第四章 群れる羊 はぐれる狼

4-1 

 定期考査が終ると、学校は夏休みに入る。

 その間に生徒たちは学園祭の準備を進めるのが学校の慣わしだ。

 企画の提案は定期考査前の時期に活発に行われる。

 例年の学園祭といえば、模擬店や教室内での催事や展示。それから講堂のス

テージを利用したプログラムが組まれる。軽音からブラスバンドまで、クラブご

との演奏披露や有志劇などだ。生徒会は予算組みや場所取りの調整といった事務処理にまわり、裏方に徹するのが常だった。学園祭の全体をプロデュースするような派手な立ちまわりはしないのが従来の方針だ。

 しかし、今回はそうも言ってはいられない。

「やると言ったはいいものの、一考の余地はありまくるわ…生徒会が学園祭に介入することを認知してもらうのも課題ね…」

 蘭とあしほは向き合って座っている。

 場所は生徒会室ではない。

 放課後の喫茶エターナルだ。

 話し合いに専念するためだ。実は放課後に二人きりで生徒会室にいても煮詰まる一方。終始萌えトークに花を咲かせておしまいということが続いていたのだ。これではいけないという危惧を抱いて場所を替えてみたというわけだ。

「利益重視でのイベントなんて学校の文化祭の本質と真逆だから抵抗がある…」

 生徒会長は苦悩する。

 蘭はみかの淹れたアイスティーをちるちるとストローで吸っている。

「豊田先生は何て言ってるの?」

 発端となったのはあしほの姉のしのぶの発言だ。

 彼女は投資もするしリスクも負うと言い切った。

 ただ、既に学院に学費を投じ寄付金をつけて大切な子女を預けている保護者たちの財布を軽くさせることはしたくない。その抵抗感はしのぶも否定しなかった。道義に反するし、彼らから期待できる収入そのものに限度がある。

「姉さんも概ね同じ考え。学外からの入場者を増やそう、いつもより派手に広範囲な広告を打とうって言っているわ」

「広告?」

 あしほに珈琲を運んできたなこが首を傾げた。

 なこもまた同じ学院の生徒だ。

 姉と会長のために協力を惜しまないと宣言した。

 調理台に向かっているみかも学外の者ではあるが、何か出来ることがあればと申し出た。

 カウンターの向こうで耳を澄ませており、なこに続いて疑問を投じた。

「どんな広告ですか?」

「それをこれから決めるの。姉さんが提案してくれた案は使えないものばかりだったから。インターネットでCMを流そうとかこの街の商店街をジャックして看板を学園祭の告知で占拠しようだとかこの学校を舞台に映画撮影をさせようだ

とか、いくら出資してくれるとはいえ誇大広告なのよあの悪魔」

 あからさまな罵倒で話をしめくくる。

「適正な範囲で広範囲に影響のある広告かあ…難しいお」

 蘭は腕組みした。

「確かに宣伝は大切だけど…学校規模は幼稚舎から短大まで及んでいるのだからその界隈からの父兄や生徒も招ければもう少し収益も期待はできるのよ…一般客が増えると面倒ごとも増えるかもしれないから」

 ふう、とあしほは吐息した。

「毎年学園規模での宣伝はしているし、高等部の学園祭を行う時期にはそれぞれの学部も何らかの催しや試験があって集客率は毎年同じになるの…そのあたりは学院に集中するように交渉してみる。あとはどうせなら隣接しているお寺に人を集めようと思うの。本山ではないけれど憩いの場にもなるから、学園祭のときは毎年有志主催のお茶屋さんを出すのだけれど…」

「こういうのはどうですか? 寺院の敷地にブースを用意して均等な面積で各団体からの宣伝スペースを設ける。それを見て来訪者が行きたい催しを選べるようにする…というのは?」

 みかは食器洗いをしながら提案する。

「それはいいかもしれないわね」

 取り残されまいと、なこもはいはいと挙手した。

「とにかく人が訪れればいいんですよねっ? 学園内の要所要所にスタンプを置いて、そのスタンプの個数に応じて景品を渡すのはどうですかっ。その台紙と景品の受け渡し所をお寺にすれば…」

「スタンプラリー? そっか、名案ね。なこちゃん」

 それなら参拝者も増やせる。その上、ラリーを設置する箇所を模擬店などの収益の多く見込まれる地点に絞れば相乗効果が期待できる。

 文化祭のメインイベントとして宣伝材料にもなる。

「ふむう…けど、なあんか地味お…」

 蘭は思案している。

「そうね…もう一歩進めたいところではあるわ…やっぱり宣伝かしら…」

 あしほも再び考え込む。

「問題はコストではないでしょうか」

 みかが憂いを帯びた表情で、蘭の隣に腰掛けた。

「結局のところ宣伝費用にお金がかかっては、収益からその分差し引かれてしまいますわ。利率が下がるばかりです。お金をかけないでも宣伝できる逸材が、学院には大勢いらっしゃいます」

 察しのいい会長は、みかの言わんとすることを見抜いた。

「人脈…口コミってこと?」

「ええ。生徒たちの手を借りるのがいいと思います」

「お、おおー…」

 蘭が拍手する。

「喫茶店の会計を任されているだけあるでしょう?」

 みかは得意げだ。なこまでが何故か誇らしげにその腕に抱きついた。

「さすが、みかお姉ちゃん。社会的精神的に自立した乙女は言うことが違うっ」

「でも、学園祭を広めてもらうにも、どうしたら…」

「昨今、生徒たちは色々のメディアを利用して交流するのでは? 例えば動画作

成やブログ、イラストのSNSやインターネットラジオ…」

「んっ」

 蘭がぽんと手を打った。

「思いついた! …最低限の出資で済む方法! コンテストお!」

 一同ははっと顔をあげる。

「宣伝コンテストを開くのは? 絵が描ける人からは文化祭のイメージキャラクターを募集するとか。賞品はなるべく生徒たちが欲しがりそうなものにして」

「宣伝合戦ってこと?」

 あしほは瞬時に理解した。

「そういうこと! 何でもいいから文化祭の宣伝において効果をあげる技能を発揮した生徒に賞品を出すお。賞品以外にも何か少し特別な栄誉を与えるのもいいかも。MVPには、文化祭をフリーパスで遊べる権利を…」

