第30話 文化祭編 準備

「よし!始めるかー!みんな!頑張っていこー」

「「おおーーーーー!!」」

若鷺先生の掛け声にみんなが反応した。

今日から授業が休止になり、文化祭までずっと準備を行うことになった。

俺のクラスは劇をやることになったらしい。

なんでも最初、屋台をするってことになっていたが、屋台を希望するクラスが多くて、じゃんけんで決めることになり、結果……負けたため、劇に変更されたらしい。

(ま、しゃあないわな……俺、裏方やっとこー)

小道具を作るのが嫌いじゃないため、この劇が成功するようにしっかり作るつもりだ。


劇の内容は、『ロミオとジュリエット』らしい。まだ、配役が決まっていなくて、裏方だけが決まった状態になっている。

「さて、では、ロミオとジュリエットの役を振り分けようと思っているけれど、誰がどの役やるかみんなで決めれそう?」

「せんせーい!やってみせますよー俺たち」

「任せて下さい!」

「そう?なら、頑張ってね!」

先生は自分の仕事に戻った。


「よし!みんな!決めようぜー!」

新崎が率先してみんなを仕切っていった。

「誰がやるかだな、主役とヒロイン」

「うーん…」

みんな悩んでいた。だから…

「なぁ、推薦していいか?」

「え?」

クラスのみんなが俺を見てきた。

「決まんないしさ、俺、主役とヒロインに向いてるやつ分かるから、勧めたくてさ」

「誰にするんだ?」

俺は一旦深呼吸すると…


「主役を轟が、ヒロインを花宮さんがやったらいいと思う」


「「!!!!」」

翔と花宮さんが驚いていた。

「ほう!理由を聞いていいか?」

「ロミオって、優しくて何事にも全力で頑張るやつだろ?翔ってそんな感じじゃん?勝負事に本気だし、全力で頑張るしさ、だから、ロミオ役にピッタリだと思った。」

「なるほどな、なら、花宮さんは?」

「ジュリエットが優しくて人思い、誰かのために努力して、頑張る人だから、そういうのって花宮さんじゃね?って思ったからかな?」

クラスのみんながふむふむと頷いていた。

「確かにそうだな……翔!花宮さん!2人はどうだ?やってくれるか?」

新崎が2人に聞いた。

「俺は全然いいけれど…」

「私も大丈夫です…」

2人ともオッケーしたみたいだ。

「なら、ロミオ役は翔が、ジュリエット役を花宮さんに任せるよ」

パチパチパチパチ…

クラス中から拍手が起こった。

「よし!それじゃあ、他の配役も決めていこう!」

「はーい!」

みんなが次々と配役を決めていった。


「なんとか無事に決まったな…役に選ばれなかった人は裏方の仕事を頼むよ、それじゃあ、あとは任せるよ!自分たちでいいものを作ってくれ!」

若鷺先生はそれだけ言うと教室を出ていった。

「みんな!いいもん作ろうぜー!」

「「おおおおーーーー!!!」」

みんながやる気を出して、セットを作り出した。


「白鳥くん!あの道具持ってきて欲しい!」

「了解!」

俺は頼まれた道具を取りに行った。

教室はみんな文化祭に向けての準備で大忙し、衣装担当とセット担当、装飾担当の3つに分かれて作業していた。俺はと言うと、その3つの担当のお手伝いとして、というか、雑用係として動いていた。足りないものを補充しに行ったり、道具を取ってきたりしていた。

役に決まった人たちは、別室で練習しているらしい。クラスの委員長と新崎が監督しているらしい。

「ほら!」

「ありがとう!」

装飾担当は劇に出る人数分作るため、デザインや色をたくさん考えないといけなくて、忙しそうだった。

セット担当は小道具を作るのに勤しんでいるみたいだった。城や広場、舞踏会のセット、毒薬の入った瓶や剣なども用意するらしい。当然毒薬はただの水で、演技で毒薬を飲んだようにするとのことだ。

装飾担当は、衣装に合わせて髪につけるものや頭に乗せるもの、照明器具の確認やセットの壁の飾りなどを作る担当らしい。

「白鳥!こっち手伝ってくれ!」

「白鳥くん!ごめん!先生にこの機械使っていいか聞いてきて欲しい!」

「白鳥!!人数分お菓子買ってきてくれ!」

みんなからたくさん注文がきて、焦りながらもこなしていった。


「つかれたー……」

俺は廊下に置いてある椅子に座って休憩した。教室はみんなが作業しているから、邪魔だと思って出てきたのだが…

「やることなくなった……どうしよう」

俺は周りを見渡した。他のクラスも準備で忙しそうだった。

「屋上行こうかな…」

俺は重い体を立たせて、屋上に向かった。


「ふぅー…涼しいー」

両手を広げて、風にあたった。

冷たい風が温まった体を冷やしていってくれた。

「よく、こういう開けた場所でやってたなー」

昔のことを思い出した。こういう広い場所で歌やギターの練習をしていた。

「やってみようかな?」


♪〜〜♪〜〜♪♪♪〜♪〜〜♪〜〜〜♪〜〜♪


久々に歌ってみたが、まだ、ちゃんと声が出るらしい。

(良かった…歌が歌えなかったらマジで困ることになるとこだった…)

