第10話 俺たちは共に
◾️絵麗奈 視点
大型のイベントでのライブを終えて、私たちはもっと有名になっていく、そんな気がしていた。
お父さん達のスキャンダルが出るまでは…
「何なのよ!これ!!」
母さんの悲鳴に近い声が聞こえてきた。
「どうした?」
父さんが母さんに駆け寄った。
その様子を私と良一は見ていた。
「母さん、なんかあったのか?」
良一は不思議そうにしていた。
そして、父さんが母さんの持っているものを見て…
「どう言うことだ!!」
父さんも叫んだ。
(何かあったのかしら?)
そう思った私は、良一と一緒に父さんと母さんの元へ向かった。
母さんが持っていたのは新聞だった。
そこには…
『速報!!フォクシード 家庭内暴力発覚!』
「「!!!!」」
私と良一は驚いた。
「どうしてこれが流れたんだ?!分からなかったはずなのに!!」
父さんが激怒していた。
母さんは呆然としていて、魂が抜けているようだった。
「自業自得じゃん」
そう言ったのは、良一だった。
「りょ、良一?!」
私は驚いた。
父さんと母さんが良一の方を見た。
「父さんと母さんがずっと、ずっと、玲と瑠奈を傷つけていたのは事実だろ!!」
「なっ!」
「人を傷つけた奴が、最高の音楽家?ふざけんなよ!俺たちはずっとそれを見てきて、玲と瑠奈に何もすることができなかった!見ていることしか……もう、いい加減にしろよ!」
「良一!お前、まさか…」
「ああ!マスコミに流したのは俺だよ!こんな親のそばで最高の音楽なんかできるかよ!」
「良一!!貴様!!」
父さんが良一を殴った。
「やっていいこととダメなことがあるだろうが!これは、お前、自分の家族を陥れるつもりか!!」
「その言葉、そっくりそのまま返してやるよ!父さんがやってきたことが許されることじゃないことぐらい、わかんだろうが!!家族を傷つけたそれが、事実で、やってはいけないことだろうが!!」
「くっ!」
「もう、我慢することはできねぇ…玲が泣いてたんだ!絶対に許さねぇ!」
その時だった…
「ただいまー」
玲が帰ってきた。家の空気が重いのに気づいたんだろう、少し怯えている玲の姿があった。
「姉さん、何があったの?」
「玲…実は…」
「え!」
私は、家で起きたことを話した。玲はすごく驚いていた。
「それ、まずいんじゃあ?」
「うん、かなり、[れい]自身が受けていたことだから、それを公にされて焦ってるんでしょうねー、焦るぐらいなら最初からするなって話よ」
「姉さんも俺もどうなるんだろう…」
「分からない、ただ、状況は最悪、マスコミもすぐここに来るわ」
私は何とかなるって言った。どうなるか分からないのに…それに、もう演奏することもできないと確信してるのに…
それから、私は学校でニュースについて聞かれた。誤魔化し続けたが、だんだん噂が広がっていき、私は孤立した。そのことを家では玲に言ってしまった。玲は悲しそうな顔をして、私の話を聞いてくれた。
それから、父さんも母さんも何もしなくなった。たくさん仕事が入っていたのに、スキャンダルのせいで仕事が一気に無くなり、2人とも家のことをしなくなった。
仕方なく、私と玲が家事を分けて行った。
何とか生きていけるだろうと思っていた。
だけど、そう思っていたのは、私と良一、玲と瑠奈だけだった。
自分の部屋でドラムの練習を行っていた私は、突然、焦げ臭い匂いを感じた。
「何?この匂い…」
私は気になって、部屋を出た。
下の階から来ているみたいで、下の階へ降りた。
リビングを開けると、火が部屋中を覆っていた。
「なっ!何これ!母さん!父さん!」
2人を呼んだが、反応はなかった。そして、火に囲まれた場所で首にロープをかけて、吊るし、首吊りをしている姿が見えた。
「は?!何これ、父さん?母さん?」
2人はすでに亡くなっていた。
「嘘でしょ?!!」
私はびっくりしすぎて腰が抜け、立つことができなかった。
火がすぐそこまで近づいてきていた。
(やばい…私も火で燃えちゃう!)
