第116話 準備運動


「部活の前に、まず準備運動をしよう」

 僕の提案に、部員たちは困惑の表情を浮かべた。こいつは突然なにを言い出すのだろうと、そんな顔である。


「別に激しい運動をするわけじゃないよ。飛んだり跳ねたりもしない。軽くラジオ体操をするくらいでいいんだ」

 準備運動で適度に体を温めれば、血行もよくなって、首や肩のコリもほぐれる。脳の血流だって良くなって集中力も増すはず。そう説明すると、部員たちも次第に「なるほどな」という顔でうなずきはじめた。


 強制したわけではなかったが、今では部員のほとんどが部活の前に準備運動をするようになった。その結果、頭痛や目の疲れが楽になった、なんていう声も聞こえてきた。


 最近では、他の部活でも準備運動を採用しはじめているという。

 僕ら文芸部がはじめた習慣は、いまでは文化系の部活でも常識になりつつあるようだ。 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る