スウィートポップを聞きながら



人生を散漫にやり過ごすことに飽いても

どうせろくろく経たないうちに腹は減る

食えばよっぽど眠くなると重々承知でいながら

結局はかつえに競り負けて

電子レンジでパスタの麺を茹でている

そんな僕の鼓膜を揺らすスウィートポップ

まるで空々しい限り

でも悪くないんじゃない?

かさぶたを無理に剥がすみたいなこと

そうそういつまでもしちゃいられないから

ラヴリーなエレクトロで

憂き世がどんなに愛すべきものであるかを

これから先の道中に駄菓子屋さんが何軒あるかを

希望なしで日々をやりくりできるお粗末な方法を

メルティハートに知らしめてよ

そうじゃなきゃスウィートポップ

まったくのくたびれ損


色とりどりのスウィートたる光芒は

はたしてポップソングにおける

“Thank you”の発音はいずれが正しいのか

明確な答えを示してはくれないけれど

(サンキュー? センキュー? テンキュー?)

はからずも曖昧にいなされてみて

まるで空々しい限りでも

悪くないとしか言えないね

匂いやかなスウィートポップ

跳ねる音符が目指したかったところは

到底そんなところではないだろうのに


『連れて行って』のフレーズに乗せて

これから先の道中に駄菓子屋さんが何軒あるかを

いつになったらプールが適度な冷たさになるのかを

あの子の嘆きの深度がせめて4分の3になる道を


『灰色に塗っちまえ!』のリズムに合わせて

キリギリスが蟻に目にもの見せるやり方を

張りぼての夢を後生大事に抱えていられるすべを

希望なしで日々をやりくりできるお粗末な方法を


知らしめてよ

ねえ、愛しのスウィートポップ


『愛さずにはいられない!』って

大音声でよろしく聞かせて


そいつで少しばかり目が覚めたなら

気持ち程度の恩返しは考えてる

あの子の悲愴が

せめて9分の8くらいになるような


人生を散漫にやり過ごすことに飽いても

どうせろくろく経たないうちに腹は減る

食えばよっぽど眠くなると重々承知でいる

スウィートポップを聞きながら

餓えに競り負ける毎日に生きて

張りぼての夢の継ぎ目をいつも探している




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