どうにか動こうとしたが、恐怖で動けなかった。すると…
「姉さん!」
良一が私を引っ張って、助けてくれた。
「姉さんしっかり!玲と瑠奈は?!」
「ま、まだ、部屋にいると思うわ」
「なら、2人を呼んで脱出するように!!」
「…ええ、分かったわ」
私は何とか立ち上がると、玲と瑠奈を呼びに行った。
私は家から離れていた。脱出することはできた。でも、玲と瑠奈がまだ中だった。良一は警察や消防の方と話していた。
私は、ただ、この家を眺めることしかできなかった。そして…
ドドドドッ…家が崩壊した。
「おい!誰か落ちてくるぞー!」
私は空を見た。玲と瑠奈が投げ出される瞬間だった。
「玲!瑠奈!」
私は無我夢中で走った。
◾️玲 視点
眩しい光が差し込んでくる。
俺はゆっくり目を開けた。
「ここは…」
どこか分からなかったが、ベットの上にいることだけは理解した。
「えっと…確か…」
俺は思い出そうとしたが、何があったか、思い出せなかった。その時だった、
看護師っぽい人が現れた。
「えっとー今日の様子はー…!!神城さん?!えっとえっと、大丈夫ですか?自分が誰か分かりますか?」
「えっと、俺は神城 玲です。体がめっちゃ痛いです。えっとそれでー、ここは?」
「ここは、病院です。神城さん大怪我して運ばれて来たんですよ?覚えてないですか?火事のこと」
「火事?…あ!そうだ、俺の家火事になって、それで…る、瑠奈は!瑠奈は大丈夫なんですか?」
「!!…神城 瑠奈さんですか?」
「はい!瑠奈です。生きてますか?大丈夫ですか?」
「ええ、生きてはいるわ、ただ…」
「た、ただ…?」
「自分で確かめた方がいいかしらね?」
「え?」
すると…
ガラガラガラ…
「瑠奈、病院だから静かにね」
「はい…分かってます…」
「玲、起きてるかな?起きてたらいいんだが」
3人の声が聞こえてきた。
「あ、美幸さん、どうしたんですか?呆然として…!!玲!!」
看護師の人を見かけた姉さんが、俺を見て叫んだ。
「玲!」
「お兄ちゃん!!」
そして、兄さんと瑠奈が姿を見せた。
「良かった…ずっと眠ってたから、心配で、良かったぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!」
「いってぇぇぇぇぇぇええええ!!!」
姉さんが泣きながら抱きついてきた。
「お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」
瑠奈がずっと謝ってきた。
「大丈夫、大丈夫、瑠奈が無事で良かった!」
「玲…ありがとう、瑠奈を助けてくれて…」
「いえ、僕が助けたくてしたことで…」
兄さんと話したのは、久々だった。姉さんとは話すが、兄さんとは話すことがなくて、あと、怖かったから話さなかったみたい。
「本当に良かった!無事で」
「うん…」
俺はまだ混乱していることがあって、うまく返事ができなかった。
「そういえば、あの後どうなったの?父さん、母さんは…えっと…」
「ああ、亡くなった。遺体で見つかったそうだ。俺たちは児童養護施設に預けられる。転校しないといけなくなった。だから、こっちの友達とはお別れになる。ごめんな」
兄さんが申し訳なさそうな表情でそう言った。
「そっか…分かった。とりあえず、学校にいけるようになったら、みんなに言えばいい?もう会えないって」
「いや、お前が回復したら、すぐに児童養護施設に移動になる。お別れは言えないと思う。」
「そんな…」
(じゃあ、せっかく友達になった)
兄さん達が帰った後、俺は彼に問いかけた。
(なあ、[ぼく]、俺らどう生きていけばいいんだろうな…父さんと母さんいなくなっちまった。)
(うん、そうみたいだな、はぁー、バカじゃん、僕に対して、色々言ってきて、僕は追い詰められたってのに、自分たちだと耐えられないんだ、意味わからないよ)
(うん…そうだね、俺も少なからず怒りはあるよ)
(何で、そっちが怒ってるんだよ)
(最近、一緒にいるからなのか分からないけれど、君の気持ちが伝わってくるんだ、しんどいとか、怒ってるとかそういうのが分かるんだよ)
(そうなのか…ごめん、不快な思いさせて)
(いや、いいんだよ、誰だって嫌な気持ちになるし、でも、だからこそ、助けたいって思うんだ、同じように怒りも湧いてくるんだ)
(……そうか、僕、君みたいになりたい)
(俺みたいに?)
(うん、多分だけれど、僕、心がやられているんだと思う)
(それって…)
(うん、何も感じないんだ)
(心が失ったってことか)
(うん…だから、心がある君が羨ましい)
(ならさ、俺たちで探さないか?)
(探す?何を?)
(心を!)
(心…)
(うん!幸せとか楽しいとか、嬉しいとかを見つけようよ)
(でも、君はすでに持ってるじゃん)
(いや、俺、結構苦労して生きてきた方だからさ、幸せがいまいち分かってないんだ。だから、君と一緒に見つけたい、ダメかな?)
(……分かった。僕も探す)
(やったー!よし、ならさもっと俺たち、仲良くなろう)
(具体的には?)
(名前呼ぶのを変えるとか)
(名前…)
(そう、[ぼく]とか、君とかで呼ぶのはやっぱり違うじゃん?それにややこしいし)
(確かにそうだな、どんなのにしようか)
(なら、俺たちニックネームで呼ぶのは?)
(ありだな、どんなのか付けてくれ)
(いいよー、えっとね…神城とかは?)
(ふふっ、そのままじゃないか、いいけれど…)
(あはは!なら、俺はー?)
(そうだな、石神でどうだ?)
(それ、俺の前の苗字、しかもそのままじゃねーか、いいけれどよ…)
(なら、決まりだな、ありがとう、よろしく)
(こちらこそ、よろしく神城!)
俺たちが共に幸せを見つけるために…
※あとがき
神城と石神のペアに絆ができました!
凄くいいペアだと思うなぁー
さて、そんな2人がこれから先どんな生活をしていくのか…
そしてそして、この世界…なんと、ゲームの世界だったようですよー?
お楽しみにー
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