「……!」

 あしほの瞳が輝いた。

「うひっ。蘭、偉い? すごい?」

 からかい気味に蘭が会長の顔を覗き込む。

 誰も予想しなかった反応が返ってきた。

「ありがとう、蘭!」

「えっ…」

 蘭を、ぎゅっと抱きしめたのだ。

 蘭は固くなった。

「あっ…」

 あしほは慌てて蘭の両肩を掴んで身を引いた。

「ご、ごめんなさい。はしたないことを。つ、つい…」

「何で? いいお、嬉しいお」

 蘭はあしほから視線をそらさずに告げた。

「言ったよ? 蘭は会長とはしたないことしたいっ。そういう友達になるんだから! 会長が名前呼んでくれて、嬉しい」

「う。で、でも…」

 照れくささにあしほは目をそらした。

 考えるよりも早く体が動いてしまった。こんな無作法は初めてだ。

「それでね、みかお姉ちゃん。めるるんの変身アイテムはやっぱり二期からのティアラが神だと思うの」

「あれはディテールが素晴らしかったわね。でも再現するなら一期のロッドの方が断然正しいわ」

 仲が深まったところでまたしてもオタクトークで邪魔が入る。

「どうしておまえらはそう台無しにするおー? 台無シストどもめっ」

 蘭はぼやいたが、あしほはただ笑った。

「ありがとう…設備は私が生徒会に交渉します。資金は姉さんが負担してくれるって言ったけど…私たちのものにしたいもの」

 あしほの言葉に、三姉妹は頷いた。


 ☆


 青い空。青い海。

 そして輝く太陽のもと、その屋外広場にはさまざまな服装の人たちが集っていた。

 定期考査をつつがなく終え、あしほたちは、夏休みを迎えていた。あしほの特訓のおかげで、普段は成績のよろしくない蘭もどうにか補講を免れた。

 八月の半ば。さる大規模展示場に彼女たちは立っていた。

 その会場には唯一無二のキャラ愛に生きる者たちが、炎天下を更にヒートアップさせる情熱を胸に結集していた。この展示会の名はコミックサミットと云う。略してコミサとも呼ばれる同人誌即売会だ。

 三十年以上の長きに渡り愛されてきた有志の集いで、開催は年に二回。お盆と正月に行われる。会場に於いて企業利用がないピンポイントな時期が選択されるため、極度に過酷な真夏と真冬がその開催日となる。

 規模は年々大きくなり、会場も何度か変わってきたが、現在では東京湾に接する国際展示場に拠点が置かれている。

 海をはるかに眺める位置の会場だが、中身はみっしりと隙間なく隅々まで文化系の催し。

コミサを開催期間中に訪れる人々の数は一日あたりでものべ二十万人を越える。通常は三日間開催されるため、合計すればおおよそ六十万人。現在は企業形態をとっているが、開催者は有志組織であり、切り盛りするスタッフも全てが無報酬。規模が大きくなるにつれ、その草分け的な精神が希薄になり、企業に求めるようなサービスを要求するお客様意識の強い参加者も増えている。だが基本的に参加者は全員が有志とみなされる。

 会場内にスペースを確保して同人誌を頒布する側は、サークル参加と呼ばれる。一方で、創作物を発行せず開場に併せて入場する参加者は、一般参加と呼ばれる。彼らの間に金品の授受はあるものの、サークル参加者による創作物の提供は販売でなく頒布とあらわされる。

 あくまでも、コミサは営利目的でなく表現を目的とする場だ。

 その表現手段の要…同人誌がこれから行く場所にある。

 蘭があしほをこの大規模な集いに誘ったとき、あしほは二つ返事で頷いた。

 一度は参加したいと思っていたのだから当然だ。己の趣味をクローゼットに仕舞いこんでいるがために、同伴できる友もおらず、未成年であるため一人きりで参加するのも躊躇され切ない思いで見送ってきた催しだ。

 もちろん遊ぶためだけではない。

 大義名分がある。

 文化祭の運営に参考となりそうなヒントを探すためだ。

 しかし、自然とそわそわしてしまう。

「うん? 会長、どした? おしっこ?」

「ち、違うったら。だ、だって…もうすぐ、その…すすす…『スペース』につくんでしょう?」

「ああ」

 蘭は頷いた。

「確かにもうすぐ」

「楽しみですねえ。準備するのもっ」

 なこがあしほの腕にじゃれつく。

「あーんまり近づくんじゃないおー」

 蘭がその間に割って入ってきた。

「では私はこちら側から」

「あっ、こらっ」

 みかが反対側から身を寄せてくる。

 あしほはわらわらと自分の周囲に集い身を寄せる三姉妹に問う。

「で、でも、私…よかったの? 本当に…」

 自分たちのスペースに近づくにつれて、あしほの顔には緊張と興奮がないまぜになった顔つきになっていく。

「何がっ?」

「だだだって…本当に…夢のようで…あなたが…あなたが…あのお方と知り合いだったなんて…どうして言ってくれなかったの?」

 あしほはときめきが抑えきれないどころの話ではない。

 動悸がおさまらない。

「ふひっ」

 蘭は笑った。笑うだけで返事をしない。

 ずっとそうなので、あしほはもう追及しようとするのをよした。

 というよりも、深く考える余地がない。頭の中はそのお方のことでいっぱいだ。理由なぞ問いかけてどうしようというのか。

 朝まだ早い時刻だ。目指すホールの入り口を抜けると、広大な空間が広がっていた。延々と机が並んでいる。この中から自分たちの居場所を探す。

 森閑たるホールにこれから自分と趣味を同じくする人たちが集うと思うだけであしほには感無量だ。目指す机にたどりついた。蘭たちが机の上にどっさりと詰まれた印刷所のチラシを片付け始めたので、慌ててそれに倣う。それから印刷所から届いたばかりの新刊の詰まった箱を引き取りに行く。

