第4話 私のカレは決して塩対応はしないけど……
※ 今回は紬さん視点となります。
◇◇◇◇◇◇
正直なところ、私はめんどくさい女だと思います。
融通が利かないし人の心の機微もあまり理解できていない。
幼稚舎から高校まで生粋の女子校育ちだったのに……“世間一般の”女同士の付き合いもままならない。
ここで“世間一般の”と申しましたのは……後程ご説明いたします。
こんな私でしたのに、うっかりと“生命の神秘”に魅せられて“リケジョ”になってしまったのです。
大学では他の理工系の学部よりは女子比率が高かったのですが、それでも圧倒的に男子が多くて……男子との
実は……同じクラスの男性からお付き合いを申し込まれた事があった様なのですが……私、それと気が付かなくて……結果、相手の方の体面を酷く傷付けてしまいました。
後で聞いたのですが、その顛末は『鉄仮面伝説』として学部の“三大イタイ話”のひとつに数えられ、今でも語り継がれているそうです。
“イタイ”私の密かに恐れている事は……『学部の後輩が私のお勤めしている会社へ入社配属され、この事が伝播されるのでは?』という事なのです。
話が少し前後いたしました。
私は
普通なら学卒ではまず配属されないであろう化粧品会社の研究部門へ!
この職場もけっこう女性比率が高く、どなたも才媛ばかりでらっしゃるのですが……
幸い、皆様に可愛がっていただいております。
先程、“世間一般の”女同士の付き合いもままならないと申しましたが、なぜか同性からの愛の告白をお受けする機会には恵まれまして……ファーストキスは高1の頃……自然科学部の部長さんとでした。
この方が“あくなき性の探求者”であられましたので……私、色んな事を教わりました。
具体的に申しますと……
一例ですが……1年生の1学期を終える頃には、『百合』関係は……古くは『アニース』まで!『男女のエッチ』を挟んで対極の『BL』関係は『薔薇』に至るまで幅広く読破いたしました。
なので、もしこの類の“筆記試験”があるのでしたら、今の職場のどのお姉サマ方より高得点を狙えると思います!
ただ“実技”は……不得手でございます。
自然科学部の部長さんとは“ある程度”の段階は越えましたが……彼女に素敵な殿方が現れてからは……私は男女を問わず長い間どなたともお付き合いはいたしておりませんでした。
そんな私ですから……親の進める縁談が怒涛の如くまとまり、左の薬指をエンゲージリングで繋がれてからもフィアンセとは会話もままならず……彼にはずいぶん不愉快な思いをさせてしまったのでしょう。
彼が私の為に選んでくれた服についても“座学”で学んだことから引き比べて考えて行けば、もっと上手く対処できたのかもしれません。
でもきっと、私がこんなにもポンコツだから……今、隣の席にいらっしゃる素敵な
智和さんは目の前を流れゆく運河の流れの様にゆったりとした微笑みで私を見つめて下さいます。
いけませんわ! 私、智和さんの勉強を邪魔してしまっている……
「どうかしました?」
智和さんは心配そうに見つめて下さいますので、私、ますます立場が無くて……
「私が見つめておりますと、試験勉強のお邪魔ですよね……ごめんなさい」
と謝ると
「邪魔だなんてとんでもない! 紬さんに見つめていただけるなんて!とても嬉しいです!!」って喜びではち切れんばかりの顔をなさる。
ああ!!ああ!!
こんな笑顔を向けていただくと
私の心臓はトクトクして……
智和さんの……ペンをはじいてクリン!と回すその指先を
もし、
私の“レースの谷間”から中へ
挿し入れられたら
私……
どうなってしまうのだろう??
と
ふしだらにも夢想してしまうのです。
そんな夢想を口には出せませんから
私はこう、お誘いしてみます。
「今日の夕食、私の家で召し上がりませんか? いつもコンビニのお弁当や外食では心配です。滋養をとっていただかないと」
“この提案”を智和さんに感激していただき、私はホッといたしました。
◇◇◇◇◇◇
お出ししたスリッパ、私とお揃いと気付いていただけたかしら……でも、どこのお宅でもスリッパは大体がお揃いなのかしら……
こんな事がいちいち気になります。
でもエプロンと共に
気持ちをキュッ!と切り替えて……
ふふ、魔女のように3日がかりで煮込んだシチューは、何回かお肉やお野菜を足しましたのよ。どんどん溶けて無くなっていってしまいましたので。
ふたりで立ち寄ったベーカリーショップで買ったバケットに……冷蔵庫に冷やしておいた生ハムのマリネ
ワインの栓は智和さんに開けてもらって
ふたりだけの“特等席”でのディナー
心の中が幸せに満ち溢れてついついお酒が進み……
私はとりとめのない話に饒舌……
そんな風にしているうちに
智和さんに
とてもとても甘えたくなって
智和さんの傍らに
カレの膝にリボンのかかった頭を預けました。
「髪、だいぶ伸びましたでしょ?」
智和さん、そっと私の髪に触れてくれて
「とても綺麗で……柔らかいです」
と、おっしゃるので
私、今度は甘えネコになって
喉を鳴らす代わりに髪をスリスリしてごろにゃんといたしましたの。
「“サクラサク”になりましたらご褒美に私をお受け取りいただけますか」って。
私の言葉に
智和さんもドキッ!となされて
私、そっと目を閉じてキスを待ちました。
カレのくちびるが私のくちびるに触れ、ついばんだ時に
私の耳の後ろの辺りがピクン!と
昔読んだ、“ある種”のマンガの1コマが頭の中に浮かびました。
既に、私にはネコの本能が憑依していて
潤んだ瞳でカレにお願いしました。
「味見していいですか?」って!
カレ、何か言い掛けたけど
もう居ても立っても居られなくて
カレのお返事を待たずに
カレのセーターごとシャツをたくし上げて
カレの胸をレロン!っと
してしまいました。
私に“塩対応”など絶対しないカレの胸は
うっすらと塩味がいたしました。
だからイケナイ私は……
次はきっと
我慢できずに
カレをつまみ食いしてしまいそうです。
。。。。。。。
とりあえず
おしまい♡
金木犀のきみへ 縞間かおる @kurosirokaede
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