第1章「拝啓、あの頃の君へ」

冒語ゼア

Ep.1「目指すのはordinary」

_あらすじ__________________

2017年 H海道 S市 白雲町しらくもちょう

人口 25800人

新千歳空港から電車で40分、車で50分程度で着くごく平凡の町。

一見おだやかで皆が楽しく暮らす町だが。その裏では奇妙な力による"不可解な出来事"が多数行われていた。

そんな中、何も知らない普通の優しき少年「星雲ほしぐもカイ」はある日、

摩訶不思議な力 "祈影イメージ"と呼ばれるものを持つ少年「白崎啓太しらさきけいた 」と出逢うところから始まる物語。


《友情》。 《運命》。 《因縁》。


カイは歩みながら知ることだろう自身が『そこ』に立つ意味を。

そして望むだろう離れていく『日常』を


これは《祈影》がもたらした《148年間》にも及ぶ冒険譚である。

それが『喜劇』か『悲劇』かそれとも『奇跡』か


彼らがもたらす1つの軌跡を君自身の目で辿ってもらいたい。

_______________________





_本文____________________

「__それは、時が眠り、空と大地の境がほどけた頃_____

「1960年 1月30日」のこと。


 2つの山が並ぶ山の頂に、

 ひとりの戦士が現れた。


 その山にはひとりの妖がおり

 戦士は妖と対峙した。


 戦士は妖を祓おうと挑み、そして敗れた。


 ___だが命尽きる時


 戦士は声もなく、決意を既にしていたかのように

 ただ胸に宿る命の灯火をそっと、この世界へと放った。


 山は夢のように光りはじめ、

 空は静けさのうちに波紋のように広がり、

 大地はそのぬくもりに目を覚ました。


 火を望む者には、燃ゆる炎の力を。

 水を求める者には、深き海底の静けさを。


 ひとつの町に集う人々から国、世界へと広がり、

 その人々の祈りは、

 夜ごと、風にのって天へ昇り___

 戦士は、言葉を持たずして、それに応えた。


 彼が遺した力は、名もなき贈りもの。

 誰にも知られず、

 誰よりも深く、人々を包んだ。


 その始まりを呼んだ山の名を人々は後に戦士の風貌を元に

白雲山しらくもやま》と名付けた。


 それからというもの、

 白雲山は神の山と呼ばれるようになった。


 いまもこの山から、

 その伝説は、風とともに、

 静かに、けれど確かに、生き続けている。」


 何も見ることの出来ない暗闇の中、男が1つのおとぎ話を語った。

 姿は?正体は誰なのかも知ることは無い、見ることもできないが、声で彼は男だと分かった。


 ???「貴方は誰?」

 語り手「ただの語り手」

 ???「ここはどこ?」

 語り手「まだ未完成な場所」

 ???「いつ完成するの?」

 語り手「それは君次第だよ、」

星雲ほしぐもカイ」


その名を呼ばれると同時に声は徐々にこの世界から離れるかのように遠くなる


意識も共に遠くなる


そして__


???「はっ!?」

在り来りな台詞と共に少年は上半身を起こし、布団を膝元までめくり、目を覚ました。

???「なんだか変な夢を見たなぁ…あぁッ!?今何時?!」

少年は夢の内容を思い出そうとした時、突如慌ただしく時計を手に取り時間を確認した。

???「『7時42分』…!まずい遅刻する!!!」

少年は時計の時間を確認し青ざめ、眠気が全て吹っ飛んでしまったかのように、

すぐに体を起こしあげベッドから起き上がり

ドタバタと騒がしい足音をならしながら階段を使いリビングへと降りていった。


〜リビング〜

???「《カイ》!!やっと起きたのね」

リビングに降りた矢先に1人の女性がキッチンから話しかけてくる。

カイ「…ごめんってば…《フェデリカお母さん》」

カイと呼ばれた少年は少し不貞腐れながら心にこもってなどいない謝罪の言葉を述べる。

フェデリカ「全く…"入学初日"から遅刻したいの?」

「だからあれほど早く寝なさいと夜に言ったでしょ!」