 何もかもが新鮮だった。

 そう。

 一般参加ではなくサークル参加をすること。これが最も重要な目的だ。

 サークル参加は、同人誌の頒布を目的としている。

 コミサへのサークル参加は数ヶ月前からの申し込みと入金が必須だ。例え申し込んでも必ず受かるとは限らない。サークル参加に対する倍率は高いので、スペースの確保は抽選となる。

 つまりサークル参加するにあたり、事前に申し込みをしており、夏のコミサに『受かって』いなければこのスペースは確保できない。

 新刊の箱に近づくにつれて、あしほの足は早歩きになる。会場内を走ることは禁止されている。とはいえ、後ろから付いてくる蘭たちも心配になる競歩のような速度だ。誰よりも早くあしほはその場に到着するとダンボールの上の伝票を凝視した。

「あ、あ、あった…こ、これが…」

 あしほはもはや泣きそうだ。

「そんなに焦らなくても新刊は逃げないよお」

「でも、だ、だだだって…」

 蘭たちがようやく追いついた。

「け、けけけ剣持あずまさんの新刊っ…」

 いとおしげにあしほは目を細めた。

 そう。

 そのスペースは、あしほたちがサークル参加を申し込んだわけではない。

 あしほの愛好する作家『剣持あずま』の確保したものだ。

 蘭が『剣持あずま』の知り合いだ、彼女の確保したスペースで売り子をしようという提案してきたとき、あしほは信じなかった。

 しかし蘭が証拠であるサークルチケットを提示したとき。

 もはやあしほの頭からは理性が失われ軽く涎を垂らさんばかりに、目を輝かせた。

「言っておいたけど、本人は今日は来れないから…そこは残念だったねっ」

「な。ななな何を言うの? そんなお会いするなんて…もったいないこと…売り子のお礼に新刊を頂けるだけなんて、もう…」

 当人は仕事のためこのコミサへの参加はかなわなかった。

 だからこそ売り子を探している。

 その需要とあしほたちの目的は合致していた。

 愛する作家の代理で売り子をできるなどという光栄に浴しただけでも、あしほは恍惚を覚える。

「ま、慎重にスペースに運ぼうか」

「そ、そそそうね…」

「そんな震える手で持ったらだめお…」

 平生は『剣持あずま』という名前で活動している作家だが、今回はペンネームもジャンルも変えてのお忍び的なサークル参加だという。

 大手と呼ばれる人気作家だ。大手サークルは行列ができるため、壁際に配置されることが多い。そうなると売り子も大量に用意されなければ頒布の行列は捌けない。しかし、今回の参加はという商業利用のペンネームは利用せず、あくまで趣味としての参加だ。

 大仰な頒布は行われないが客足はそれなりにあるだろう。

 蘭はそう説明した。

 蘭を含めた三姉妹は即売会への参加も初めてではないらしい。蘭は、机上に手早く布を広げた。スペースの机は裸だと味気ないので、テーブルクロス代わりの布を持参する参加者がほとんどだ。この布が案外と重宝される。留守中に本の上に覆いとしてかけておけば、訪れた人が見ても留守にしていることが一目瞭然だし防犯にもなる。

 おつり用の小銭入れを出して、頒布の準備をしていたときだ。

「君っ! かわいいね! 撮影させてよ!」

 机の前を通りがかった男性がいきなり蘭の腕を取って話しかけた。

 まるで通り魔のようにそうしたのだ。

 一瞬、あしほには何が起きたかわからなかった。

 既に彼はカメラをかまえて撮影の体勢を取っている。

 挨拶も何もなしだ。

 あしほの胸は凍り付いた。

 言葉をなくして立ち尽くす。

 反射的になこが蘭の前に立ち塞がった。

「ホール内での撮影は禁止ですよっ。禁断のレインストームです!」

「うるせえな! おまえには声かけてねえよ! こっちの子だよ!」

「すみません。ルールは守ってください」

 みかも加勢するが、男は蘭の前から立ち去ろうとしない。それどころか平然とシャッターを切ろうとする。

 考える暇はなかった。

 動物には動物的な反応で対処するしかない。

 あしほは勢いのある仕草で腕を伸ばし、カメラを彼の胸に掌で突き押した。

「うぐっ」

 押し付けたのは遠心力で密着させてカメラが壊れないようにするためだ。男はあしほが身を屈め、自分のそばに擦り寄ってくるのを見た。次の瞬間、軽々とあしほに背負われていた。空中で一転する。風景がまわる。

「か、会長!」

 強張っていた蘭が声をあげる。

 柔術だ。

 胸や尻が膨らみはじめた中学生の頃、防犯のためにしのぶから教わったものだ。今まさに男は背中から地に叩きつけられそうになる。しかし、その背を固いアスファルトから救い、その体躯を両腕で受け止める者がいた。

「危ないな」

 強張っていた蘭の形相がたちまち険しくなる。

「! お、おまえっ…」

 その人物は蘭に目もくれずに、あしほを一瞥して微笑む。

「油断ならないレディだね」

 精悍な青年の姿がそこにあった。

「な、何だ。お、お、降ろせ!」

 いきなり少女に背負い投げをかけられ、次の瞬間、屈強な青年に抱きとめられて男はパニック状態に陥った。お姫様抱っこの格好で抱えあげられてしまい、周囲から参加者たちのひそひそ声や笑い声が聞こえてくる。しかも、青年が熱のこもった眼差しで見つめてきた日には震えあがるしかない。

