第十話 ある侯爵
「敵は、なかなか
その向かいの
「幸村は今やウェダリアの
「私はそもそも貧乏大名。皆と同じ
と言い断った。
それゆえ、今こうして大食堂で食事をしている。
「で、どんな
幸村はあらかた
「ガイロクテイン
佐助は聞く。
「いや、知らん」
幸村は首を振った。
「ジュギフって
「ほぉ」
「ジュギフの
「ふむ」
幸村は、うなずくと茶を少し飲む。
「そこに十年前、ガイロクテイン侯爵って人が急に現れたらしいんです。シナジノア中を
佐助も話して喉が乾いたのか、茶を
「それがジュギフって国らしいんですよ」
「なるほどね。
幸村は言った。
佐助は続ける。
「このガイロクテイン侯爵って男が、
「ふむ……勝てんよな」
幸村は言う。
「つまりは手強い
「その通りです。どうやら、敵は強い」
佐助が言う。
「ただ、こちらに向かってきているのは、ガイロクテイン侯爵率いる
「ほぉ」
「本隊は、西のナギアという国を攻めています。我らがいるウェダリアには、
「うむ、ご
幸村は言う。
「数日前まで、大阪でもやってましたからね。場所が知らないところに急になっただけでさ」
佐助は笑った。
幸村は、食べ終わった
「さて、
言うなり、
そして
幸村は訓練内容を絞った。あまりやることが
幸村が
「ミラナどの、おはようございます。どうなされた?」
「幸村……北の国アズニアからの
「そうですか。まだ
「だと
ミラナは
(これは、援軍は来ないと考えておかねばならんな……)
幸村は口では
「では、ミラナどの。あまり気に病みますな。わたしは兵たちのところに行ってきます」
「うん、お願いね」
ミラナは、なんとか微笑みをうかべて言った。
幸村は南の平原に向かった。
「おはよう」
言うが、返事が無く
(訓練の疲れだろうか?)
幸村が
「幸村さま、ウェダリア
「ほぉ、
「南から来る
「ふむ……」
幸村は、うつむき考える。
(すでに
ゆっくりと顔をあげると言う。
「この目で
「では魔物たちの軍勢とは我らだけで戦うということですか……」
「そうだ。そうなるな」
兵たちは黙りこんだ。
「大丈夫でしょうか?」
ポラードが
(そんなこと、わかるわけなかろう。できるだけの
幸村は思うが、言う。
「大丈夫だ。わたしの
だが、兵たちは動こうとしない。
「槍を」
幸村は、ふたたび言った。
「……みんな、やるぞ」
ポラードが言うと、兵たちはノロノロと立ち上がり、槍の素振りをはじめた。
(まずいな……)
幸村はその
一日を締めくくる行軍訓練を終えた、ポラードの部隊は
南の平原の
ポラードの部隊に
うつむき足の間から
「父さん、あの幸村ってよそ者を
元々は
「やめないか。姫さまが、幸村さまの下知に従えとのことだ。幸村さまの力を見込こまれて
ポラードは言った。
「疲れているのはわかるが、減らず口はやめんか」
ダニエルも疲れた表情に
「ですが、あのよそ者の幸村とかいう男が、ジュギフ魔物たちに勝てるですか?王も亡くなった。騎士団もいない。
他の兵たちも黙って聞いている。ダニエル、つづける。
「あの方には、どういう
丁寧だが挑戦的な口ぶりで言った。
ポラードは、ため息をつく。
(まったく……皆の目があるというのに……)
ポラードは、ダニエルの疲れからくる
「とにかく止めよ。ワシもあの方を深く知っているわけではないが、今はそのようなことを言っている
「ほら、言った。やっぱり父さんも知らないんでしょ?」
「まぁ、そうだな……」
「やっぱりね。どうなんですかね、あの人。
ダニエルの態度は褒められたものでは無い。だが男たちの、幸村を信じて良いのかわからない気持ちを代弁している面もある。それがわかるだけにポラードも、強く叱り飛ばすのをためらった。
だが、ここで叱らなければ、しめしが付かない。ポラードはダニエルを強い
そのポラードの目に、息子の
「なんですか、父さん。何か言いたいことでも?」
ダニエルは
だが、おかしい。
視線が合わない。
父は、なにやら
まわりにいる男たちも、ダニエルの後方を
ダニエルは、ただならぬ
「
ポラードは
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