エントロピーロスト ~魔法、科学、格闘の物語(コメディ)~

ぬるティー

第1章 科学・魔法

第1話 光の予兆 ψ(x,t)=Acos(kx−ωt+ϕ)

2045年、アメリカの僻地。10年前に突如として現れたQ-lioの障壁—熱も、電波も、光も、地場も、一切の物理現象を通さない謎の隔離エリア。

多くの研究機関や軍隊が内部への進入を試みたが、全く手掛かりを見つけることはできなかった。

やがて10年もの時が流れ、誰もその存在について話題にすることもなくなった。

近くにあった観光名所もさびれて人が離れ、今では砂漠の真ん中に忘れ去られた異物として存在している。

そんな中、一人の科学者が計測ロボットと共に地道な観測を続けていた...


KENZO:「今日は、いつもの研究所じゃなくて、障壁近くまで配達か、GPSが示してるのはここなんだが...」


YUKI:「あ、配達の方ですね。配達先のYUKIです。こんな場所まで本当にありがとうございます。」


KENZO:「俺はKENZO、どこでも届ける配達員だ。しかし、こんな場所で何やってるんだ?」


YUKI:「Q-lioの障壁について研究しているんです。今日はちょっと現場から離れられなくて・・いつも助かります。」


ぬるリンψ:「配達員サン、イツモアリガトウゴザイマス」


KENZO:「おっ、ロボットも喋るのか。面白いじゃないか。」


YUKI:「ぬるリンψです。私の相棒で、24時間体制で障壁を監視してくれてるの。」


KENZO:「今はあんまり話題にならない謎の壁か。まだ研究してる人がいたんだな。」


YUKI:「ずっと計測しているけど、今日はちょっと様子がおかくて」


YUKI Morganは、この10年間、Q-lioの障壁について独自の研究を続けてきた。

他の研究機関が諦めて去った後も、彼女だけは毎日計測を続けている。

相棒は愛称「ぬるリンψ」と呼ぶ自律型ASI(超人工知能)ロボット。様々なセンサーで障壁の状態を24時間監視している。

これまで10年間、障壁は完全に無反応だった。電波も、熱も、光も、地磁気も、何一つとして変化を示さなかった。

まるで現実世界に現れた「絶対的な壁」のような存在だった。

しかし先ほどから、わずかながら異常な測定値が記録されていた。

ほんの微かな、ノイズともとれるような変化。しかし長年の観測経験が告げている—これは何かの前兆だと。


YUKI:「実は先ほどから、測定値に微かな異常が見られたの。10年間完全に無反応だったのに...」


KENZO:「異常?内部に何かいるってことか?」


YUKI:「なにかはわからない。でも、物理的に隔離されているはずなので...」


ぬるリンψ:「ケイホウ!センサーニ異常反応アリ!」


YUKI:「え?!何の反応?」


ぬるリンψ:「光波長ノ変動ヲ検知!障壁表面ニ微弱ナ発光現象!」


KENZO:「光った?それは確かに気になるな。俺の経験上、戦いの前にはいつも「気配」がある。」


YUKI:「戦い...?まあ、確かに何かの前兆かもしれない。」


ぬるリンψ:「音波モ検知シマシタ!微弱デスガ、人間ノ声ニ類似!」


YUKI:「声?!誰かの声が障壁の内部から?!」


KENZO:「面白くなってきたじゃないか!もしかすると、その障壁の向こうに強い相手がいるのかもな。」


YUKIが計測データを分析していたその時、ぬるリンψのセンサーが急激な変化を検知した。

障壁の一部が、ほんの一瞬だけ光った。10年間完全に暗黒だった表面に、微かな光の揺らぎが生じたのだ。

光の干渉パターンが現れ、波長の乱れが測定された。

そして—かすかに、しかし確実に、助けを求める声が聞こえた。

「誰か...助けて...」

その声は、障壁の内部から響いてきた。10年間の沈黙を破る、最初の信号だった。

物理法則を無視した絶対的隔離を誇っていたQ-lioの障壁に、ついに亀裂が生じたのだろうか。

それとも、内部から何かが脱出を試みているのだろうか。


■knowledge of マメ


光の波としての性質と波動方程式

光とは:

•「光が光った」というとき、私たちが目にしているのは電磁波(光=電磁波)の一部なんだ。光は「波としての性質」と「粒子としての性質(光子)」を両方持つんだ。

波動方程式:

• 一般的な波の式:ψ(x,t) = A cos(kx - ωt + ϕ)

• A:振幅(波の大きさ)

• k:波数(2π/λ、λは波長)

• ω:角振動数(2πf、fは振動数)

• ϕ:初期位相(波のスタート位置のズレ)

光の干渉:

• 二つ以上の光波が重なり合うことで起こる現象

• 波が強め合ったり弱め合ったりして、明暗のパターンを作る

• YUKIが観測した「光の揺らぎと干渉」は、障壁内部で何らかの光源が活動していることを示している!

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