Let me tell a lie



夜ばかりが達者に喋る

雄弁な夜空を見ながら

ひとつ嘘を吐きたくもなる

ふたつみっつと重ねたくもなる

煙草の煙を吐き出すことだけが正義

ここからじゃろくに星は見えない

テールランプが視界を汚し

しょうもねぇ人生だと呟きたくもなる

オーダーメイドの罰則が

いくらか孤独を苦しくさせる

やっちまったことのつけが

夜の向こうに待っていることは必定ひつじょう

だらりと煙を吐けるのもいつまでか

たいしたことじゃねぇと

ひとつ嘘を吐きたくもなる


アルコールランプの光に透かして

脆弱な生を考える時

どうにも出口が見つからなくて

ノイズに合わせて

嘘を少し混ぜ込みたくなる

いつかそのうち炎は消える

酷薄なまでの順序で

積み上げた嘘もいつかは崩れる

まだまだ遊び足りないよ


嘘を吐かせて

もっともっと

電波時計のマジックで

正確な嘘で

きみを翻弄して

ちょっとだけ触れさせて

くだらない速度で転がる嘘を

少しばかり騙くらかして

ふたりのハネムーンにしてしまえば

きっと

息もできないくらい


きみに贈る言葉を

嘘で彩って

とっておきのプロポーズにして

雲隠れ

まだ捕まってやらないって

せめてもの強がり

バラードにもなりゃしないね

夜が跳ねるよ

思慕を置き去りにして

諦観を投げやりにして

キスを思い出にして

明日に連れ去られる

きみと僕

ふたりでいれば何も怖くないと

嘘をひとつ吐いて

震えを押し殺す

ひとつひとつ消える

正しい順序で

呼気をも置き去りにして


思い出を積み上げて

何もかも美しかったよと

見え透いた嘘を吐く

記憶を掘り起こして

痛みばかり覚えていたと

独り善がりな嘘を吐く

それは呼吸

きみへ捧げる詩の

ひとつの形


嘘を吐かせて

もっともっと

僕はきみに届けたい

懊悩おうのうにまみれた日々の湿度を

巡り回る観覧車のため息を

祈りの先に見つけた哀切を

僕ときみが生きていくために必要な全てを

嘘で

伝えてしまいたいよ

きっとそれは僕の人生の中で一番の罪


空が紫色になったよ

世界は美しいよ

さなぎが鳥になったよ

答えが見つかったんだ

透明人間になれるようになったんだ

いつかのあの海がすぐ近くにあるんだ

何もかもわかっていながら

穏やかに微笑むのがきみの罪

その笑みに射貫かれたなら

息もできないくらい

嘘ではなくて


ばれないように真実を織り交ぜながら

肝心なところはぼかして

及び腰で嘘を吐き続けるよ

積み上げた嘘が崩れる時が来たら

きみはどれだけの言葉が偽りだったかを知る

結局きみは笑うだろう

涼風に蔑まれる前に

僕は脅えながらきみを抱きしめるよ

テールランプが未来を探し

しょうもねぇ人生だけど

淡いだけの強さで抱きしめたくもなる

オーダーメイドの罪科つみとが

いくらか孤独を苦しくさせる

嘘を吐かせて

もっともっと

ふたりでいれば何も怖くないと

嘘をまたひとつ吐いて

震えを押し殺す

ふたつみっつと消える

正しい順序で

呼気をも置き去りにして

嘘ばかりが永遠だと

全く荒唐無稽な嘘を吐くよ

きみの希望になって

最後まで嘘を吐き通せたなら

それは間違いなく

きみへ捧げる詩の

ひとつの形

嘘という名の

きみへの愛

ずっと一緒にいてよ

嘘が瓦解するまで

ずっと一緒にいてよ

料理は得意だよ



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