王子の最初の一歩

四年が過ぎた――


カイル・ニジマは今や四歳になっていた。体はまだ小さいが、その瞳には同年代の子供には見られない成熟が宿っていた――決して消えることのない決意の光が。


その日、彼はゆっくりと王宮の大広間を歩いていた。そこは新しい父であるアルデン王の住まいであった。そびえ立つ大理石の柱と色鮮やかなステンドグラスが太陽の光を反射し、その部屋を光に満ちた別世界のようにしていた。


シルーの世界には、人々の間で常に語られる四つの大きな地域が存在していた。


アウレリア: 光と果てしない緑の大地に恵まれた豊かな国。

ノクトゥルン: 荒れ果てた砂漠と古代の遺跡が広がる暗黒の地。

シルヴァリス: 巨大な森と滝や魔力に満ちた川、エルフや精霊が住む土地。

フロストガルド: 永遠の雪に覆われ、氷山がそびえ立つ土地。


現在、カイルはアウレリアの地にあり、壮麗な宮殿こそが彼の新しい家となっていた。先ほどまで大広間で走り回っていた彼は、今は自室に戻っていた。


その部屋は広く、黄金の装飾と柔らかな絹のカーテンに満ちていたが、なぜか静かで寂しさを感じさせた。


カイルはベッドに腰掛け、天井をぼんやりと見つめていた。

「やっと…誰もいなくなった…へへ…」と彼は小さく呟き、孤独を楽しむかのように。


だがその静けさは長く続かなかった。扉がゆっくりと開き、若い侍女の姿が現れた。黒髪を白いリボンで簡素に結び、その顔は美しく穏やかな瞳をしていた。腰には細身の輝く剣が提げられていた。


彼女の名は――アイリス。


カイルは振り向き、少し驚いたが、すぐに笑みを浮かべた。

「アイリス…また君か」彼は半分甘えるように言った。


アイリスは恭しく一礼し、優雅な動作で近づいてきた。

「カイル王子殿下、そろそろお休みの時間です。先ほど大広間で走り過ぎました」彼女は穏やかだがきっぱりとした声で言った。


カイルは口を尖らせ、叱られるのが気に入らない子供のような顔をした。

「ふん…君はいつも僕に遊ぶのをやめろって言う。でも僕は強いんだよ?」と言い、小さな腕を胸の前で組んだ。


アイリスの顔に薄い笑みが浮かんだ。彼女は膝をつき、視線をカイルと同じ高さに合わせた。

「本当に強いなら、自分を守る時もわかるはずです。王子は強いだけでなく、賢くあらねばなりません」彼女は柔らかいが意味深い声で言った。


カイルはしばし黙り、小さく鼻を鳴らして横を向いた。

「賢く、賢く…君はいつもそう言う。でも誰も僕と一緒にいなければ…僕はやっぱり一人なんだ」彼は小さく呟いた。


その瞳は一瞬陰り、アキラだった過去の記憶がよぎったように見えた。


アイリスはしばらく彼を見つめ、やがて暖かい笑みを浮かべた。

「それなら…私がずっとお傍におります、カイル王子。」


その言葉はカイルの胸を温めた。彼はアイリスを見つめ、小さく笑った。

「わかった…それなら絶対に僕を置いていかないで、アイリス。」


机の上には分厚い本が開かれており、古代文字と魔法陣の絵が描かれていた。カイルの瞳は好奇心で輝き、ページを一つ一つなぞった。


「わあ…すごいな」彼は小さな指で火、水、風、土、光、闇のシンボルをなぞりながら呟いた。それぞれが魅惑的に見えた。


アイリスは近づき、本を覗き込んだ。

「カイル王子は、特に好きな魔法がありますか?」と彼女は柔らかく尋ねた。


カイルは素早く振り向き、目を星のように輝かせた。

「うん!僕はすごく好きだよ…その…全部の魔法が!」と彼は大きな熱意で答え、小さな拳をぎゅっと握った。


アイリスは一瞬驚き、その純粋な野心に少し息を呑んだが、すぐに微笑んだ。

「全部の魔法ですか…小さな王子にしては大きな野望ですね。」


彼女はその本をそっと閉じ、柔らかい表情でカイルを見つめた。

「でも…今のあなたにはまだ使えません。体が小さすぎます。無理に魔法を使うのは危険です。」


カイルの目が大きく見開かれた。

「えっ!? じゃあ今は全然使えないの!?」と彼は失望して叫び、お気に入りのおもちゃを失った子供のような顔をした。


だがその心の中では、より大人びた声が響いた。

「そうだ…僕はこの小さな体に転生したのを忘れていた。なのにすぐに全ての魔法を極めようとしてたなんて…」


彼はうつむき、むくれた顔をした。だがすぐに瞳に再び炎が宿った。

「それなら…時が来るまで待てばいい」彼は固い決意で思った。


アイリスはその表情の変化に気づき、ほとんど聞こえないほど小さな声で囁いた。

「カイル王子は…本当に他の子供たちとは違いますね。」


突然、カイルは立ち上がり、決意に満ちた目でアイリスを見た。

「アイリス!僕に剣の使い方を教えてほしい!」と彼は宣言した。


アイリスは驚いたが、すぐに笑みを浮かべた。彼女は軽く頭を下げ、小さな王子を見つめた。

「教えることはできますよ、王子…でも剣の稽古は荒っぽいものです。小さな体では痛むかもしれません。」


カイルは一瞬固まった。

「え…」と彼は小さく呟き、転んでいる自分を想像したかのように。


だがすぐに拳を強く握った。

「大丈夫!大事なのは技を覚えることだ!僕は訓練しなきゃ、アイリス!」


アイリスは暖かく笑い、その瞳は尊敬と感嘆に満ちていた。

「それなら…よろしいでしょう。始めましょう。」


カイルは明るく笑い、その目は興奮で輝いていた。


二人は共に部屋を出て、王宮の中庭へと向かった。大きな扉が開き、光り輝く白い大理石の床が広がる広大な訓練場が現れた。夕暮れの風が優しく吹き、壁に掛けられた武器から鋼の匂いを運んでいた。


その日こそが、カイルの剣と魔法の世界への旅の始まりとなった。


アイリスは武器棚に目を向け、小さな木剣を取り上げた。彼女はそれをカイルに差し出した。

「ほら、まずはこの木剣を使いなさい」彼女は言った。


カイルは目を輝かせてそれを受け取ったが、その小さな体には重く感じられた。

「わあ…想像していたより本物みたいだ」彼は感嘆して小さく呟いた。


アイリスは腕を組み、真剣な目で見つめた。

「まず、カイル…剣を振るう前に、剣にマナを流し込まなければなりません」彼女は説明した。


「マナを…流し込む?」カイルは眉をひそめて繰り返した。


アイリスは頷き、もう一本の木剣に手のひらを当てた。

「こうするのです。」


瞬間、柔らかな青い光が剣から放たれた。魔力のオーラが輝く風のように渦巻き、中庭を煌めく光で満たした。エネルギーの低い唸りが聞こえ、木剣が神聖な鋼の剣へと変わったかのようであった。


カイルの口はぽかんと開き、心臓が高鳴った。

「うわああ!すごすぎる!」と彼は感嘆の声を上げた。


彼は剣をぎゅっと握りしめ、その小さな体は興奮で震えていた。

「もし僕にもできたら…きっと僕も強くなれる…!」彼は熱い決意で思った。


アイリスは優しく微笑み、その瞳には誇りと不安が入り混じっていた。

「さあ、今度はあなたの番です、カイル王子。どれほど強い決意を持っているのか、私に見せてください。」

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