第137話 起床のラッパ吹き
起床のラッパ吹きは、若い船乗りの大事な仕事だ。
晴れの日も嵐の日も関係なく、夜明けとともにラッパを吹いて、屈強な船乗りたちに朝を知らせなければならない。
しかし、ラッパを吹くのは簡単ではない。
船に代々伝わるというラッパは大きくて重く、そしてさびついている。最初のうちは音を出すだけで大変だ。若い船乗りたちは、みな顔を真っ赤にさせる。
音が出るようになっても、ラッパが奏でるのは聞くに堪えないひどい音だ。ラッパを吹く者は耳を痛めないように、耳せんをしながら吹いている。
上手に吹けるようになった者はラッパ吹きの仕事から外されて、船の重要な仕事を任される。そして起床のラッパは、また別の若い船乗りに任される。
おかげで、起床のラッパはいつもひどい音。それが伝統だという者もいる。
だが、そうでなくてはならない理由があるのだ。
つまり、耳障りなひどい音でなければ、船乗りたちは誰も起きてこないのである。
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