「いけない坊やだ。僕を撮影してみるか? 歓迎するよ」

 青年は、いかにも攻め攻めしい重低音ボイスでそう諭した。

 少女たちが主たるスペースを占める場所で息を呑んで見守られながら彫りの深い顔立ちの男に頬を撫でられ耳元に吐息混じりに囁かれる。この状況に脳の認識が追いつかず、男は一瞬ぼうっとなった。あたりには薔薇の花が咲いたような空気が漂う。

 しかし、それも刹那の出来事だ。

「やめろおおうううう! 俺はその気はねえええ!」

 男は水からあげられた鯉のようにもがいた。青年は彼を降ろしてやる。

「き、気持ち悪いんだよっ! どうせ女子の人気目当てだろうが! ホモ気取りのナンパ野郎!」

「ああ。悪いけど僕はガチでゲイだよ。最近ファッションで僕らと同じ気質を気取る、そういう人たちもいるみたいだけど」

 青年は苦笑いする。

「何自慢げに笑ってんだ! ガチかよ、余計に気色わりい!」

「僕にはこれがただの自然現象で真理の摂理」

 青年は威圧的に言い放った。

「だが、そっちこそ子種は残せないんじゃないか? 下種野郎」

「ぐっ…」

「さっさと行け!」

 端正な顔立ちに野生的な迫力があらわれる。その目ですごまれ、カメラ男はそそくさとその場を離れた。人ごみに紛れて逃げて行く。誰が見てもみっともないことをしたと自覚したのだ。

「災難だったね。サークル『永久』さんはこちらかな?」

「は、はい、確かに、そうですけれど…」

 突然あらわれた青年に、あしほは頷いた。

「大丈夫? いけないよ。いくら何でも衆人環視の前であんな技をかけたら…スタッフから後で確認が入るだろうね」

 これだけの人が見ているのだから危険を察知した参加者が既にスタッフに伝えているかもしれない。だが、その到着を待っていたら、蘭に対する本意でない撮影を許していたはずだ。

 それは悔しい。

 そう感じはするものの、あしほは俯いた。それは全て感情のことだ。

 この催しの全体のことを考えれば彼が正しい。いきなり柔術をかけるよりは、スタッフを呼んで助けてもらう。そうするべきだっただろう、と。

「あの、ありがとうございました。助かりました」

 きちんと礼を述べて、あしほが頭を下げる。いいんだよと青年は微笑する。

 彼の傍らには綺麗な顔立ちの少年がいる。

 あしほは改めて二人を見つめてしまう。何のコスプレかはわからないものの、王子と騎士の格好で、青年はいかにも大切そうに少年を背後に守っている。つまり要するに主従を想起させる空気感がとてもボーイズラブめいている。

 あしほたちのいるジャンルはボーイズラブがメインではないが、コミサにいる以上その手の組み合わせを嫌いな者は少ない。あたりのスペースに着席してる女子たちや通りすがりの者すら目で見送るほど、彼らにはいい雰囲気があった。あしほは束の間凝視してしまう。

「ん? 僕らに興味があるかな」

 彼が傍らの少年の肩を掴みぐっと引き寄せる。すると、周囲の少女たちからきゃあきゃあと黄色い声があがる。今度は自分が撮影をお願いしたくなってしまいながらもあしほは振り向いた。

「い、いえ。失礼しました。ほら。みんなも御礼…」

 御礼を言わないと。

 そう言いかけたが、あしほの声は途切れた。

 三姉妹は応じない。

 それどころか、野犬か、というくらいの形相で青年を睨んでいた。

「そいつに近づいたらだめおっ」

「あしほ様、こちらへ」

 みかが手早くあしほを匿う。

「何しに来たっ」

「つれないことを。君らのサークルの本を求めてきたんじゃないか」

「嘘をつくなっ!」

「随分だ。ここは感謝してほしいところだな。危ないところだったじゃないか、お姫様」

「うるさいっ! 関係ない!」

 あしほは驚いた。

 知り合いなのか。

 いや、考えてみればただ通りすがりの青年が助けてくれたわけではないだろう。もともとこのサークルの関係者で、だからこそ蘭とも顔見知りなのではないか。そう察したが、いい関係が築けていないことも伝わってきてしまう。

