へりくつ13 砂の謎

 休日の公園は、子供たちの元気な声で溢れていた。僕は友達と一緒に砂場で、大きなお城作りに夢中になっていた。スコップで砂をかき集め、湿らせて、バケツで形を作る。僕たちの足元には、まるで果てしない砂漠みたいに、数え切れないほどの砂の粒が広がっている。


 僕はふと手を止め、手のひらに乗せた砂をサラサラとこぼしてみた。太陽の光を浴びてキラキラと光る、小さな小さな石のかけら。この砂場の砂だけで、一体何粒あるんだろう。そして、このとてつもない量の砂は、一体どこからやって来たんだろう。


 夕方になって家に帰ると、僕はリビングでテレビを見ていた父さんに、さっそく今日の疑問をぶつけてみた。


「ねえ、お父さん。公園にある砂場の砂って、みんなどこから来るの?」


 父さんは僕の方を見ると、さも当然だという顔で答えた。


「ああ、あれか。あれはな、全部『砂職人すなしょくにん』っていう専門の職人さんたちが、手作業で作ってるんだぞ」

「え? 作ってるの?」

「そうだ。大きな岩や石を、一つ一つ巨大な金槌かなづちでカンカン叩いてな、あの小さな砂粒になるまで、ひたすら砕き続けるんだ。気の遠くなるような作業だぞ」


 父さんの言葉に、僕は息をのんだ。あの砂場の、数え切れないほどの砂が、全部、石を砕いて作られたものだなんて。


「え!? うそ!? あの砂、ぜーんぶ!?」


 僕が信じられないという顔で聞き返すと、父さんは大げさに頷いてみせた。


「ああ、全部だ。日本中にある公園の砂場、それに学校の校庭の砂も、全部その職人さんたちが作ってるんだからな。すごい量だよな。だから、砂職人さんたちは年中無休で働いてて、みんなすごく忙しいらしいぞ」


 僕は、来る日も来る日も、ただひたすらに石を砕き続ける職人さんたちの姿を想像した。僕たちが砂場で楽しくお城を作ったり、トンネルを掘ったりしている間も、どこかで「カン、カン」と石を砕く音が鳴り響いているんだ。僕たちの遊びは、そんな人たちの大変な努力の上にあるんだなあ。


 僕は心の中で、まだ見ぬ砂職人さんたちに「いつもありがとう」と感謝した。そして、同時にこうも思った。


「……忙しそうだから、将来、砂場の砂職人になるのはやめておこう」


 僕の将来の夢リストから、今日、一つだけ職業がそっと消されたのだった。

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