第132話 問題のある問題文


「先生、次からはもう少し慎重に問題文を選んでください。今回みたいなことのないように」

「はい、申し訳ありませんでした。このようなことがないよう、今後じゅうぶんに注意いたします」


 私は顔が緩まないようにきゅっと引き締め、教頭先生に深々と頭を下げた。すべては、国語の中間テストを作成した私の責任だ。もちろん反省している。


 今回は長文問題に、とある子犬と少年の物語を使った。ところが、それを読んだ生徒の数名が、感動のあまり試験中に泣き出してしまったというのだ。


 それで、落ち着いて試験が受けられなかった、と保護者から学校に苦情が入ってしまったのである。


 生徒たちには、本当に申し訳ないことをしてしまった。

 まさか読者を泣かせてしまうなんて、書いた僕自身、まるで想像していなかったのだ。


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