 あしほには柔らかな面差しを向けていた男が、あからさまに冷淡な態度をとることからもそれは伺えた。

「おや」

 青年は不意に蘭の手に目を留める。強引にその掌を掴んで引き寄せた。

「へえ。形だけでもさまになってきたじゃないか」

「離せっ!」

 青年の視線から逃れるように蘭は掌を引っ込める。

 青年から先刻までの親切心は一向感じられない。圧迫感しかない。

 あしほは固唾を呑んだ。

 こんなに剣呑な表情の蘭は、初めてだ。

 すると、青年はそちらに視線を転じた。

「あなたは彼女のご友人で?」

 友人か? そう問われるのは初めてではない。

 あしほが口を開いたとき。

 蘭が固くあしほの掌を握りしめてきた。彼らからは見えない位置で。

 ――震えている。

「蘭…」

 途端にかあっと血がのぼるのがわかった。

 事情はわからない。

 けれども蘭が困っている。いや。怖がっている…

 実感した途端に真っ白になる。こんなにまで怯えている彼女は見たことがない。胸にいらだちを覚えた。冷酷と言えるようなほの暗い怒りだ。

 蘭の掌を強く握り返す。蘭が驚いて振り向く。

 その隙にあしほは青年の前に立った。

「どういうご関係かわかりませんがお引取り下さい」

 この言い切りの口調に、蘭も青年も瞠目する。

「か、会長…」

 決然たる眼差しで、あしほは相手を見あげる。

「先刻はありがとうございました。御礼を申しあげます。けれども、彼女は私の友人です。意地悪するならいくら恩人でも許せません」

「へえ。許さないではなく許せない、か」

 あしほの強い眼差しにも動じず、青年は嘲りの笑みを浮かべた。

 それにどういう違いがあるのか。

 あしほは、いらだった。

「上出来だ。なあ、お姫様…」

 またしても彼は蘭をお姫様と呼ぶ。

 そこに含まれる感情が何なのかわからず、不気味だ。

 その不気味さが、いっそ不愉快だ。

 こんな具合に初対面の相手に覚えてはいけない感情が生じる。

 もう怒鳴りそうになった。

 しかし、青年は唐突に不遜な態度を改めた。綺麗な仕草で一礼したのだ。

「どうやらお邪魔したようです。どうぞ、楽しい一日を…」

 騎士の格好の青年はさりげなく王子の肩に腕を添えると、踵を返した。

 王子の格好の少年はこちらを気にするように振り向いた。

 何も言わずに彼に導かれるままに歩いていく。

「待ちなさい! ちゃんと、話を…」

 思わず追おうとするあしほの前に、蘭が正面から立ち塞がる。

「だめっ」

 縋るような顔つきだ。

「いいから追わないで…あの男は、絶対」

 そう言いながら、不安げに抱きついてくる。

「ら、蘭?」

 もちろんあしほの行く手を遮るためだとわかっている。

 泣いているようにも見えてあしほは焦る。

「わ、わかった…」

 何だかひどく目まぐるしい状況を切り抜けた気がする。

 胸が動悸していた。

 自分が激しく怒りにかられていたと、自覚する。

 追うなと蘭は言う。

 その通りだ。自分は今冷静ではない。

「私、あんな酷い参加者がいるなんて知らなかった…それに、あなたにとっていやな知り合いがいるなんて…彼はあなたに何か嫌がらせをしたの?」

「あいつらは、その…」

「……」

 蘭の瞳がわずかに潤んだ。

「う、うまく、い、言えないけど…巻き込んでごめん」

「ごめん、って…」

 蘭が混乱しているのは、わかった。

 会いたくない人に会って動揺している。

 それがあしほに敬意を示したものだから慌てている。あしほの前で険悪な空気を醸してしまったことを謝罪している。それはあしほにも伝わっていた。

 けれど、ごめん、って。

 何なのだ。

 そう思ってしまった。

 話したくないということだろうか。

 いや。

 自分が知りたがる方がおかしい――

 そこにようやく思い至って、あしほは吐息した。

「ううん…私こそ、ごめん、あなたの…事情に、突っ込んだりして」

「! か、会長…」

 蘭が弾かれたように顔をあげた。

 悲しげに、反感を示すように。

 あしほは待った。

 彼女の言葉を。

 しかし、再び蘭は俯いた。

 ごめん、と彼女が言う前に遮った。

「御剣さん、あなたに感謝してる。書店で会えてよかったのかもしれない。色んな命令してくれてお願いを聞いてくれて、今日ここに来れて…嬉しい」

 あしほはずっと言いたかったことを告げた。

「だから何も聞かない。それより早く準備をしましょう」

 無意識のうちに。

 いつも姉にされるようなふるまいをしていた。

 蘭の頬を両手で挟んで、額をくっつけた。

「う、うん。ま、まままだこれからが本番だおっ」

 蘭は、たちまち熟れたトマトのようになった。

 なことみかは、それを見守りながらも、互いの顔を見交わした。

 弱りきった表情で。




「あれだけのローコストでこれだけの効果をはじき出すなら上出来だな」

 美術教員はビニールパックからたこ焼きをひとつ口に放り込む。

 寺院の敷地内の屋台をめぐる。

 文化祭は当日だ。それは予想以上の盛況を呈していた。

 しのぶはあたりを見渡す。満足した表情で。

 肩に掛けているのは白衣ではなく法被という浮かれきった装いだ。

 付き従う有子は豊田の関係者とはいえ学内の者ではない。

 しかし本日はしのぶの後ろに付き従っている。

 一般客が往来している校内で憚る必要はない。

「大成功だな、妹の為したことは。よくもまああのはったりの約束を叶えたもんだ」

 他人事のように言う。

「はったりだなんて…あしほ様は真剣でいらっしゃいましたのに」

「ふふ」

 あしほは生徒会の重要な立場の者たちと協議を重ねた。夏休み期間中も宣伝コンテストの動向に気を配った。夏休みが明けると運営委員会の教育を徹底して行った。生徒会では各クラスや部活動、有志グループ間の動向や準備の進捗状況が見えるように俯瞰的な広報活動に力を入れた。それぞれの催事もしくは展示の内容がばらばらでも協力しあえるところはそれができるよう各自の情報交換をしやすいようにと配慮した。

