第67話 しあわせのかたち
「もしもし?」
「あー、メール見た?」
登の間抜けな声がする。
「俺お前にメアド教えたっけ」
「京子に聞いた」
「……、」
京子の名前を聞いて、言葉に詰まった。あれから連絡を取っていなかった。あいつのことだからどこで何を喋っているかわかったもんじゃない。緊張で、背中が冷たく感じた。
「あ、それで、その、おめでとう」
スピーカーの向こうで登が笑う。相変わらず下品な笑い方だった。
ぼくは登に彼女がいることすら聞いていなかったので、とりあえず馴れ初めについて聞いてみた。出会いは三年前、友達の紹介で知り合ったのだという。奥さんのほうが登よりも一学年下なのだそうだ。写真からはとてもわからなかったけど。
ふたりの馴れ初めについてなど、正直微塵も興味はなかった。ただ、登の相手が不美人でどこかほっとしている自分が嫌いだった。
「引っ越したんだよ、また遊びに来いよ」
そう誘われたけど、行く気はなかった。
「まあ、そのうち、」
などといってごまかす。
そのうち話があらぬ方向へ逸れだしたので、なんとか収束させて、
「奥さんによろしく」
とだけ言って電話を切った。
声からでも登が浮かれているのがわかった。どうしてそんなに幸せそうなんだろう。誰かと一緒に暮らすということが、そんなにも幸せなことなのだろうか?
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