第120話 王子の自慢


 幼い王子は、隣国の姫君をお城の庭へ連れて行くと、自慢げに胸を張りました。

「どうだ、すごいだろう」

「はい。とても立派なお庭ですわ」

「そうだろう、そうだろう。庭師たちが、毎日手入れをしているんだ」


 次に、王子は城のいちばん高い場所へ姫君を連れていくと、自慢げに胸を張りました。

「どうだ、すごいだろう」

「ええ。とても素晴らしい街並みですわ」

「そうだろう、そうだろう。わが国の民たちは、毎日掃除を欠かさないんだ」


 姫君がずっと目を輝かせているので、王子はとても嬉しくなりました。

「さあ、次はなにを見せようか」

「それでは王子様。今度はぜひ、あなたのご自慢をお聞かせください」

 王子はしばらく考えたあと、泣きだしてしました。


 王子には、自分の自慢というものが、なにひとつ思い浮かばなかったのです。


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