2:迎撃開始コフ その1
「電話? え? あ、俺が掛けたままかもっ」
「『カチャ♪ ―――ミミコフと呼ぶコフにゃ』」
腕のデータウォッチと、頭に乗せたAR対応眼鏡の、両方から聞こえてくる、かわいらしい
「
腕を軽く持ち上げ、目と鼻の先の、
『ミミコフと呼ぶコフ』
カチッとした乱れのない動きは、
通話
『げっへへっ、……あれ? ワル……―――と思ったけど違う? ……あれー?』
変顔をやめ、眼を
その時、背後に映り込んでいる、
少年は硬直する。ついさっき、”画面越しの視線を正確に交え会話する”という、NPCみたいなまねを実際にやって見せたのだから、この反応も仕方無いだろう。
「おう、こ、こいつぁ、オマエ等の設計制作元でもある、”たこ焼き大介”設計師の手による、試作……えっと何番目?」
話しながら金ピカ頭の側まで歩いていき、再びAR対応面白眼鏡を掛ける。少年は金ピカに向かって、下手な
「へ? あ、……69番、―――じゃ
「そういうことだ。仲良くしてやってくれ」
ミミコフを、ワルコフと
たとえ、自己進化型の器用さを持ってしても、仮想人格上の
現に、小鳥は、両目をビカビカ光らせて、難色を示していたが、本人が必要を感じなければ、その方向へは
映像越しの視線が、交差すること2秒。
「へー、そーなんだ、……じゃあ、オマエ、一番、
美少女は、急ににこやかな笑顔を見せたあと、尊大で横柄な態度で、何かのカードを差し出し、威嚇した。
カードは、その辺の自販機でもクイックチャージが可能な、特区発効のスペースドル専用パスだ。ある程度は自由に、行動できるようにと、
物理的には存在せず、あくまで、仮想空間での少額決済にしか使用できない。
ちなみに、可愛らしい仕草で
「どうやら、……正確さよりも……目先の先輩風を……吹かすことに、……重きを置いた……ようどすなあ」
コウベの変顔も収まり、ほっとする
「まあ後で、……
ワルコフの存在は、
”謎VR技術で特許または実用新案”という儲け話が
ハードウエア上の量子的特性を応用した”
設計思想に
それ自体、
というか、ハッキングツール
そんな”ワルコフ”を、運営当局である、特区管理者が確認しようと思えば出来ない訳がないのだ。
運営サイドの”プレイ不介入”の原則と、
基礎研究の時代から存在し続けて来た割に
ちなみに、”
ヒソヒソヒソ。
その
グギギギ―――分子構造的に、それほど柔軟さのないカードがしなる。
巨大映像の中の美少女は、再び顔面に支障を来した。
―――古来から受け継がれる由緒ある
んぐぐぐぐ。にゃにゃにゃにゃにゃ。双方、ムキになっている。
ビョビョン!
剛性により、カードが元に戻った―――”
VRーSTATI◎N地下2階、格闘ゲームと自販機の有るフロアから、姿を消すミミコフ。
「んなっ? ワルにゃっ……モゴゴ」
まだ、背中にしがみついていた、
ピンク髪の猫耳メイドさんが映り込むと同時に、カメラがズームアウト。
メイドさんは、その輪郭を、全身をブルブルと振り回し、VRスケールサイズに拡大した。
ヴュワン!
とは言っても、約30センチ。倍にはなったが、実物大とは言い難かった。
「きゃーー!? まーたー増ーえーたー!」
突如、出現した、新たな、NPC反応。
予定外の乱入NPCは画面から察するに、4体目。
その下には、駅前にあったコンビニと同じ
ARを駆使したVR空間ばりの、戦闘フィールドには、コンビニまでが完備されているようで、―――。
「ほらっ! 行って来なさいよ! アタシ、”
目を見開いて歯を食いしばり、鼻の下を伸ばしたり縮めたりを、繰り返すコウベ。
小鳥に脳天を突かれながらも、注文と横柄な態度は変わらない。
「こらー!
再び変顔を披露し始めた、自分に瓜二つの美少女。NPC”コウベ”に抗議する金ピカ頭。その
慌てふためく声の調子から察するに、
わずかながら、背丈の高くなったミミコフが、映像の中から
全長約30センチになり、ハッキリと判別できる様になったその表情が、困惑に満ちる。やがて、野生動物の険しい表情へと変化していく。グルルル。開いた口から、覗く尖った牙。
「おーい!
「おーう! って聞こえねえのか、……コウベ伝言しろ!」
「ふ、ふーんだ! ”げっへっへ”の言う事なんて、聞かないんだかんね」
名指しで、構われたのが、嬉しかったのか、照れる表情を隠そうとする変顔の
てめえ、まだやってんのか。俺ぁそんな、笑い方してねえだろっ!
会話型アブダクションマシン。いくら、会話を元に自己改変を進める高性能AIと言っても、稼働時間は一週間にも満たない。
心の
寄り目で、頬を膨らませ、顔の両サイドで、手のひらを高速回転。
「アンタはん! ……そんなんどこで……覚えて来はったん? ……ええかげんに、……しなはれっ!」
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