第118話 なにかの間違い


『警報だって? 本当なのか? なにかの間違いじゃないのか?』

『いいえ、工場長。間違いではありません。警報装置に故障はありませんでした』

『そうか。しかし、工場では特に問題は起きていないんだろう?』

『はい。ですから今のうちに、工場内の一斉点検をすべきです』

『うーん。なにも起きていないのに点検をするのか? 何度も警報がなるようなら調査した方がいいかもしれないが、まあ今回はたぶんなにかの間違いだろう』


「以上が事故が起きる前日の会話です」

 録音データを再生していた社員が言う。


 社長をはじめ会社の重役たちが集まる会議室は、しんと静まったままだ。工場で重大な事故が発生して、誰かがその責任をとらなくてはいけないのだ。


「社長、なにかお考えは?」

「なにかの間違いじゃないのか?」


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