10月3日
咲人さんに頼み、私は「インターネットが見たい」と言いましたが、当然ながら渋い顔をされてしまいました。
「今の君にインターネットは危険だと思うよ?」
「でも私も感想が見たい」
「ファンレターは出したでしょ」
「それだけじゃ足りない。外に出られないから資料が欲しいし、私の昔書いた本も読みたい」
私は必死に説得しました。
読者のファンサイトを見たい。それが一番の理由でしたが、それを隠してしまった咲人さんに対して、だんだんと不信感が芽生えたというのもあります。
現状を打破したくても、今のままじゃなんにもならない。せめてネット環境を回復させたいという一抹の願いでした。
結局折れたのは咲人さんでした。
「……わかった。ただし、ネットの規制はさせてもらうから、それでよかったら」
「ありがとう」
こうして私は、咲人さんからネットで見られるページに制限をかけられた年寄り用の簡易スマホを渡されることで手を打つこととなったのでした。
私はそのスマホの設定をなんとか解除しようと試みましたが、なかなか上手く行きません。
「機種を変えないと無理なのかな……」
そのスマホにはサーチエンジンのアプリすら入っておらず、年寄り用の買い物アプリや補助アプリばかりが目立ちます。これで諦めさせようとしているんでしょうか。私はますますもって不信感を募らせていたとき、ふと頭に閃きました。
私は本棚に目を向けたのです。
思えば私は、これだけ真っ白な部屋にもかかわらず、圧迫感に襲われることもなく、快適に生活していたのです。おそらくこの部屋にいるのは慣れていたのでしょう。もしかすると記憶喪失前から、真っ白な部屋が趣味だったのかもしれません。私は辞書の箱に触れたとき、その箱が辞書の重さでないことに気付き、思わず本棚から引き抜きました。中にはたしかに辞書が入っているはずなのですが、その重さがおかしいのです。私は思わず辞書を割ると。
「あ」
辞書の中身はくり抜かれ、その中にはスマホが入っていたのです。思わずそのスマホを確認しましたが、電波は繋がっていますし、アプリもスマホとして使う分には充分な程度には入っています。これでネット回線は確保しました。
私は隠していたファンレターの写しのアドレスを打ち込みはじめました。
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