第10話「洞窟突入」
アンチートガンナーをホルスターから取り出し、グリップを握りしめて銃口を掌に押し当てる。
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上空に掲げ引き金を引くとノイズ混じり電子音声とロック調の音楽が流れ、銃口から赤紫色の光が放出。球体状に変形した光は身体を包み込む。ヒューマノイド身体の上に紫と黒の装甲が高速で装着されていく。半分生身の肉体から無機物と有機物が混じる身体へと変化、アンチートマンへの変身が完了。アンチバレットコアスパイダーネアを手に取り、アンチートガンナー上部に嵌めこむ。一瞬ネアの妙な声が聞こえるが、気にしたら負けだ。
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音声が流れガンナーとネアが発光して銃口から粒子が放出されて右掌から肘を覆う鋭利な蜘蛛の足装飾が施された武装が装備される。
「念のために遠距離攻撃だ、いいな?」
「はいです!」
ネアからの元気の良い返事と共にアンチスパイダーネアが装備されたアンチートガンナーの銃口を洞窟入り口付近に向ける。おそらく向こうは何かしら気づいている可能性も考慮して遠距離からの射撃を行う。グリップを握る手に力が入り、引き金を引いた。
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音程が少しだけ上がった電子音声と共に、銃口から赤紫と紺色に光り輝く糸のようなエネルギーが放出。螺旋状に回転しながら接近したエネルギーは轟音を立てて岩肌に直撃。
「どわっ!?」
瞬間、蜘蛛の巣形状の紋様が展開されたかと思うと岩全体を包み込み、閃光が光り大爆発を起こした。爆発の衝撃が辺りを包みこちらにまで衝撃と煙が襲い掛かった。
「お、おいおいおい……」
これは、何という威力だ。思わず言葉が漏れる。装填したアンチバレットコアで威力が変わるのなら、ネアの力は相当なものではないだろうか? 勇者風の男に襲われていた時は恐怖に怯えて防戦一方になっていたようだが、そこは獣人。虫人と言う方が適切か。人間よりも強力な膂力と力を持つのだから、ただのか弱き少女と侮るなかれということか。これは接近戦で発動した時もかなりの威力を発揮してくれそうだな。
「流石にこれは派手すぎる。周りの環境に悪影響が出なければよいが……お、おいコンピューター、俺の攻撃で周りに悪影響が起こることは……?」
『そのような心配は不要です。アンチート攻撃はチート、攻撃対象と認識したモノ以外には全くの無害です』
「あ、そう。普通に答えてくれるのか……」
「凄い威力です!」
「あ、ああそうだな……」
「しかし、中にいるゴブリン達は大丈夫だろうか? 怪我を負って死んでいないだろうか?」
「何ですかアンチさん? 意外と心配性ですね?」
「無関係なものまで巻き込んでしまうのはしのびないだろう?」
「それも弱肉強食ではないですか?」
「随分平然と言えるのだな」
待て。これはあくまで自分が持っている人間の価値観だ。彼女からしてみればこれが普通なのかもしれない。しかし、彼女達だってちゃんとした亜人モンスター系というヒューマノイド亜種型ともいえる種族。人間と動物、どちらの価値観と理性が優先されているのだろうか非常に気になるが、長くなりそうだから今は聞かないでおこう。
「それよりも異世界チート転生者だな……」
地面に転がった大量の岩や石ころを避けつつ山道を進み、ぽっかりと大穴が開いた岩肌に辿り着く。穴の中を覗いて見るが、外の光が差し込んでもやはり暗くて何も見えない。光りが届かない奥の方は暗闇が広がっているだけだ。
『赤外線スコープモードに切り替えます』
ナビゲート音声が脳内に響き突如視界が切り替わる。
「これは……まるで赤外線でも見るかのような映像だな……」
この身体にはこんな暗視スコープ機能まで備わっているのか、それともアンチートマン形態の時だけか。この視界なら奥がはっきりと確認できた。
「向かってきますね。私にも敵は見えます」
「ああ。人数は多いな」
赤く表示される熱源反応が多数。これは、爆発に気付いた洞窟内のゴブリン達がこちらに接近しているようだ。しかもかなりの人数だ。その中にはチート能力転生者の存在は確認できず波動も感じない。微かに本能が騒めくが、できれば無関係な者達は傷つけたくはない。敵意があるなら話は別だが、こちら側から仕向けたのだから応戦するのは当然の反応。
だが、ゴブリンだけだと思っていた熱源反応に彼らとは異なる種族が混じっている事に気付いた。データとシルエットが視界に表示されるが、明らかに人間らしきヒューマノイド種族が何人か紛れ込んでいる。どうやら全員武装しているようで、武器と防具のデータが表示される。これはどういう事だ? なんでゴブリンの中に人型種族が混じっている? 一緒に行動しているという事は仲間ということか。状況が呑み込めないまま、鼓舞する様にネアに話しかける。
「仕方がない、切り抜けるぞ」
「わかりました!!」
先程より一際大きなテンションで叫ぶネア。もしや、戦闘になると興奮するのか? それともアンチートガンナーにセットしているせいでこちらの闘争本能がネアにも伝わり野生の本能が刺激されているのだろう。実に頼もしい限りだ。私も迂闊にやられてしまわないよう、力を振るわねばいかんな。
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