「全くアンタってやつは____」

金髪の髪に青い瞳をしたオールバック型のセンターパートの髪型をしたフェデリカという名の母親は、まくし立てるかのように次々と説教の言葉を述べる。

カイ「分かった分かった…分かったってば」

よくそんなに説教の言葉が浮かび上がるもんだなと思いつつカイはお気持ち程度の相槌をうった。

カイ「急がないと……!!」

フェデリカ「ご飯できてるからさっさと食べて急ぎなさい」

カイ「分かってるよ」

フェデリカ「分かってる分かってるって、アンタ分かってないくせに分かってるって言うの辞めなさい」

カイ「…」

フェデリカ「まぁいいわ」

「お母さんも準備できたら学校向かうから」

カイ「はーい」

食卓につきガツガツと食事を済ます

フェデリカ「アンタ本当に食べるの早いね」

カイ「そお?」

フェデリカ「まぁ遅刻する時には便利だけど消化に悪いからゆっくり食べなさいよ?」

カイ「んー」

「ご馳走様でした!!」

フェデリカ「言ったそばからもう食べ終わりやがった…」

カイ「そういえば荷物部屋になかったんだけどどこ?」

フェデリカ「朝起こしても起きないから遅刻すると思ってもう玄関にあるわよ」

カイ「さっすがお母さん!じゃ行ってきまーす!」

ドタバタとまた足音をならしながらリビングを出て玄関へ向かう

フェデリカ「全く……世話を焼ける息子だわ」

「さて私も準備しないと」

〜玄関〜

カイ「よし…」

靴を履き荷物を背負いそしてドアを開け外へ1歩踏みだす

カイ「行ってきます」

玄関は誰も居なくなり静まり返り、玄関には玄関収納に置かれた1つの家族写真が取り残されていた。


???「…うんそろそろ時間だ」

静まり返った家の中。1人の男が呟いていた。

???「…じゃあ、行ってくるよ《 》さん」

1人の男は飾ってある写真を手に取り、その写真に向かってサロという名を呼び外へと出た。


〜外〜

カイ「まずいまずい本当にまずいっ!!」

外へ出るやいなやカイは颯爽に走り続けていた。

カイ「このままじゃ絶対に間に合わない…ッ!!」

「しょうがない…!疲れるけどスピードを上げなきゃ…!!」

カイは足に急ブレーキをかけ


1度停止し


瞳を閉じ


深く深呼吸をし、


瞳を開けたその瞬間___


バァァンッ!!


と破裂したかのような音が外に鳴り響いたと同時カイは疾走し始めた。

砂埃がカイを目立たせてくれるかのように舞い、

アスファルトは走り始めると同時にヒビが入る

カイを中心に辺りに軽い風圧が発生している

髪は乱れたオールバックに近い形なり、耳にはゴオォと風圧の轟音が鳴り続けた。

疾走により車を追い越すほどのスピードを出すことを可能としたのだ。

カイ「時速約70km程度…!!!」

「自他ともにあまり被害を出さずに早く動けるギリギリの速さ!!」

「家から学校は大体2.5km…!!2、3分もあれば着く!!!間に合う!!!」


カイ「(ここは 日本 H海道 S市 白雲町」

「(僕、星雲カイは今まさに新しい人生が始まろうとしているんだけど…遅刻しそうなんだ)」

カイ「お……!!見えてきた」

カイは40m程先に見える学校を目視しブレーキをかけ砂埃をあげた。

そしてピッタリと校門前へ到着した

〜校門前〜

カイ「(2017年4月…今日は小学校の入学式)」

「(突然だが僕は今モーレツに緊張している…)」

「(何故かって?何度も言うけど今日は入学式なんだ)」

「(新しい出会いに新しい場所…緊張するに決まってるじゃないか!)」

「(まぁ落ち着くんだ僕、普通に話せばいいんだよ普通に!)」

「さぁ行こ___ぉ__」

カイは勇気を奮い立たせ進もうとしたが、玄関前に居る人物を見て足を止めた。

カイ「…」

玄関前に居る人物には惹かれる神秘的な白髪に、深海のような見ていると吸い込まれるかのような蒼い瞳、背丈はカイより少し高く、使い古された感じのしないランドセルから自身と同じ新入生だと直感で理解した。

