第78話 *6* 10月1日火曜日、放課後
十月一日火曜日。放課後。
――ったく、
担任の
二年生がいないというのはなかなかに静かなものだ。二年生の教室が並ぶ学生西棟三階を通りながら、紅は思う。いつも賑やかなそのフロアはガランとしていて、普段の
いい子にしているんだよ――ふと、昨日の
――とにかく、今日は教員が少ない都合で部活もお休みだし、家でおとなしくしてようっと。
三階を通り過ぎようとしたとき、一人の少年が階段を上ってきた。階下にいるのに、その人物の背丈が紅よりも頭一つ分は高いことがすぐにわかる。短い黒髪、日焼けした肌。スポーツ選手かと思わせるがっちりとした体格。
彼の顔が上を向いて立ち止まった。
――忘れてた……今日は確か――。
少年の顔を見るなり、紅は全身から汗が噴き出した。一方で喉がカラカラになり、言葉を失う。メデューサの首を見て石化してしまったかのごとく、もう動けない。
――うっ……痛みが……?
幼い頃受けた背中の傷の辺りが
階下にいる大柄の少年――
(第二章 紅き炎は静かに揺らめく 完)
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