偽りの罪で追放された悪役令嬢、記憶喪失になったら測定不能の魔力が覚醒したので、伝説のグリフォンと辺境で国を作ることにしました
藤宮かすみ
第一話『偽りの断罪』
シャンデリアがきらびやかな光を放つ、王立学園の卒業パーティー会場。その喧騒のただ中で、私は人生の頂点から奈落の底へと突き落とされた。
「セレスティア・フォン・ヴァレンティス! 貴様との婚約を、今この時をもって破棄する!」
声の主は、私の婚約者であるこの国の王太子、ジュリアン・フォン・ランスター。彼の美しい顔は怒りに歪み、その隣では男爵令嬢エリナがか細い肩を震わせ、涙ながらに彼にしがみついている。
「ジュリアン様……っ」
「エリナ、もう大丈夫だ。こいつの悪行はすべて、私が白日の下に晒してやろう」
悪行? いったい何のことでしょう。私が呆然と立ち尽くすなか、ジュリアン様は糾弾の言葉を続けた。
「貴様は、その嫉妬心から、聖女として目覚めたエリナ嬢に数々の嫌がらせを行った! 教科書を破り、ドレスを汚し、挙句の果てには階段から突き落とそうとしたそうだな!」
周囲の招待客たちの間に、さざめきが波のように広がり、侮蔑の視線が私に突き刺さる。そんなはずはありません。私はエリナ様と言葉を交わしたことすらないというのに。
「お待ちください、ジュリアン様! 何かの間違いですわ! 私はそのようなこと、決してしておりません!」
必死の訴えも、彼の耳には届かない。「言い訳は見苦しいぞ!」と、吐き捨てるように一蹴されるだけだった。
私は助けを求め、会場の隅にいる両親と兄に視線を送った。けれど、父は苦虫を噛み潰したような顔で目を逸らし、母と兄は氷のように冷たい視線を私に向けるだけ。
――誰一人、私を信じてはくれないの?
「静粛に!」
ジュリアン様の声が響き渡る。彼はエリナ様の肩を優しく抱き寄せ、高らかに宣言した。
「セレスティア・フォン・ヴァレンティスを、国外追放処分とする! 二度と、この国の土を踏むことは許さん!」
その言葉が、私のすべてを終わらせた。意識が遠のくなか、ジュリアン様の陰でエリナ様が勝ち誇ったように口元を歪めたのを、私は確かに見ていた。
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