白髪の少年「…!」

カイ「!」

白髪の少年は目線に気づいたのか目を合わせ

数秒2人は見つめ合い静寂が訪れた。

白髪の少年「フフッ…」

白髪の少年は優しい顔で軽く微笑むと玄関へ入って行った。

カイ「なっ…!」

キンコンカンコンと澄んだチャイムの音色が外まで響き渡る

カイ「うわあ!!!ちょっと待って!」

「入学初日から遅刻は嫌だァァァァァ!!!」

カイは悲痛の叫びをあげながら慌てて走り出す。

〜教室〜

カイ「ァァァァァァッッ!!!!!」

「あ…?」

教室だ、先程、本当数秒前まで学校の玄関外に居たはずが校内どころか教室にまで来ていた。

カイ「えぇ?!教室……!なんで!?」

思わず声に出す、クラスメイトになるであろう教室内に居る同級生達の怪訝な目線を沢山感じる。

カイ「…ッ!!す…!!すみません!!」

恥ずかしそうにそして分が悪そうにカイは自身の席を見つけ着席した。

カイ「(絶対変な目で見られちゃったよ…走るのに夢中になって気づかなかったのかな…)」

机の上で頭を抱えつつ軽い1人反省会をする。

白髪の少年「ハハハッ…」

少し離れた席で白髪の少年はカイを見ながら軽く笑っていた。

ー1時間後ー

カイ「…色々あったけどなんとか入学式を終えれた〜…」

一通りの行事を終えたのかカイは少しばかりぐったりしつつ教室へと戻っていた。

カイ「(この学校、想いの丘小学校》は全校生徒138人で生徒数が少なく1学年23人1クラスが普通の学校)」

「(つまり……)」

カイは右斜め前へ視線を向け、そこに座っていたのは

カイ「(やっぱり居るよね…)」

例の白髪の少年だった。

カイ「(あの白髪の少女…いや少年か)」

「(あの淡い冬の白花のような髪にあの大海原のような輝いた目)」

「(なーんか見ちゃうんだよな…)」

「(…え?何今のキモイ表現…)」

小学生離れした感想と己の表現の気持ち悪さに吐き気を催しているようだ。

「(…まぁそんなことはさておき今はクラスの自己紹介、次々へと人が前に出て自身のことを話す、面白い掴みをする人にまともな話をする人そしてちょっと寒い話をする人も)」

