第9話 悲劇
目が覚めた。窓から明るい光が差し込んでくる。
(すごい夢を見たなー、あれは…?夢か?)
俺がベットの中で考えていると…
コンコンコン…
「お兄ちゃん!あさだよー、おーきーてー」
そう言いながら、瑠奈が部屋に入って来た。
「起きてるよーおはよう、瑠奈」
「おはよう!お兄ちゃん!」
それから、何でもない日が続いた。
そして、大型ライブ当日…
「全員集まったな、では、今日のライブ、自分のやって来たことを信じて、私たちの音楽を伝えよう」
「「「「「はい(ええ)!!!」」」」」
「では行くぞ」
『We are foxy 心のままに歌い踊れ!!』
俺たちはステージに立って、演奏した。
会場は大盛り上がりだった。全部で5曲演奏したが、これほどの熱狂を味わうことは今までなかった。だから、とても嬉しかったし、認められた!と思っていた。
ライブが終わり、みんなで家に帰っていた時だ、父さんに俺はダメ出しを喰らっていた。
「玲、ここの部分、遅れていたぞ、もう少し指を早く動かせるように練習しろ、あとは…」
帰りながらのダメ出しはいつものことだった。だけど、少し嬉しそうに見えた。
母さんがたまに、父さんのおふざけを怒ったり、僕にデコピンしたりとちょっとしたじゃれあいもあった。
俺はこの時間、こんな2人が続いてくれれば…
そう願っていた。
夜、俺はベットで心に聞いていた。
(なあ、[ぼく]ライブしたんだけれど、君にも見えていた?)
すると…
(うん、見えてた…久々だよ…あんなに楽しそうにしている観客を目の前で見るのは…)
「そっかー、俺は初めてだったから、めっちゃ嬉しかったけれど、めっちゃ緊張したー」
(あははは!だろうねー緊張しているの感じたよ)
「やっぱり伝わってるんだな…おまえも楽しかったか?」
(うん、楽しかったよ…次は僕と君が交互に入れ替わっても演奏ができるようになれたらいいんだけれど…)
「それは…頑張らないとなー俺も君も」
(うん、でも、楽しかった、見ているだけでも)
「そっか、ふあぁぁぁぁあああ、あふ…眠いから寝るなぁー」
(うん、おやすみ)
俺は深い眠りについた。
次の日、家が騒がしかった。
俺は何かあったのか、不安で姉さんのところへ向かった。
「姉さん、何があったの?」
「玲…実は…」
「え!」
姉さんの話によると、父さんと母さんが暴力や暴言を吐いていたことをマスコミが知って、新聞に書いたらしい。
それで、父さんと母さんが必死に揉み消そうとしているらしい。
「それ、まずいんじゃあ?」
「うん、かなり、[れい]自身が受けていたことだから、それを公にされて焦ってるんでしょうねー、焦るぐらいなら最初からするなって話よ」
「姉さんも俺もどうなるんだろう…」
「分からない、ただ、状況は最悪、マスコミもすぐここに来るわ」
有名になると、とんでもないことをしでかしたら、すぐに情報が回ってしまう。だから、あの2人はバレないようにしていたんだろう。まあ、元々暴力を振るう性格してるから、自業自得だけれど…俺生きていけるかな?この人らと共に…
(なあ、[ぼく]、父さん達の悪事バレたぞ?どうする?)
(自業自得っていう言葉を使うんだろ?はぁ、まあ、スッキリはしてるけれどね)
(そっか…)
俺たち家族はどうなるんだろうか…
悪事がバレてから、たくさんのマスコミが来るようになって、父さん達がテレビに映ってしまって、僕たちは学校に通っても、周りから白い目で見られるようになった。まあ、俺は慣れているから良かったが、瑠奈や姉さん、兄さんはそうはいかなかった。学校でこんなことされたーと喚くようになり、それを父さんが鬱陶しそうにしていた。
父さんと母さんも荒れるようになり、家の家事も食事も何もしなくなった。お酒に溺れてしまっている。俺と姉さんで一応家事をやっている。前の俺のスキルが役に立っていた。
そして…
俺たち家族は音楽の世界から引退した。
そんな、ある日の夜、俺と姉さん、瑠奈はそれぞれの部屋で演奏していた。バンドが解散しても、音楽は続けたかったから。
そんな時だった……
「ん?なんか焦げ臭いな、何の匂いだ?」
俺は匂いを嗅いでいた。変な匂いがしていて、焦げ臭くて、何だか煙みたいな匂いがしていた。すると…
「玲!!すぐに避難して!!」
姉さんが俺の部屋のドアを開けた。
「どうしたの?姉さん、そんなに慌てて」
「家が……」
「うん?家?家がどうしたの?」
「火事になってんのよ!!」
「え?!」
下の階からパチパチッと火が燃えている音がしていた。
「瑠奈は?!」
「まだ部屋だと思う!」
「分かった!なら、俺が瑠奈を運ぶ!姉さんは兄さんと逃げてって父さんと母さんはー?!」
「……」
「まさか……」
「火に飲まれたわ……」
「はぁぁぁぁあああ?!」
火に飲まれた?それって火の中にいるってこと?死んだってこと?はぁ?
