1:中ボス試験ってなあに? その3
ここは、”VRーSTATI◎N特区本店”、駅ビル地下2階の自販機コーナー件、レトロ筐体コーナーのフロアだ。
地下2階には、駅構内へ続く大通路や、大繁盛している常設の弁当テーマパークのある駅ビル
地下2階へ降りる大半の客が、そちらへ流れていく。
VRーSTATI◎Nに用が有る客も居るには居るが、
決して、フロア中央にポツンと置かれた、対戦ゲーム機に用があるわけではない。
その寄りつく人のない筐体用に置かれた椅子。座る美少女。
彼女は、目の前をヨロヨロと通り過ぎていく、長袖シャツにすがりつく。
「ちょっと、……
「うっわひっ!?
「あてえが、……聞きたい……どすえ? ……なんで、……
「通れないんスか?」
振り向いた少年、……の生え際から、タラリと血が垂れた。
「ぎゃっ! ……血ぃー出て……ますやんか!?」
初めて会った日と同じように、少年の頭を抱えて、怪我を心配する美少女。
「だ、大丈夫すよ。さっき階段で転んだだけです」
頭打ったんどすか!? スグ病院行かなっ!
立ち上がるとき、手すりの尖ったとこで引っかいただけで。
ほんとどすな? ウソついたらあきまへんえ?
執拗に頭を抱えて、食い入るように、まさぐり点検する美少女
執拗に頭を抱えられ、点検されていた少年は、ぐぐぐぐと無骨で大きな風呂敷包みを体の間に割り込ませ、ようやく美少女から逃れた。
シルシ少年は、VRE研の他の面々と比べると、やや
「じゃあ、……コレ貼っ……ときますえ」
サマーコートの内ポケットから、
少年の右眼の上辺りを、ピンク色のウサちゃんが飛び跳ねているが、絆創膏の柄は
絆創膏のパッケージゴミを丸めながら、少女は通路へ近寄る。
ぴんぽぉーん、ぴんぽぉおーん♪
壁に開いている人ひとり通れるくらいの通路入り口。
壁から、ぱしゃりと、板状のシャッターが飛び出た。
飛び出ていたシャッターが、即座にパコンと壁に収納された。
美少女は少年を振り返り、
「さっきから……この有様で、……謎の自動ゲートが……通せんぼし……はりますのやっ!」
手にしたゴミを、横にブン投げた。
ぽそっ、ころころ。
いや、外れた。単に、VR技術者達の、
ゴミを拾いに、小走りで駆けていく
半泣きになりながらも、健気にも説明は続く。
そして、
彼は、大荷物を抱えたまま、ジリジリと通路へ近寄る素振りを見せた。
「?
おかしいなー? という顔をする、
バタタタタッ!
大慌てで、通路をブロックしようと駆け戻る、
「……音声入力」「……
宣言通りに、自販機の並ぶ3、4メートル先から、壁を蹴あがり、そのまま壁を疾走する美少女。
その重力を無視した直進方向には、通路が落とし穴のように開いている。フロア床面から1メートル上の辺りへ、数歩で到達した。
パワーブーツ
通路へ駆け込む少年の、前へ突き出された、
少年は、得意のダッキングを披露する。体力及び、運動的な素養の感じられない
壁走りからのキックを回避した少年は、上体を起こし謎のゲートを通り抜け―――ようとして、5
「どっぷびっ!?」
30センチ間隔で、縦に並んだシャッターに、跳ね返された少年。
背中には、量子サーバー1基。背中から床に倒れる訳には行かない。
体をひねるが、壁に手すりがある訳じゃない。
壁に垂直に立つ
少年は肩から床に激突。だが、すんでの所で掴んだ手に引っ張られ、量子サーバーは守られた。
ホッと息を吐く少年の上に、慣性を使い切った
◇
少年は簡易AR眼鏡を掛けた。
「わっ! 真っ赤だ!」
「え? なんか……注意書き……出てますのん?」
量子サーバーにぶつけた
その手に、自分の手を乗せ、やんわりと
「掴んでなくても、置いて行ったりしませんよ。どうせ、俺も、何でか通れなかったし」
「ソレはソウどすな。 ……ウソ言うたら、……あきまへんえ?」
円筒形のバッグを開けて、開発者用のVRHMDを取り出す。
頭に
大人っぽい
ピ・ポ・ポ・ポ―――
基本的に、HMDが起動するまでは、バイザー
動作確認の為に小さく表示される、各種
ヴワン♪
一瞬の瞬きの後、カラーバー表示。次に外部カメラ映像が映し出された。
フルダイブの為の脳波
目の前にいたはずの少年が、居なくなり、取り乱す、金ピカ頭。
「ほらーっ! ……やっぱり、……行ってしもう―――!」
「こっちです、こっち」
椅子に座って、ゲーム画面を見ている姿は、この状況にもかかわらず、今すぐ、ゲームでもプレイし始めそうに見える。
チャリーン♪
1プレイ:500宇宙ドルの決済音。
少年は、この切迫した状況で、レバーに手を掛ける。
いや、各種切迫してはいるが、少年の生活にはまるで無関係ではあるので、問題は無いのだ。無いのだが、
因みに、決済後のデータウォッチ表示によれば、日本円で”60円弱”。
旬の過ぎたアーケードゲームの料金としては、普通といえる。
「こんな時に、……ゲームしてはるっ! あんたはん……むちゃく……ちゃやーっ!」
グリンと振り向いた、金ピカ頭が、肩を振るわせた。
シルシ少年からは、バイザー部分に、
半笑いのような呆れ顔が。
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