「(因みに僕の番は終わったよ!!)」

ザッ…

カイ「!」

自身の番が来たのか1人が席を立つ

カイ「(あの子の番だ…)」

白髪の少年は笑顔で自信に溢れたような表情をしつつ教卓へ向かい。そして。

白髪の人「《白崎啓太しらさきけいた》です!よろしく!!」

カイ「… …」

白崎啓太と名乗った少年は次々と流暢に自身について話している

面白おかしくそして分かりやすく、そしてスムーズに自己紹介を終えた

カイ「(凄いハキハキ喋ってスムーズ…コミュニケーションのーりょくってやつだっけ)」

「(凄いな…)」

カイは感心しつつずっと啓太を見つめる

啓太「!」

カイ「!」

再び目が合ってしまう。

カイは思わず一瞬逸らしもう一度啓太を見ると

にかっと僕に向け笑っていた

カイ「!眩しい笑顔だな…」

思わずボソッと言葉をこぼした

「(なんだかどこかで感じたことのあるような…)」

「(……まぁ顔がいい子だから変にそー思っただけかな?)」

自己完結しその後のクラスメイトの自己紹介も聞いていった


カイ「ふぅ〜」

一通りの内容が終わり放課後へとなった。

何人かは友人ができたのか、早速数人で帰る子もおり、

教室をみな後にし、残っているのはカイ1人だけであった。

カイ「…なんて言うか初日から結構驚き続きだったな〜」

「明日から登校開始…これからこんなのが続くと思うと」

「なんだか面白そう…!」

「…よし、帰るか」

席から立ち扉を開け廊下へ1歩踏み出し教室を後にしようとした瞬間。

???「おーい!!」

後ろから声がした

カイ「え?」

思わず振り返ると誰もいなかったはずの教室から先程の少年白崎啓太がおり、話しかけてきた。

啓太「君、星 くもカイだっけ?」

カイ「…うん、星 ぐもカイだけど」

啓太「ぐもかぁ〜!!!」

「俺白崎啓太!」

カイ「うん知ってる」

啓太「それでさ、お前家どこ?」

啓太は淡々と元気のある声で尋ねる

カイ「あそこを曲がって___」

教室の窓に指を指し大まかな内容を教える

啓太「え!?めっちゃちけぇじゃん!?」

「ねぇ一緒に帰ろーぜ?」

カイ「…いいよ?」

元気だなぁと思いつつカイはその提案に乗り、2人は教室を後にした。


〜外〜

カイ「(……いや楽しい!!!意外と話が合うんだよな〜……!!)」

案外カイと啓太は話が合うらしく互いに楽しく話をしあっていた。

カイ「あ…」

そのとき、カイが立ち止まった。

カイ「(もう着いちゃった…)」

時間を忘れ夢中に話していたため、あっという間に自宅の前へ着いていたのだ。

カイは名残惜しそうに言葉を述べようとする。

カイ・啓太「じゃ、家ここだから」

カイは自身の家を啓太はその隣の家を指さした

カイ・啓太「・・・」

「はぁぁあああああ!!!?!??」

2人の驚きの声が辺りへ鳴りびく

カイ「と…隣?僕君のこと1度も見た事無いんだけど……」

啓太「あぁ…俺もお前のこと見たことない…」

「…」

啓太は驚きつつも少し間を置き、落ち着いたあと。また微笑みながら

啓太「ま、これも何かの縁だってことで仲良くしようぜ」

カイ「…うん!!」

カイは入学初日に早速友達ができた。

2人は互いの家へ入りその日は会話を終えた。


〜部屋〜

陽の光がカーテンの隙間から差し込み起きろと言わんばかりにカイの顔に光を差し込んでいる。

カイ「…はっ!」

「朝だ!!」

「起きた!!」

「学校に行く時間だ!!!」

元気よくドアを開け外に出ようとすると。

啓太「よ!カイ」

玄関を開けたすぐ目の前に啓太が立っていた

カイ「うわぁあ?!?!」

カイは驚きのあまり体勢を崩しコケてしまう。

啓太「wwwwwww何してんだよwwwww」

その様を見た啓太が思わず爆笑してしまう。

カイ「びっくりしたぁ…って何笑ってるんだよ…w」

啓太「いや…wちょっと反応が………w」

「行こ…w行こーぜ……wwwww」

カイ「うん…」

啓太「wwww」

声にならないような声で息ができないと言わんばかりの笑い声をあげ続けている。

カイ「もういいって!!!ツボりすぎ!!!」

