第24話 ★4★ 7月24日水曜日、昼休み

 食堂が見える学生西棟の廊下。抜折羅は食堂入口の騒ぎに目を向けていた。自然とこちらに向かってくる銀髪の少年と目が合う。

「よくもまぁ、やるわな」

 抜折羅は感心してしまい、思わず呟く。

 遊輝がすれ違い様にそれに答える。

「これが僕のやり方だよ。それに一度、あのすかし眼鏡に一泡吹かせてやりたかったんだ」

「八つ当たりの相手になっちゃったわけか。災難だな、会長も」

 心の底から不憫ふびんに思いながらも、抜折羅は少しだけ高揚している自分の内に気付く。そんな心の有り様に戸惑いを覚えた。

「紅ちゃんと星章先輩は家族ぐるみのお付き合いがあるんだって。幼なじみだかなんだか知らないけど、役得でデートなんざ許せないね。君もそう思うでしょ?」

「なんで俺が同意すると思うんだ?」

 さも当然のように振られて、抜折羅は怪訝な顔をする。

「あれれ? 違うのかい? 僕に対するあれは恋の宣戦布告なのだとずっと思っていたんだけど」

「あんたみたいな軽い男につきまとわれたんじゃ、紅が苦労すると思っただけだ」

「ふぅん。じゃ、今はそういうことにしておいてあげるよ」

 含みのある言い方にわずかばかり苛立ちを感じたが、抜折羅は追及しないことに決めたのだった。

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