第33話 文化祭編 喧嘩 すれ違い

「全く2人とも何しているの……」

先生が俺たちを止めてくれた。翔は怒り狂ったような表情で俺を睨んできた。周りのみんなも驚いていて、どうすればいいの?みたいな顔をしていた。

「こいつが……やっぱりお前!……っ!」

新崎が翔の肩を掴んでいた。

「とにかく落ち着け…翔」

「……落ち着いてなんていられるかよ!玲が花宮さんを……花宮さんを傷つけたんだ!!」

「そうと決まったわけじゃないだろ?」

「泣いてたんだぞ!!」

新崎も流石に何かを言うことは出来なかった。泣いている姿はみんなが見ているから…

「花宮さんを傷つけたのは確かだよ」

「!!!」

新崎もみんなも驚いていた。翔はギリッと歯を食いしばって俺を睨んだ。

「でも、傷つけたくて言ったんじゃない……そうしないといけないから言った。俺が言ったことが間違ってるなんて思わねぇ」

「んだとこら!!」

翔がまた、俺に殴りかかろうとしてきた。その時、俺の中にいる『あいつ』が出てこようとしてきた。

(待て!!まだ、出てくるな!)

俺は何とか抑えようとした。今、こいつを出せばきっとみんなを翔を傷つけるから。

「翔!!」

新崎と国光が翔を止めた。振り解こうともがく翔。

「とりあえず、2人とも落ち着きなさい」

先生が俺たちを止めて、離れさせた。

「白鳥くん…ちょっと良いかしら?」

「……はい」

先生と共に教室を出ていった。


「何を言ったの?花宮さんに…」

先生が単刀直入に聞いてきた。

「俺は…ただ、花宮さんと翔がお似合いだって言っただけです」

「……それで傷ついた…ってことか……なるほどね」

先生はこれだけでどうして花宮さんが傷ついたのか分かったみたいだった。

(やっぱり女性には分かってしまうのかな?……でも、これでいいんだ、花宮さんの思いは俺じゃなくて翔にあるべきだから……)

俺は花宮さんを拒絶するためにあんなことを言った。自分に思いを寄せてくれていることを分かっていながら…

「まあ、花宮さんのことを対象として見ていないならそれでもいいけれど…ちゃんと謝っときなさいよ?」

「……はい」

先生はそれだけ言うと俺を解放してくれた。

教室に戻ると翔の姿がなかった。

「翔は?」

「……ちょっと1人になるって…」

「……そうか……みんな、色々とごめん」

俺はクラスのみんなに頭を下げた。

「何があったかまだ、話すことは出来ないけれど……俺と翔のせいでみんなを不安にさせたから……ごめん」

「まあ、喧嘩することもあるだろ」

新崎がそう言ってきた。

「翔と仲直りできると良いな」

「ああ」

俺はクラスのみんなと文化祭を楽しむことにした。


◾️桜 視点

「大丈夫?桜ちゃん」

「桜……」

2人が心配していた。でも、私は前を向くことなんて出来なかった。好きな人に好きって伝わってなくて、他の男子を勧めてきた。私は…もうどうしたら良いか分からなかった。

「私は……」


「桜!!」


フニッと私のほっぺが引っ張られた。

「ファッ…!ふぁにふるの?!(何するの?!)」

「しっかりして!桜!」

梓ちゃんが私の目を見てきた。

「あなたはまだ、失恋したわけじゃない!!何にも伝えてないじゃない!!憶測や予想で自分の思いを諦めようとしないで!!」

「梓ちゃん……」

「私も風香も伝えたよ?無理だって分かってても……」

目に涙を溜めながら私に訴えてくれた。伝えることがどれほど大切かを…

「無理に言えってわけじゃないよ?……ただ、後悔してほしくないだけ…まだ、諦めるとかじゃないよ!」

「風香ちゃん……」

「大丈夫よ!桜の気持ちちゃんと伝わる!だから、諦めないで!」

真剣な目で、でも、ポロポロと涙をこぼす梓ちゃん。2人とも本当に強い人だと思った。

(私……話さなきゃ!白鳥くんに…)

私はもう一度彼と話すことにした。


◾️翔 視点

あんな状況を見たら……もう、俺は……

(勝ち目なんかないのかよ……俺は…玲に勝てないのか?……どうして…花宮さんはあいつを……あんなやつを好きになるんだよ!……あいつより俺の方が!!)

心が黒く染まっていく。悲しみとか苦しみとかよりも憎しみと悔しさが溢れてくる。

俺はずっとイライラしていた。

(こんなにも……こんなにも!!!花宮さんのことを!!誰よりも思っているのに!!!)

もっと心が黒く染まっていく。

俺は、どうすればいいのか分からなかった。


◾️玲 視点

「はぁ……」

今日は散々な日だったなーって思いながら、屋上にいた。

空を見上げた。もう夜に近い時間帯だから、星が見え始めていた。

俺はふと昔のことを思い出した。転生する前のこと、転生してからのこと……

「めんどくさい奴らから離れられたと思ったんだが……」

転生して、この世界がゲームの世界だと分かって、どうにか翔たちを支えようとしてきた。

「結局、翔とは良い関係にならないのかもなー」

今回のことで、翔はきっと俺を恨むだろう……

ちょっとバッドエンドに近づいてしまったような気がする。

「やだなー……でも、花宮さんは俺じゃない方がいいし……俺、サポート役だし……」

俺はまた、空を見上げた。そして、願った。


「どうか、翔達が幸せな道に進みますように……そして、いつか……」


空にある星が流れていった。


※あとがき

文化祭で喧嘩?!大丈夫かな?

これから翔はどうなるのか……なんか病んでない?


次回、第4章 クリスマス、冬休み、大晦日

   男同士の話

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