朝から忙しいスタートをした2人であったが学校へ向かった。


〜教室〜

カイ「(月日は流れて8月)」

「(学校にも慣れて友達も何人もできた、少しずつ充実してきている〜♪)」

そしてこの8月がカイのそしてこれからの人生を大きく変えるでもあった。

啓太「遊びに行くぞぉぉ!!!カイッッ!!」

前の席から啓太が元気で大きな声量で話しかけてくる。

カイ「啓太…今は授業中だよ…?少しは静かに。」

4月から8月に月日が流れているので当然席替えもあり、啓太はカイの1つ前の席へと来ていた。

啓太「いいんだって!んだから」

カイ「…?」

「…それでどうしたの?」

啓太「遊びに行こうぜ」

カイ「どこで」

啓太「公園で」

カイ「いつ」

啓太「今」

カイ「馬鹿なこと言うな!!!」

啓太の呆れた発言に思わず大きな声を出してしまう。

先生「カイ、今は授業中だから静かに!」

大きい声をあげたことにより担任から軽い説教を受けてしまう。

カイ「…すいません」

啓太「ハハハッ!!!」

啓太は手を叩いて怒られているカイを笑っている。

カイ「何笑っているんだ…なんで僕だけ怒られて」

納得のできないような顔をしながら啓太にそう言葉をこぼす

啓太「だから言っただろ?お前以外に聞こえてねーって」

啓太はやれやれと言わんばかりの表情で言う

啓太「それでどうする?遊ぶ?」

カイ「…授業を抜け出して遊べる方法があるならやってみな____」

「よ…」

〜玄関前〜

辺りに風を感じる。草木の匂いもさっきより感じる。今さっきまでいたはずの教室と全く違った景色、ここは学校の玄関前。何故か玄関前へと来ていた

啓太「ほら行くぞ」

啓太が先を進み学校を後にした

カイ「え…え?……うん」

「(何が起こったんだ……さっきまで僕は教室に…無意識のまま外へ出たの…?)」

訳も分からず困惑しているがひとまず啓太の後へついて行くことにしたのであった。


〜白雲公園〜

白雲町にある公園で面積は広く子供から大人までが多く訪れる白雲町の中でも人気な公園である。春になると桜が沢山咲き誇り花見に来る人も多い。

カイ「それで…公園に来てどうするの?」

目的地へたどり着いたカイが啓太に声をかける。

啓太「お前には話さないといけないと思ってさ。」

啓太がいつにもまして少し深刻そうな顔で話し始める

カイ「話って?」

啓太「入学式の時や今さっきみたいにお前がした時の話…」

カイ「・・・」

カイは驚きのあまり目を大きく見開き口を大きくあげ、ポカンとこれ以上ない間抜け面をしてしまった。

啓太「カイ顔、顔」

「凄いことになってるから…」

カイ「僕本当に瞬間移動したの?」

啓太「逆になんだと思ったの…」

「…まぁ厳密に言えばしたんだ」

カイ「ワープ?」

啓太「俺には普通の人間にはねぇ特殊な力を持っているんだ」

「『人の願いや祈りが影となり形になって現れるというところからこの力を《 祈影イメージ 》」

啓太「その《祈影イメージ》を持っている人は皆、《祈影人イメージスト》と呼ばれている。」

「まぁこんな急なことを言われて信じられねぇと思うが」

「俺はその《祈影イメージスト》と呼ばれる力でお前をワープさせたんだ」

カイ「信じるよ」

啓太「…そうだよな、やっぱこんな急なこと言われて信じるやつは…」

少し悲しげな表情を浮かべ納得するかのような顔をする。

「え?」

だが思いもよらぬ返答にその表情は一転した。

カイ「信じるよ、実際に体験したんだし信じるしかなくない?」

啓太「…そうか!じゃあ俺の《祈影イメージ》のことを教えてやるよ!!」

啓太はまたいつもの自信に満ちた話し方で説明し始める

啓太「俺の《祈影イメージ》は《想造クリエイティブ》」

カイ「くりえ…なに?」

啓太「まぁ簡単に言えば"考えたものが自由に出せる"ってとこだな」

「例えばな…」

啓太が手を前にかざす

「『剣を出したい』!」

言葉と同時にかざした所に無から少しずつ物体が粒子となり繋がり形成されていく

繊細にそして巧妙に。

そうしてできあがったのは赤と黄色の近未来的な剣というよりサーベルであった。

