第6話

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「実は蓮の客が二十時に来るんですけど、蓮は別の客と同伴で来るから少し遅れそうなんです。だから蓮が来るまで繋ぎで入ってもらっていいですか?」


一難去ってまた一難。

トイレから出て菱田さんに言われた言葉に、僕は以前蓮さんのヘルプに入ってやらかしたことを思い出し固まった。

またヘマをしたら今度こそ蓮さんに辞めさせられるかもしれない……。

しかし新人中の新人である僕に断る選択肢などあるわけがなく「わ、分かりました」と了承するしかなかった。


「緊張しなくても大丈夫ですよ! この間の愛果さんと違って今日の麻奈美さんは穏やかで優しい方なのできっと青葉さんも話しやすいと思いますよ」

「へぇ、麻奈美さん来るんですか? 久しぶりっすね」


菱田さんの言葉に、ちょうど通りすがったホストの龍君が足を止め話に入ってきた。


「知っているんですか?」

「知ってますよ。ホストクラブにくる客には珍しく大人しくていい子ですよ。確か蓮さんがホスト入った頃、最初に指名してくれた子だとかで、蓮さんも大事にしているみたいです。俺も前にヘルプに入ったけど、無理に盛り上げなくていいから楽でした。今日は青葉さんが入るんですか?」

「あ、はい、そうです」

「ほんといい子なんでリラックス大丈夫っすよ~。それじゃあ、がんばってくださいね」


そう言って僕の肩を叩いて龍君は去っていった。

龍君の「無理に盛り上げなくていい」という言葉に僕は少し楽になった。


「龍も言う通りほんとにいい子だから気楽にお願いしますね」

「あ、はい、がんばります!」


今回こそは何事もありませんように、と祈りながら僕はホールへ向かった。



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