。娘がいつもお世話になっております」
「いえ、私の方が色々と助けていただいていますし。今回も私を養子に取ってくださって、本当にありがとうございます」
「いやいや、むしろ養子に来てくれてうれしいのはこちらなんだよ。少し下世話な話になるけれど、君は王子様のご寵愛めでたいそうじゃないか」
「そんなことはないですよ。少しお世話していただいただけで」
「十分だよ。十分すぎるほど特殊な立ち位置だよ。これで、君を養子に迎えた我が家は、王子様とのコネを築く鍵を得たというわけだ」
「もしかして最初からそれが目的だったのですか?」
「まさか。プエラがうるさくてね。君を家族に迎え入れたいと言って聞かなかったんだ。それで色々と調べさせてもらった。正直、君は当家に迎え入れるに値する、いや、こんな家に収まっているべきではないほどに素晴らしい人だと思う」
(サーモンズ)
12月26日の朝7時ごろ。王宮の専用食堂へ向かう途中の回廊で、国王はベッルムドーノー家の当主、ハワードに出会いました。ジョンのお父さんですね。
「イオーマークなのだが、あやつは戦争を嫌っている。儂の跡を継ぐあの男は、平和を愛し、戦いを嫌っているのだ」
(コンサルト)
12月27日の日付が変わる頃、その日の職務を終えた王子は、エンソー国王からの呼び出しを承けて彼の居室までやって来ました。
「ヌンノウ国王イオーマークは、戦をせぬ王になれ」
「そのように唐突に「時間は与える。方途は探せ。年明けにはお主の即位を公に宣言する」
「父上、落ち着いてくださいませ」
「儂は落ち着いておる。この上なく冷静だ」
「しかし、どうしてこんな急に退位なさるご意向を固められてしまわれたのですか」
「儂は退位するなど言っておらぬ」
「はい?でも、それではこの国の王が2人になってしまいますが」
「この国に王の名を冠するものが2人居たとて、今までと何が違うのだ。同じではないか」
イオーマークはエンソーからの戴冠を受けました。つまり、厳密な手続きを経たわけではありませんが、今のヌンノウには2人の国王がいるということです。
(クラウンド)
12月29日のお昼頃。
エンソーは食堂て昼食を取っているところでした。いつもは一瞬で平らげてしまうランチプレートを、何か手間取っている様子でチマチマ食べていくところから何か様子がおかしく、10分から20分程かけて半分ほどを口に運んだところで急に呼吸困難に陥り、その場に倒れたのだそうです。
(ポイズンド)
「料理に毒は盛られていなかった。父上の卒倒には何か別の原因があるはずだ」
「では、その原因というのは」
「それが分からないから困ってるんだ」
(インタビュ)
「あの場で毒を盛られていないのであれば、遅効性の毒があのタイミングで作用してきたとか、国王様が継続的に少量の毒物を摂取しているとか、あるかもしれない。呼吸麻痺なんて普通の生活で陥ることないぞ」
(サニタイズ)
12月31日、午前1時頃。イオーマークは走っていました。食堂にて倒れてから療養室で眠っていたエンソーの容態が、急変したとのことです。
テタヌス。皆さんの呼び名では破傷風と呼ばれている病気です。初期症状は顔や手足の痺れです。進行すると全身の骨が折れてしまうほど強く痙攣し、そのまま死に至る事も多い病気です。
イオーマークはエンソーの腕や体を押さえつけてでも無理やりに痙攣を止めようとしますが、あまりにも筋肉の収縮が強すぎて体中の骨が粉々に砕けてしまっているのを、ほんの指先が触れただけで悟るほどに肉体に芯がありません。飼い犬や飼い猫のお腹のビラビラに触れているときのように、骨がないのが分かってしまったのです。
これでは万が一に命が助かってしまったとしても、戦争に出征することはおろか、まともな人間としての生活など送れるわけがありません。
壊れ行く父親の側にただ呆然と立ち尽くして、イオーマークには何もできませんでした。回復魔法であるキュアには、日常的な怪我や痛みを排除する程度の効果しかありません。たとえば骨折や出血多量をどうにかできるような魔法はありません。そんな、世の中を甘く見すぎな考え方はさっさと捨てたほうがいいと思います。
春に芽吹く火花の種を植え、
夏に勝利の花が咲きみだれ、
秋に実りと民の笑みを獲り、
冬に春への種をまた蒔こう。
種蒔く人なくして冬明けず。
芽吹きなくして春は訪れず。
(ウィンター)
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