第18話 ★8★ 6月20日木曜日、放課後
「
ホテルの最上階、スイートルーム。掛かっていたチェーンをホープの力で断ち切り、部屋に乗り込んだのは
「紅から離れろ」
「もう離れているよ?」
紅を包むフレイムブラッドの炎に拒まれ、
「もっとだ」
ウエストポーチに仕込んでいたクラスターを取り出すと、遊輝に向ける。遊輝は降参とばかりに手を上げて、ベッドからさらに離れた。
充分に離れたところで抜折羅は紅に駆け寄る。すぐさまクラスターを彼女の胸元に置いた。炎が鎮まり、フレイムブラッドが紅の右肩から外れて袖口から転がり出る。抜折羅は自身の額に浮かんでいた汗を拭った。
「君も彼女と同じ浄化系のタリスマントーカーなのかな? 力が弱いからわからなかったよ。何カラット? 石のサイズで一度に出力できる力が変わるよね?」
紅に処置を施す抜折羅に、遊輝は
「あいにく、本体はスミソニアン博物館から出られないからな、欠片でしかないんだ」
「君の瞳に宿る光の色とスミソニアン博物館のってことは――あのホープダイヤか」
「今のところ一番災厄を振り撒いた魔性石だから、流石に知っているようだな」
「――で、災厄の申し子がフレイムブラッドに何の用事かい? 彼女は僕がいただいた。君が邪魔する必要はないはずなんだけど」
つまらなそうに問う遊輝に、抜折羅は紅を抱き上げて睨みつけた。
「紅は嫌がっていたんじゃないか?」
「ん? 今時、やることから始まる恋もアリじゃないかい? 奪われることから始まるロマンスさ」
「なっ!?」
しれっと告げられた台詞に、抜折羅は顔に熱が宿るのを感じた。そんな発想は抜折羅の中にはない。
「欲しい物は手に入れる主義なんだけどねぇ」
「あんた、紅の身体だけが目的なのか?」
「違うよ、心も含めてすべて欲しい。〝スティールハート〟を使えば、ある程度いけると思ったんだけどなぁ、邪魔者が……いいよ、興が冷めた。連れて帰れよ、青いダイヤの王子サマ。でも、日を改めるだけだから」
肩を竦めて告げると、さっさと出て行けと言いたげに遊輝は手を動かした。
「ふん、全力で阻止してやる。紅の気持ちがあんたになびくこともないと思うがな」
紅が落ちないようにしっかりと支えると、抜折羅は遊輝に告げて部屋をあとにした。
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