第119話 買取価格


「ほお。ずいぶんと価値のある宝石だな。その価値、およそ500万円といったところか……」

 町で唯一の宝石鑑定士は、片眼鏡を外すと静かな口調でそう告げた。


「本当に!?」

 宝石を持ち込んだ客が目を丸くする。

「ああ、わしの目に狂いはない」

「だったら、この宝石500万円で売ります!」

 すると鑑定士は首を横にふった。


「残念だが、買い取るのなら100万円だな」

「え? だって今、500万円って!」

「わしの鑑定に間違いはない。だが、わしは100万円しか出さん。それが嫌なら、この町を出て行くんだな」


「ひどい! どうしてそんな意地悪を言うんですか!」

「意地悪なんかしとらんよ。仕方がないだろう。わしは500万円もの大金、持ってはおらんのだから」


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