「マジか…」
「話してる時間はないわ、急いで!」
「あ、ああ!!」
俺は瑠奈の部屋に急いだ。
「瑠奈!!大丈夫か?!」
俺は一目散に駆け出し、瑠奈の部屋に飛び込んだ。
「うう……ひっぐ、ひっぐ、おにいぢゃーん、うわぁぁぁぁぁああああん!!」
泣きじゃくっている瑠奈の姿があった。
「瑠奈!兄ちゃんと逃げるぞ!!」
「ひっぐ、ひっぐ…う、うん…」
俺は瑠奈の手を取って、走った。
火が上へ上がって来た。この家、非常口が最上階にあって、そこから階段で降りることができる。
(とりあえず、非常口で降りるしか方法はないな、玄関はもう燃えてるし、行くしかない!)
必死に瑠奈を連れて5階を目指した。
(クソ!ここのドアが開かねぇ、何でだよ!!)
5階の非常口のドアまで辿り着けたが、問題はドアが開かなかった。
(鍵がかかっているのか?こんな時に!!)
俺は何度も体当たりしたが、びくともしなかった。
「クソ!どうすりゃいいんだよ!」
「お兄ちゃん!!」
「ん?…!!!」
日がすぐ近くまで迫って来ていた。
(まずい!考えている時間がない…どうすれば…ん?)
外から赤い光が見えた。
よく見ると消防車だった。
(消防が来たのか…だけど、こっち来ることできるのか?いや、多分無理だ…なら…)
俺は瑠奈を見た。
(彼女だけでも助けなきゃ…)
俺はそう決心をつけた。だが、その時、
ゴゴゴゴ…何かが崩れてくる音がした。
見ると、上から屋根が落ちて来た。
「うわ!」
「キャア!!」
俺は咄嗟に瑠奈を庇った。
(ぐっ!体が痛い…あと、熱い!何だ?!)
体を動かそうとしても動かなかった。
俺は周辺を見渡そうと、首を動かした。
瓦礫に挟まれているらしく、周りは暗かったが、少し穴が空いている箇所があって、そこから火が近くまで来ているのが分かった。穴から差し込む微かな光で瑠奈の様子が分かった。
幸いにも怪我はしていなさそうで、気を失っていた。
(どうにか、この子だけでも…)
俺は何とか手を使って瓦礫をどかそうとした。
だが…あまりにも重すぎて、動かすことはできなかった。
(消防士の人が来るのを待つか?いや、その前に俺たちが火だるまになる…どうすれば…)
俺は考えた、瑠奈だけでも生きれる可能性を…
そして、気づいた、瓦礫を自分の体で支えていることに。
(俺がどうにか動けば、この瓦礫を斜めにしたり出来たら、滑っていくのでは?)
俺は試してみることにした。
「ああぁぁぁぁぁぁああああ!!!」
俺は最後の力を振り絞って、瓦礫を階段から落とした。
もう、火がそこまで来ていた。
(クソ!出来たけれど、ドアが開かなきゃ…え!)
俺は目を疑った。
(ドア、開いてる!)
喜んでいるのは一瞬のことだった。
(階段が…)
階段が火事で壊れてしまった。
(これじゃあ…降りることができないじゃないか!!)
どうすればいいのか分からず、立ち尽くすしかできなかった。
後ろまで火が近づいて来ていた。
その時…
ドドドドッ…
家が崩壊した。
「うわぁぁぁぁああああ!!!」
俺と瑠奈は外に投げ出された。
「まずい!この高さは!!瑠奈ーーーー!!」
俺は必死に手を伸ばし、瑠奈の手を掴んだ。
自分の方に引き寄せた俺は…
クルッと体の向きを変え、俺が下になった。
(瑠奈は守る!!絶対に!!)
俺たちはそのまま落ちていった。
バフッ……
俺は意識を失った。
※あとがき
えーっと、主人公、どんだけ不幸なんだよ!
って思った人はいるんじゃないでしょうか?
私もそう思います。
さて、主人公、玲くんは生きているのか?!
そして、神城家の未来は?
お楽しみに!
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