ワルコフに気をつけない3
14:ワルコフ爆誕!
1:ワルコフ爆誕!
「ワールーコーフー! どぉーこぉーだぁぁーー!?」
「ワルさぁーん! 怒らないからぁー、出てきてくださぁーい」
チチチチッ♪ チチュチュン♪
ギッギッ。キュッキュッ。
ここは首都近郊、電子防壁で囲まれた”VR拡張遊技試験開発特区”、通称ゲーマー特区。
広大で円形な敷地の地中には、大規模な
地上中央部分にも研究施設が存在し、”緩衝エリア”と呼ばれる広大な平地で区切られている。そして、その外周に生活圏があり、さらに最外周には、アミューズメント色の強い、各種のVR施設や、イベント会場が点在している。
「何言ってんすか! 今度という今度は
と少年は、顔に張り付いているゴーグル部分の左側に付いてる丸いボタンを、押し込みながら、振り向く。
ちなみに現在地点は、特区外周の住宅街にある、『
「へっくち!」
彼の目の前で鼻をこすっている、目鼻立ちの整った美女。縁なし眼鏡の両サイドにはキラキラ光る装飾が埋め込まれている。
白のボートネックのプルオーバー、膝丈の青地に花柄のオーガンジースカート。
教室で見る事務服とは違って、
放課後の通勤服とも、そう変わらない
「あ、大丈夫すか? 何か
少年は慌てて
陽気の良い日が続いているが、今はまだ6月中旬だ。まだまだ朝夕は冷えるため、薄着では肌寒いだろう。
美女の格好と比べると、ほぼ部屋着のままの学校指定の作業服のカーゴパンツに面白Tシャツという格好の少年。非常にラフな
「へーきへーきー。デバイスでぇ首もとぉ少し暖ったかぁいしー」
美女もとい、笹木
スタイル抜群の、背格好には似合わない仕草だが、子供声には合っている。
ハロウィンのような魔女帽子も、着こなしが、実に
ゲーム内の魔法系装備をイメージして、比較的安価で限定販売された、フルダイブVR
「
「見た目よか、全然軽いんで、大丈夫っすよ」
パシンと、
「じゃ、廊下の見張りお願いします」
血気盛んに進もうとした少年に、
「了解しましたぁ、……けどぉ、
2人の間の空中に格子状のグリッドが現れ、『パーティー共有金庫へ接続しました。』というダイアログが表示され―――
「特選おやつ、残数・手羽先2個・・・・・・これだけ!?」
眼鏡のリムフレームの両サイドに付いた装飾が、ピカピカと
「ええ、昨日の
その中には、カタカナの『フ』みたいになっている、”特選おやつ:手羽先”のアイコンがポツンと格納されている。
他にも、何個か並んでいるが、
『小型銃、残数・単発式:89丁』
『
『
『未鑑定鉱石:4個』
壊れたアイコンと化している、使用不可の『ジャンクアイテム1個』
いや、もう一つ、『歯車』が最下段に出現していた。
設定アイコンのようにも見えるが、この形状からすると、おそらく、
VR空間内の広場を埋め尽くすほどの盛況を見せた、『
決戦開始前に、必要な数の小型銃と、NPC達への報酬として十分な”特選おやつ”が集まった。その後も、観戦希望者が後を絶たなかったため、そのままにして置いたのだが、コウベの孤軍奮闘に対する、お
標準的な”特選おやつ”、1個3000宇宙ドルとして、300個くらい有ったのではないかと、試算した結果が、
『@3、000SPD × 300 = 900、000SPD』
表示部分を、何度も流れている、演算結果。
「あらぁー!? つまみ食いって聞いたから、10個くらい食べちゃったのかと思ってたんだけどー」
何せ彼女は、昨日”
「たしかに、昨日、VR教室の引き出しに仕舞ったまま、置いて来ちまったのは、悪かったけど……」
「そうねー。でも、
「そう、アイツ―――じゃなかった、
「まあー、ワルさぁんーがぁー、
意気消沈する、教え子を励ます、特別講師。
「そうっすね、それに、結局、今日は、コウベ達の”中型”試験で部活どころじゃねえからって、始発でワルコフ入りの”
「本当ねー、普通の時間に行ってたら、校舎の中に入れなかったかもしれませんしねぇー」
薄暗い廊下の真ん中で、会議を始める、VRエンジン研究部、部員及び、顧問。
「それにしても、量子データセンター
「えっ? コウベ達の試験とは、関係ないんじゃないすか? 試験会場の、VRーSTATI◎Nは、貸し切りみたいになるのかもしれないっすけど」
「そうかしらねー、まあ、ひとまず、
「そうしてください。今は、とにかく、ワルコフをとっ捕まえて、―――」
少年は、早朝の校舎内で
「
目をそらし、クネクネし出す、担当講師、笹木
「え? 笹木? 妹さんがどうかしたっすか?」
少年は真顔のままで、手の甲に、
ビロロロロッ。
表示された明るい赤色の平面。彼はこの表示を見せたかったらしい。
あら、先生、勘違い? なんでもないなんでもないと、小さく両手を振りながら赤い平面に、赤い顔を寄せる
そこに書かれている白い文面は、以下の様なものだ。
ーーー ーーー ーーー
~『キャリア中型』試験を受験される皆様へ~
1.受験されるNPCの入った『画素対応メモリ』等(※)。
2.『必要書類』への記入、及び電子
3.ソレと受講料として、『特選おやつ』100個。又は、『余剰リソースに類するもの』を特選おやつ換算で100個分。
4.パーティーメンバーどなたかお
上記4点、試験当日までに用意してください。
※『画素対応メモリ』等は、試験日の前日までに提出して下さい。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
ーーー ーーー ーーー
「先生、コレ、特に
「昨日、
「………………」
少年は、無言で、書面の下の方を、指し示している。
書面の最下部、模様か、何かのバーコードにしか見えない不規則なドットで
「……んんーーっ!?」
ドット
ーーー ーーー ーーー
※ゲーム・スターバラッドオンラインユニバース内時間で、『28:30:00SBT』までに、上記の物を、ご用意できなかった場合には、試験キャンセル料金として、金100万宇宙ドルを徴収させて頂きます。
ーーー ーーー ーーー
「きゃぁー!? 100万宇宙ドルですってぇ!?」
「……やっぱり、追記部分まで読めてなかったんすねっ。って、こんなの、通常サイズのままじゃ、読めるわけねーけど」
※2016年6月19日(日)現在―――
データウォッチを確認した
「何してるのぉ! 急いでワルさんをー、捕まえますよぉー!?」
先行して、
『22:30:03SBT』『07:30:01UTC+9』
スターバラッド内時間と、日本標準時が、交互に表示されている。
日本時間で2時間ほどの猶予があるが、時間があった所で事態を収拾することは出来ない。彼女の寂しげなお財布、ましてや、万年金欠の学生達の全財産をかき集めても、
「はいっ! ワルコフ捕まえて”
少年の口から泡が飛び、普段は平坦でゆるーい表情が、やや
がちゃ。ぱたん。
先行する
がちゃ。ぱたん。がちゃ。ぱたん。
ワルコフが逃げ込んだ可能性のある、5部屋のうち3部屋を捜索。すべて空き部屋で物置と化しているので時間はかからなかった。残るは左手前の、ドアが開けっ放しの部屋と、奥の突き当たりの部屋だけになった。
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