カイ「……剣?」

啓太「そうだよ」

「ほら、これやるよ」

啓太がサーベルをカイに渡しカイはそれを受け取る。

カイは受け取ると不思議そうに振り回した

啓太「…簡単に振り回せるんだな…小学生には少し重いと思うんだが…」

不思議そうに軽々と振り回すカイを物珍しそうに見つめていた。

カイ「え?あぁうん、なんか……不思議だな…しっくり来て」

「こんなの持ったことないのに」

振り回しながらカイは応え、話し続ける

カイ「それで…なんで公園に来たの?」

「これを渡す為?」

カイは本題を啓太に尋ねる

啓太「それもそうなんだが…」

啓太は少し言葉を詰まらせ

啓太「お前に"力をつけて"欲しくてな」

カイ「力?」

啓太「俺はある組織の元でこの《祈影イメージ》を使って悪いヤツを捕まえてんだ」

「その組織の名前は____」


ドゴォオオオン


と啓太の話を遮るように爆発音が辺りを鳴り響いた。

カイ「な?!また爆発…?」

「ココ最近爆発事故多いよね…一体何が…」


そう、この白雲町ではここ数週間多数の場所で原因不明の爆発事故が相次いで確認されている。

怪我人は多数。死亡者は確認されずである。


啓太「しゃがめ」

困惑気味なカイをよそに啓太は簡潔に命令をする。

カイ「え?」

カイが疑問に思いながらも命令通り地にしゃがむと同時に


ズドォォォン!


と後ろから爆弾が襲った。


祈影人「ガキがこんな昼間に…何やってんだよ?」

一人の男が爆発した煙幕の中からやってきた。

祈影人「不良気取りか?くだらねぇ」

カイ「今のは…!」

啓太「近頃勃発している原因不明の爆発事故」

「ちまたじゃ祟りだとか呪いだとかカルト掲示板で言われてるが」

「こういうのも大体俺みたいな《祈影イメージ》を持ったヤツが引き起こしてんだ。」

啓太が冷静に話をする

カイ「でも原因不明の事件って白雲町結構多いよね…オカルト系でもよく騒がれてるし…」

啓太「ここの白雲町は不思議なことに『普通に使用するときより《祈影イメージ》の威力が増してる』。」

「だから悪事を働く《祈影人イメージスト》通称、《無法者ローグレイヤー》はこの町に多く群がって悪事を働くんだ。」

「最近の爆発事故は大方こいつがやってたんだろ」

啓太は説明を終えると、爆弾持ちの《無法者ローグレイヤー》は少しイラついた素振りを見せながら話し始める

爆弾の無法者「ペラペラとうるせぇな…」

「その知識量。テメェも《祈影人イメージスト》か」


啓太は爆弾の《無法者ローグレイヤー》を見るとニヤッと笑い左腕を横にやり、手のひらを広げ名前を呼ぶ 。


啓太「《オブシスピアン》」


そうして先程のサーベルのように繊細に素早く作られた武器は

3枚の黒曜石の刃が付いている槍であった。

啓太はそれを得意気に振り回し構えた。


啓太「今泣いて謝ったら…怪我しないで捕まえてやるよ」

挑発的な態度をとりオブシスピアンと呼ばれた槍の刃は確実に無法者の顔を捉えている。


無法者「ガキが……!ヒーローごっこはママとやるんだな…!」


カイ「……????」

突然の情報続きにカイは状況が追いつけていないようだ。


啓太「降伏の意思は無し…」

「《修正デバック開始》……!!」


その言葉と同時に啓太はオブシスピアンを構え無法者の方へと突っ切って行った。


無法者「オラァッ!ウォラァッ!」

両手にもつ爆弾を次から次へと向かってくる啓太へ投げつけ接近を阻んだ。


啓太「爆発物でさえも無鉄砲に投げりゃ当たるもんじゃねぇんだよ!!」

投下される爆弾を一つ一つ華麗に交わし距離は早く縮んでいく。


啓太「ふっ!」

啓太が天に届くのではないかと疑うくらい軽々と高く飛び上がり、《無法者ローグレイヤー》の背後へと回った。


啓太「トロいぞ…ッ!爆弾頼りにろくに鍛錬してねぇな!」


啓太がオブシスピアンで背後から斬ろうとしたその時___


無法者「ッ!」

無法者ローグレイヤー》の背後から無数のピンの外れた手榴弾が姿を現した。


啓太「なっ!!」


ドゴァァァァンッ!



