第49話 取り引き 3

ルナから、前に行った商会に行くということを言われた。なんでも話したいことがあるんだとか。


リリーもついて行きたいというが、今回、リリーは関係ないので遠慮してもらった。


納得してないみたいだったが仕方ない。


というわけで、学校が休みの今日、前に行った商会へとやって来ていた。


商会に入ると、すごい形相のオーナーがそこにいた。


「ようやく来ましたか」


すごく怖い。もしかして僕のリンスが何かやらかしてしまったのだろうか?それなら、今すぐにでも謝らないと。


しかし、それは杞憂に終わった。


「シン君、あのリンスはまだあるだろうか?!」


といいながら、肩を掴まれ、大きく揺さぶられた。そのせいで少し気分が悪くなった。


「や、やめてください!」


僕の言葉で正気に戻ったのか、揺さぶるのはやめてくれたが、肩は掴まれたままだった。


「それで、どうなんだね?」


「在庫なら、すぐに作れますよ」


「なら、今すぐ、1000個ほど頼む!」


「まあ、それくらいでし——」


「待ってください」


今まで黙っていたルナが急に話に割り込んできた。


「ルナ、どうしたんだ?」


「どうしたって、そんな簡単に決めていいの?」


「?」


「だから、価格とか決めずにやっちゃっていいのかってこと」


「ああ、それなら、別にいいよ。僕みたいな素人よりも、絶対うまくやってくれるだろうからね。それにルナの関係者に、下手なことはしなしでしょ」


そんなこと全く考えていなかったが、なんとかなりそうである。


「そうなもしれないけど。確認はするべきだよ」


「わかったよ。それじゃあ、オーナーさん?どうする予定なのですか?」


「はい、それは、まず、500ルアで買い取らせていただいて、1000ルアで売ろうと考えています」


「高い」


「はい?」


「だから、高い」


「いえいえ、これでも売れますよ?」


「そういう問題じゃない。誰でも気軽に買える値段の方がいいですからね。それに消耗品だし」


「じゃあ、どのくらいがいいんですか?」


「んーと、1本10ルアで買い取って20ルアで売るくらい?」


「それじゃあ、絶対に損しますよ?!」


「なんで?」


「これ作るのにどれだけお金がかかっているんですか?!少なくとも私の見立てでは100ルアくらいはしてると思うのですが?」


「ああ、大丈夫。だってそれ、タダで作れるから」


まあ、僕のMPのみで作っていますからね。


「へ?タダなんですか?」


「はい、タダですよ?だから、どんなに安くしても問題はないんですよ」


「ああ、それでシン君は価格は気にしていなかったのか」


「って、ルナはわからなかったのかよ」


「うっ、そんなことないもん!わかってたもん!」


「はいはい」


「なんか適当だよ?!」


とそんなルナは無視して、オーナーと話を進めていく。


最終的には、僕の要望が通りになった。だけど、ルナもオーナーも納得してないみたいだった。


しかし、それから数日後。


リンスはかなりの売れ行きですぐに売り切れてしまった。


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