俺は内心ホッとしていた。

そして、空を見上げた。さっきまであった雲が綺麗に無くなっていた。

(微妙に発動していたのか…まあ、いいか)

俺は屋上を後にした。


「新崎!どうだ?練習の方は…」

「お?玲!まあ、まだまだだな」

演劇の方を見に行くと、翔達が頑張っていた。

新崎は俺が来たことに気づいて、こっちに来てくれた。

翔と花宮さんが話すシーンらしい。

「よし、それじゃあもう一回やろうか」

「はい!」

「へい…」


「どうしてロミオはロミオなの?あなたがモンタスギュー家の人間じゃなければ、私たちを邪魔する者など誰もいないと言うのに…」

「ジュリエット、ならば僕はこのモンタスギュー家の名前を捨てましょう、そうすればあなたとずっと一緒にいられます」


2人とも演技が上手くてびっくりした。本当にロミオとジュリエットのようだった。

「はい!カット!!」

委員長が大きな声でカットと言った。

「2人とももう少しリラックスして!硬いよ!!」

「は、はい!」

「おう…」

「えっと、新崎!委員長ってあんな感じだったか?」

「あはははは!!彼女、実は文化祭とかそういう学校の行事を本気でやる子でさ、今回の演劇に関して熱が入っちゃったみたいで……」

「あー、なるほどな」

俺は委員長を見た。真剣な顔で劇の様子を見ている。そんな姿を見たら、本気なんだなって伝わってきた。

「玲は何してたんだ?」

「ああ、クラスのみんなの手伝いをして、その後疲れたから、屋上で休んでた。」

「そうか……ありがとうな!」

「いや、気にするな…」

照れ臭くなって、顔を背けてしまった。

「良い劇になりそうだよ!」

「そうか…」

俺と新崎はまた、劇の様子を見た。


数日後……

俺たちは体育館にいた。セットの設置を始めるそうだ。文化祭まで後3日、みんなその時を待ち侘びている。

「オーライオーライ!ストップ!ここで良い、ここに置け!」

「「あいーー」」

男子も女子もみんなが手伝いをしていた。

その間も役者達は練習をしている。

「白鳥!そっから照明を見たくれー」

「りょーかい!」

照明の明かりがどれぐらいなのか確認するため俺は照明の真下に立った。

「どーだー?」

「うーん…もうちょい明るくても良いと思うぞ」

「了解!」

照明の明かりが少し明るくなった。

「うん!それぐらいの方が見えると思う。」

「おけ!」


「小道具チームはどうだ?いけそうか?」

「あ、白鳥!おう!いけそうだぜ!まあ、なんとか間に合って良かったよ」

クラスメイトが応えてくれた。

壁の装飾をつけ終えて、みんな休憩に入るところだったらしい。

すると……

「わあ!すごいね!」

体育館に入ってきたのは、役者チームだった。

俺は新崎のところに向かった。

「練習終わったのか?」

「ああ、多分、本番はいけると思うぜ!」

「そうか…良かったー」

「そっちはどうだ?ステージの完成度は…」

「見ての通りだ」

俺は新崎にステージの様子を見せた。

「ははは!すげーな!」

「……だな」

大きな城や庭園などたくさんのセットが出来ていた。

「これは……すごいな」

翔もその凄さに驚いていた。

「ま、上手く設置できれば良いが……」

「よし!俺たちも手伝おう!」

新崎がすぐに手伝いに向かった。


「あ、神楽坂さん!」

「え?あ、白鳥くん」

「セットの手伝い?」

「ええ」

神楽坂さんが脚立にのって、装飾品を取り付けていた。

「白鳥くんもお手伝いかしら?」

「あーうん、ある程度終わってそうだったから、こっちにきたんだけれど…」

脚立の周りを見るとまだ、終わっていないようだった。

「手伝うよ、これはどうすればいい?」

「あ、いいわよ…私だけでできるし…」

「いやいや、結構あるから…それに、俺暇だし」

「……じゃ、じゃあお願いするわ」

「りょーかい」

俺は近くにあった装飾品を手に取り、壁に付けていった。


「よし、あとはそれだけかな?」

神楽坂さんの近くにあった装飾品を指差した。

「ええ、それだけよ、ありがとう。手伝ってくれて…」

「気にしないでくれ…さて、それじゃあ…」

俺は残っている装飾品の取り付けをしようとした。すると……

「あ!待って!私が……きゃあ!!」

「え?」

神楽坂さんの方を見ると、慌てたせいか脚立から足を滑らせて、落ちる瞬間だった。


「危ねぇ!!!」


ドタドタドタドタドドドドド………ドサッ!

ガッシャーン!!!


「お、おい!大丈夫か?!」

「誰か落ちたぞ!!」

「おい!急いで脚立をどかせ!」

みんながワーワー騒ぎ出した。


「白鳥くん!!白鳥くん!!」

俺を呼ぶ声が聞こえてきた。うっすらと目を開けると、神楽坂さんの顔があった。涙を流しながら、必死に呼びかけているようだった。

(良かった……無事だった……)

俺はそれだけ思うと……意識を手放した。


※あとがき

文化祭始まりましたー!準備に追われているみたい。翔と花宮さんの2人が主役とヒロイン!!

これは何か起こりそう……


白鳥くんは大丈夫なのだろうか……


次回!文化祭編 事故

お楽しみに


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