「この夏の間にあしほ様は成長なさいました」

 有子を、何とも言えない表情でしのぶは見遣る。

「おまえが何か妨害するかと思っていたが何もしないんだな」

「人聞きの悪いことを」

 有子は涼しい顔で微笑んだ。

 しのぶは軽く有子を睨んだ。肩をすくめる。

「よくもそんな言葉を空々しく言えるものだな」

「私は何も致しません」

「まあいい。こう考えよう――在るものは実は非在非在いといわれるものが実は在る。バイ、ルーバイヤート」

「どういう意味です?」

「おまえ、御剣蘭に会ったことはあるか?」

「は?」

 有子は立ち止まった。

「いいえ。あしほ様の動向を、そのお友達をつけまわすようなことはしておりませんわ」

「そうか、調査して目撃はしているというわけだな…」

「本当に人聞きが悪いですわね」

「画像はあるか?」

 有子が声を失う。

 応じずにしのぶを見つめる。

 秘書の怜悧な月のような瞳に感情は浮かばない。

 しのぶは責めるでも怒るでもなく、ひたすらな視線で有子に対峙する。

 この、信用のならない、自らの家の侍従を。

 自分の秘書を勤めながらも心はいつでもあの家に、いや、あの叔母に寄り添っている犬のような女を。

「…ございませんわ」

 有子は否定する。憎たらしいほどの静かな笑みだ。

「おまえが本当のことを言うはずはなかったな…」

「あればどうしたというんです」

「いや、いい。実画像として撮影はできたというわけだな」

「しのぶ様」

 問いに答えない雇い主を有子は追う。

「何故そこまであの少女を気にかけるのです。いくら記憶にないといっても…私にはやはり少し派手なだけの何の変哲もない生徒に見えます」

 しのぶの肘のあたりを掴もうとする。

 美術教員はその手を振り払った。

「私が嘘を見抜けることを承知でいながら、おまえは…」

「……」

「嫌いだよ。それなのに嘘をつくんだからな。そんな奴に私が教える義務はない」




 校内の廊下を突っ切るようにあしほは歩いていた。

 それぞれの教室の前を通る度、呼び込みの生徒たちに声をかけられる。

「会長! 綿あめ食べて行かれませんか?」

 法被姿の少女が、白い綿菓子を両手に掲げてきらきら笑いかけてくる。

 ありがとう、あとでねと笑顔で応じる。

「会長! お化け屋敷! いかがです? うーらーめーしーやー」

 白い浴衣に特殊メイクでお岩さんを装った生徒が愛らしく脅してくる。

 わ、怖い。あとでねとにこにこ返す。

「会長! 古本のバザール、覗いていきませんか?」

「会長! 科学部の実験カフェ、いかがです?」

 ありがとう、ありがとう。

 あとでね、あとでね。

 何度繰り返したか知れない御礼と断りはもはや魔法の呪文のよう。

 くるくると目がまわりそうだ。

 自分に声掛けしてくれる生徒たちにくすぐったいものを覚えていた。

 イベント中はさまざまな緊急事態が生じる。

 各種問い合わせや予想外の事態はお祭りにつきものだ。それらに追われているうちにあしほの自由時間は削られていく。

 一刻も早く蘭に会いたいと思っていた。

 一緒にお祭りを巡りたい、と。

 宣伝コンテストには効果があった。

 生徒会と生徒らの関係が緊密なものとして結ばれた。

 宣伝しただけの名目に恥じないようにと本番にも気合が入った。

 コンテストへの応募人数は予想を上まわった。

 宣伝方法も多種多様だった。

 何よりも参加者らの間にやる気が漲ったことが収穫だった。

 生徒会の意図を汲んでくれたものか賞品目当てかはわからない。

 とにかくも生徒会の名が銘打たれている企画に名乗りをあげてくれた生徒が大勢いたのだ。

 一方で懸念もある。一部の文化部の生徒たちが反応を示さなかったことだ。学外のコンクールで賞を得た実績のある文芸部。漫画原稿を量産する技能のある漫研。それら文化系のクラブからの立候補が期待されていたのだが。

 彼女たちの賛同を得るには退屈なテーマであったのかもしれない。

 もうひとつ。この『学校革命プロジェクト』により、生徒会は文化系を贔屓する印象を与えてしまった。スポーツを行う生徒たちもいるものを。

 申し合わせたようにクラブ活動をしている者たちからの応募がなかった。

 それがあしほには気掛かりだった。

 一人も名乗りがあがらないのは、不自然だ。

 蘭が命令したから。

 叔母と姉が命題を与えたから。

 お飾りの自分はただ従順にミッションをこなしてきた。

 それで良かったのだろうか?

 彼女たちの未登録は反感を示すものではないのか?

 そんなことを邪推してしまう自分がいやだ。

 利害が絡んでいる。

 思惑が自分にあるのは明らかだ。

 けれどそれに終始して本当に熱意ある立場にある人たちを置き去りにしていなかっただろうか。杞憂ならよいが。

 目に見える成功への喜びと反省の気持ちを蘭に聞いてほしかった。

 開催の宣言をしたのが朝の九時。講堂から生徒会室に移り、そこに詰めたきり、ようやく解放されたのは昼過ぎになってしまった。生徒会室を出たら出たで各団体からのお声掛けが無数に待っていた。

 まだ蘭の姿を見ていない。

 あしほは拗ねたような気持ちになる。

 確かに本日、あの無邪気な演出家の出番はないに等しい。

 自分は忙しいだろうから羽を伸ばしていいとは伝えてある。

 けれど時間ができたら連絡すると伝えていたはずだ。

 いや。少しでも冷やかしに顔を覗かせてくれてもよさそうなものなのに。

 そんなことを考えている自分に気付いた。

 近頃の蘭の態度がそうさせるのかもしれない。

 最初は蘭の方からあんな風に迫って脅して色々のことを命じてきたくせに。

 そんなことを考えて、あしほは赤面する。

 何を考えている?

 確かに現在築けた絆はありがたいが、きっかけはけして褒められた経緯ではなかった。第一がこんな風に他人に侵食された考えは自立心に悖る。

 それでも、考えずにいられないのは夏のコミサでの一件以来、どことなく蘭から元気が失われているように見えるためだ。

 あの金色のひまわりのような無邪気さは変わらない。

 けれどもあのイベントで、あの不敵な青年たちに遭遇してからというもの、蘭はどこか落ち着きがない。

 コミサのとき、初めて蘭の弱っている姿を見た。

 いや。

 おかしいのは自分かもしれないと感じる。

 あれ以来蘭に対して、どうしようもない保護欲にかられている。

 蘭には事情を話さないでいいと告げたものの、本心では知りたくて仕方がない。彼らは何なのか。蘭とどういう関係なのか。

 けれど、聞けるはずもない。ずっとそばにいて強引に質問したくなることも幾度となくあった。この学園祭の準備の慌しさは救いでもあった。

 どうして、こんな過剰な欲求を抱いてしまうのかわからない。

 自分は彼女をどれだけ知っているだろう?

 まったく、何も知らないのでは?