無法者「手からしか発現してなかったからよォ〜ッ!」


煙幕の中から《無法者ローグレイヤー》の姿が浮かび上がる。


無法者「背後は油断しただろ?」

「残念だったな!俺の爆弾は身体の至る所から生成できる。」

「手にだけ絞ったのはただの油断させるためのブラフ。」

「これがガキと大人の頭の使い方ってヤツよのォ〜!」

勝利を確信したこの豪快な笑いが公園中を響かせた。

「さぁて……肉片になったガキを見るのは辛いが背後を見てやるとする____か」

「……は?」

背後に散乱しているはずの肉体はどこにもなく。ただの焼けた地面しかなかったのであった。

無法者「まさか……肉体すら残さず爆散したっつーのか……ははっ!悲惨で何よ___」


ザグッ!


無法者「ッ!!がァっ……んだ……と……?!」

腹部を啓太のオブシスピアンが貫通していた。


啓太「……はぁっ…」

「…助かったぜ…

カイ「…」

カイが片膝で立ちで啓太を守ると言わんばかりに背を向けている。

無法者「テメー……生ぎてっ……!」

無法者ローグレイヤー》は地に倒れ這いつくばる。


啓太「爆発するそのギリギリの瞬間。」

「カイが思いっきり全速力で俺のことを押してくれなきゃ、油断して大怪我してたかもしれなかったぜ……」

カイ「……時速約45km…!啓太が受身を取らなかったら骨折っちゃってたかも……!」

「走るのだけは昔から得意なので……!!」

「…ギリギリ……間に合った…ッ!」

咄嗟の行動からだったのか、カイは荒々しい息をたてる。


啓太「……残念だったな《無法者ローグレイヤー》、お前は俺でもなく何も《祈影イメージ》もねぇガキに見事やられたってわけだ。」

啓太が倒れた《無法者ローグレイヤー》に近づきオブシスピアンを引き抜いた

無法者「……かはぁっ……」

口と腹部から出血をし、《無法者ローグレイヤー》は倒れた。


啓太「安心しろ、致命傷じゃねー。まぁ暫く動けねぇだろーけど」


啓太「それで……」

啓太が表情を暗くしカイの顔に迫る。

啓太「なんであんな状況で突っ込むかねフツー」

「危ねーから無茶すんじゃねぇーよ」

カイ「うっ…」

啓太「今回は助けられたしとやかく言わんが」

「死なせたくねぇから言っとく。今回は運が良かっただけだ。」

「生半可なやつならいけてもフツーの《無法者ローグレイヤー》はそうはいかない」

「勝手に命捨てるようなことはすんな。」

カイの額に軽くデコピンをした。

カイ「いたっ…!」

「……面目ない」

啓太「だけど助かった……!」

「ありがとな!カイ!」

にっ!と啓太は元気よく笑った。


啓太「っと……いけねぇ忘れちゃダメだよな」

無法者ローグレイヤー》の上へ座り込み耳に付けられた少しゴツめな鉄製のインカムに触れた。

その瞬間すぐに通話は応答されたようだ。電話で例えるとワンコールに満たない程の時間だ。

啓太「もしもし?捕まえましたよ例の爆弾魔の《無法者ローグレイヤー》」

「えぇ、今転送します。」

電話を切り啓太は立ち上がった。


カイ「誰と話していたの?」

啓太「さっき話した俺の居る組織の人間」


そして、啓太は《無法者ローグレイヤー》から少し距離を取り、《無法者ローグレイヤー》へ手を伸ばした。


啓太「《想像クリエイティブ》」

「《転移ワープ》」


その言葉と同時に《無法者ローグレイヤー》の地面には転移装置であろうものが発現し深く下へと落下して行った。


啓太「後はそこにいるヤツらに世話になるんだな。」

