2-5 墓場の丘

 砂漠の砂は硬質のアルカリの大地に変わり、辺り一面に点々と緑色の草やサボテンが見え始めてきた。

 リタはいつのまにか寝てしまったらしく、荷台に積んでいた二つの毛布のうちの一方を後頭部に置き、もう一方を抱き絞めるようにして眠っている。

 毛布に頬を押し付け、年相応の女性らしく可愛らしい寝顔だ。

 その毛布オレのなんだけどな……。

 ウィルは少し恥ずかしそうに額を掻いて頬を緩める。

 彼女を起こすべきではないだろう。いつ戦闘になるか分からない。だったら、常に完全な状態でいてもらった方が良いだろうと、ウィル判断し、睡魔に押しつぶされそうになる瞼を指先で擦って前を向いて手綱を握りしめた。

 そんな指圧で霞んだ黄土色の眩しい視界の中に、何やら小さな点が見える。

 次第に戻りゆく視界の中、それが町だと気付いたのはその町の入り口に旗が高々と掲げられていたからだ。

 その旗は赤地に藍色のクロス。紛れもない、南軍ディキシーの旗である。

 眠気は吹き飛び、筆舌に尽くしがたい威圧感に圧倒され、ごくりと生唾で喉を鳴らす。

 その町──トゥーム・ヒルは左右に小さな丘を携え、両側に近衛兵を抱えた、さながら玉座に居座る王の様に堂々と在った。

 丘があるのは助かった。平地に在れば様子が見れないからな。

 ウィルは馬車の進度を右の丘に向け、ゆっくりと馬車を進ませるのであった。

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