 いいや。

 あしほは、そうして立ち止まった。

 知らされて、いないのでは。

 気付いた。

 そのときだ。

 校内の随所に設置されたスピーカーから、マイクのスイッチの入る音が聞こえた。

 雑音と共に、声が響き渡った。


『生徒諸君!』


 ☆

 

 体育館裏の昇降口付近、プールに面した遊歩道。

 学校敷地内でも最果ての地にあたる場所。

 奨学生の一団の姿がそこにあった。学校行事に生き生きと参加するような少女たちではない。寄り集まって、だらだらとすごしていた。公の催しには参加するつもりなどさらさらない。いや、以前なら文化祭は渉猟の地とばかりに往来する気の弱そうな中等部の生徒あたりの財布に狙いを定めていたかもしれない。

 だが学園全体が、主に生徒会が妙に張り切っているのだ。またあの間抜けなコスプレ茶番劇に巻き込まれる可能性を考えると付き合いきれない。真正面から叱責されればまだ気合の入りようもある。あのへなちょこへろへろキックを相手にして以来悪事を働くのが馬鹿らしくなってしまった。どうせ校則違反ならカツア

ゲよりいいだろうとアルバイトを始めた一員までいる。

 数日間の行事の間はこうして学校の片隅でくすぶっているというわけだ。

 しかし一人の少女が声をあげた。一同は視線を転じて仰天する。

「おい、あれ…」

「何だ、ありゃあ」

 生徒たちの集団が無理に体育館裏の倉庫に御剣蘭を引っ張っていく。

 親しげな雰囲気には見えない。嫌がる蘭の腕を引いて中には小突いている者もいる。明らかに陰湿な雰囲気だ。

 不良たちは悪事に慣れている。だからこそ禁忌の線引きを弁えている。

 その集団の理不尽さも見た瞬間に理解した。

 しかしすぐに反応するような優等生の一味ではない。

「何だってんだ? あいつら。御剣に何の用だ」

「いや、ほら。あいつら…文系の連中じゃねえか」

 少女らは話し合った。

「うちらも見たじゃねえか。御剣が生徒会長と仲良くしてんの」

「案の定オタク連中の恨みを買ってんじゃん」

「はーん。自業自得じゃねえの、御剣の奴」

 彼女たちは学内の事情に暗いわけではない。

 いつか喫茶店で御剣蘭と豊田あしほの癒着している様子を見たときに生徒会長の変化の理由を悟った。同時に自分たち以上に反感を覚える一団の存在には気付いていた。

 赤い髪のサキは沈思黙考している。

 少女たちは口さがない。

「あのな、おまえら…」

 サキが不意に口を開いて何か言いかけた。すると、校舎の片隅まで校内放送が声高らかに響き渡ってきた。


『生徒諸君!』


 ☆


 高等学院の文化祭の日の午後は中等部の授業も休みとなる。

 生徒たちは学園祭に参加して先輩たちとの親睦を深めるよう促されていた。

 中等部生徒である御剣なこと一般客であるみかが渡り廊下を行く有子としのぶに遭遇するのも不思議ではなかった。しかし彼女らが高等部の教員とこの学校を取り仕切る一族の家の侍女であるとは気付かない。

 姉妹は二人とすれ違いかけた。

 そこで声を発したのはしのぶだった。

「待ちなさい」

 腕を伸ばしてなこの肩に手を置いた。

「君は中等部の生徒か。名前は?」

「へうっ?」

 なこは振り向いて目を丸くする。

「私は高等部の教師だよ。豊田のね。質問に答えて」

「あ、あ…先生ですか!」

 子犬のようになこは嬉しそうにする。

「すごいですね! 高校の学園祭は初めてじゃないですけどっ、こんなに人が集まってるの見たことないです!」

 ぴょこんとなこはお辞儀した。

「私、なこといいます」

「下の名前は?」

「…あ、えっと…み、みつるぎ…です」

「御剣なこか。御剣蘭の妹だな?」

「しのぶ様…」

 確認するしのぶの背後で有子が眉根を寄せる。

 なこの前にみかが一歩歩み出た。 

「そちらの方が豊田先生ですか? でしたら、あしほ様のお姉様でしょうか」

 穏やかに微笑みかける。

「そうだ」

 しのぶは頷いた。

「わあ! 豊田しのぶ先生ですね! お会いできて興奮のサイクロンですっ」

 なこの態度にしのぶは一驚する。

 しかし不躾にしのぶの指はその顎をとらえた。

「私も君らにお会いしたかったぞ。御剣の妹。感激のレインボウだ」

「きゃ…」

 上向かされて、見据えられ、なこは赤面する。

「いやあん、先生大胆っ。そんなに見つめられたら羞恥のブラックホールがあいちゃいますう」

 理知的な面差しに見つめられ、なこは嬌声をあげる。

 しのぶの背に漂う緊迫感に、有子は背筋を伸ばした。

「し、しのぶ様っ…」

「確かに彼女たちは御剣蘭の家族か?」

「それは……そうですが…」

「承知なんじゃないか! 黙ってやりすごそうとしたな?」

「何を…ただの中等部の生徒と一般の客です。お見過ごしになったところで何があるというのです」

 厳しい声が学園祭の喧騒と彼女たちとを隔てる。

 なこは目を見開いた。みかも硬直したように動けなくなる。

「あ、あ、あのう? な、何のお話ですかっ。そ、そんなに熱い視線で見つめられたら、なこ、なこっ…激愛のメテオライトが降り注いじゃいますよっ?」

 てへへっとなこは笑ってみせた。

 しのぶはその空気に取り込まれず、少女を凝視する。

「御剣なこ。所属クラスは?」

「ちゅ、中等部三年のA組ですっ」

「そうか。この高等学院の学園祭は初めてではないと言ったな。…何回目だ?」

「そ、それは、あの、三回目、です。その前は、公立の小学校でしたからっ」

「…へえ。それで君は狐か? 狸か?」

「しのぶ様!」

 有子が鋭く声を発すると、美術教員はなこを解放した。

「失礼したな。御剣の妹」

 なこはぶんぶんと首を横に振った。

「なこが、何かお気に障りまして?」

 みかが警戒心をあらわにする。

「君たちは何者だ?」

「な、何を仰っているんです、しのぶ様」

「そのままの意味だ」

 しのぶは言い切った。

「君たちにお会いしたかったぞ、本当に! おかしいじゃないか。夏中、私は御剣蘭への接触をはかったんだ。しかしどこに行ってもすれ違う。逃げられる! 今も御剣蘭も恐らく学内にいるだろうが…お目にかかれないだろうな。君らの姉