そう言い捨て。転移装置を閉じた。


カイ「……これが僕が何度も使われた……」

啓太「あぁ、《想造クリエイティブ》でつくった転移魔法だ」


カイ「気になるんだけど……君達の組織?って結局どんなところなの?」

カイが素朴な疑問を問いかけた。

啓太「そうだな…警察だとか自衛隊だとか色んな組織と連携して《祈影人ローグレイヤー》が町や世界を護る」

「言わば《日常ordinary》を造る」

「そんな組織。」

「所謂"ヒーロー"ってやつだ」

カイ「ヒーローねぇ…」

啓太「勿論、全員戦うわけじゃなくて」

「サポート、護衛、戦術、裏方。色んな役割があって護ってる」

カイ「それって《祈影人ローグレイヤー》?が全員が入っているの?」

啓太「いや、《祈影人ローグレイヤー》が全員入ってるんじゃなくて」

「適した能力を持つ者のみが組織に入れるんだ。」

「適してないやつは普通にその辺で暮らしているぞ」

「まぁ《祈影イメージ》のデータだけは採られているがな。」

「他にも適した《祈影イメージ》だが親が《祈影イメージ》の存在を隠して見つけられなかったりするケースも稀にある。」

「そんなヤツらが大半悪事を働く《無法者ローグレイヤー》になってる」

カイ「色々難しいんだね…」

啓太「俺の《想造クリエイティブ》は結構特殊で」

「基本的に《祈影イメージ》は」

「炎、水、魔法、身体強化。他にも色んな種類があってその系統に大体の《祈影人イメージスト》は入っているんだが」

「俺の場合、どれにも当てはまらないの」

「でも戦闘向きだから幼い頃からこの組織に入ってる」

カイ「だから戦い慣れてたんだ」

啓太「そういうこと、」

「それで本題。」

「さっき叱ったけどよヒーローっつーもんは結局自己犠牲の塊だ。」

「お前にはそれがあった。」

「お前、人を救うのに興味はある?」

カイ「なんでそんなこと?」

啓太「ここまで言って分かんない?」

「スカウトだよ。」

「ヒーローのスカウト。」

カイ「え?!」

「いやいやいや!!祈影《イメージ》なんて持ってないんだよ?!」

「なんでそんな急に僕を…」

啓太「俺は見る目がある」

カイ「…うん?」

啓太「それでお前を見たんだ」

カイ「うん」

啓太「こいつヒーローできるなって思った」

「だから誘った」

カイ「軽すぎでしょ!?それだけ?!」

啓太「で、どうする?」

啓太は再びカイに尋ねる。

啓太「お前に世界を救う覚悟はあるか?」

「誘っておいてなんだが、ヒーローってのは常に死と隣り合わせ、闇と隣り合わせなんだぜ。」

啓太は少し深刻そうにそして圧のある話し方で述べた。

カイ「…」

「(僕はヒーローになってみたかった)」

「(テレビの先にいるヒーローは全員格好よくて、すごく強くてみんなを守る素敵なもので、そしてなによりヒーローを見るみんなの顔は笑顔だった。)」

「(そんな素敵なヒーローになれるのなら僕は)」

「やるよ、」

「僕もヒーローになる。」

答えを聞いた啓太がニヤッとまた笑う

啓太「よし、じゃあ今日からお前を鍛えて実際に仕事をこなしてもらう。」

「いいかカイ、目標は《日常ordinary》だ。それを忘れるなよ」

「じゃあ早速訓練…いや…アソビ・・・の時間だぜ」


_この物語は星雲カイと白崎啓太が奇妙な力、《祈影》のある町で日常を取り戻す物語である_



Ep.1 END To be continued.

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