さんがそれを許諾しない限り」

「しのぶさん…あ、あなたは、一体…」

 みかが問う。

「…血縁というのかはわからないが、御剣蘭に類するものは私を警戒していないと思って期待していたんだ。今日しかなかっただろうからな」

 しのぶはこう返した。

「私の記憶力は常人に比べると箍が外れているようでね。忘却を知らない」

「忘却を知らない…?」

 みかは初めて怯えたような顔を見せる。

「そう。だから中学生であれ高校生であれ記憶にない顔の生徒が豊田の築いた学び舎に存在すれば気付く」

 いたいけな姉妹は絶句した。

「しのぶ様、おやめなさい。何だというんです」

「彼女たちからは何も感じない…ただ見える、ただ聞こえるただ触れる…それだけだ。まるで、そこに実在しないかのようだ…そんなものは私も初めて遭遇する」

「何ですって? …それだけって…何故…」

 有子が怪訝な表情をする。

「何故かは私が知りたい」

 しのぶは微笑した。

「まあいい。今日はハレの日だから妹に免じて許してやる…どうせならもっとうまく化けてくれ。次に来たときには耳や尻尾を探してやるぞ」

「きゃあん、困っちゃいますっ」

 歓声をあげつつも、なこはみかの背後にそっと隠れた。

 みかの眉間に皺が寄る。

 重い沈黙がおりたときだ。

 ガガッ、と雑音を響かせながら、校内のスピーカーが響いた。

 声が敷地内に轟いた。


『生徒諸君!』


 それは紛れもなく文芸部部長の声。

 生徒会に反旗を翻す者の声だった。

『われわれは、生徒会長豊田あしほ、及びに生徒会の行使したスクールジャパンプロジェクトに反対を表明する! ひいては、この学園祭の中止、プロジェクトの中止をここに要求する! まずは、要となる展示、及び催しの妨害を予告す

る!』

 そして、と彼女は続けた。

『生徒会長豊田あしほは後にするわれわれの架電に応じよ。さもなくば御剣蘭の安全は保障しない!』




 あしほは廊下に呆然と立っていた。

 たった一人きりで。

「なあに、今の…?」

「ちょっ、やばくない?」

「会長どうするのかなあ」

「しっ…私たちは黙ってようよ」

 ひそひそと、あたりの教室から届く囁き声。

 あしほは立ちすくむ。

 さっきまで。

 さっきまで、まるで世界が自分に味方してくれていたかのように錯覚していた。

 ああ、錯覚だった…!

 状況次第で人の気持ちが変わることなど熟知していたはずだ。

 それを忘れていようとは。

 どこまで世話を焼かせるのか、御剣蘭は。

 いや。どこまで呆けていたのだ、自分は!

 スマートフォンへの着信音が鳴り響いて、あしほは肩を震わせる。

 画面を確認する。

 しのぶからの呼び出しだ。

 あしほの通話機能にはキャッチホンがある。反乱した一同からの着信があっても切替えれば大丈夫だろう。

 けれど、あしほは出ようとしない。

「姉さん…」

 あしほは歯噛みする。それから応じた。

「あしほ。校内放送は聞いていたか?」

「聞いたわ…」

「事件をなかったことにできるな? 解決するんだ、あしほ。これは命令だ。学内の不祥事は許されない」

「……!」

 これが。

 これこそが、命令と云うのだ。

「言われなくても…! 私はもう子供ではありません!」

「子供でないと言うならこの事態は何だ」

「っ……!」

 見透かされている。そう感じた。

「今どこにいる? 首謀者の居所にあたりをつけてやる」

「…新校舎の二階。今から昇降口に向かいます」

「御剣の妹たちに会ったよ」

「え? なこちゃんとみかちゃんがいるの?」

「そう。早いところ御剣蘭を取り戻せ。文化祭の中止などありえん。叔母さんとの勝負には勝利しなければならない」

「姉さん…」

「有子を一応そちらに向かわせたが…」

「助かるわ」

「いや…おまえの助けにならない気がしてきたぞ。すぐに私も行くから何か言ってきても耳を貸すな。いいな?」

 通話はそこで途切れた。

「どういうこと…?」

 有子に頼るなとは何事か。

 相変わらず、姉の言うことは不可解だ。

 あたりが急に騒がしくなった。

 ばたばたと少女たちの足音が響いてくる。

 生徒会の一同だ。

「会長! こんなものが生徒会室に…」

「…地図?」

 差し出された紙を開くと学校の校内図だ。

 至る所に×印がついている。

「私たち、一番近い印の場所にすぐ向かってみたんです。そしたら、こんなものが貼ってあったんですっ」

 あしほは息を呑む。

「そ、そそそれはっ…!」

 あろうことかそれはさるBL作家の特典ポスターだった。

 二人の美少年が仲睦まじく寄り添っている。

 どこからどう見てもBでLなイラストのA3サイズの特大版だ。

「こんな破廉恥なポスターを…至るところに貼っているようなんですっ!」

「う、ううう…そんな許しがたいことをっ…!」

 色々な意味であしほは狼狽する。

 生徒会のメンバーは会長の表情に悔しさを見出して同調し俯いた。

 と、同時に一人がふと会長の手元に目を留める。

「会長、どうしてポスターを丁寧にくるくる丸めてるんですか?」

 尋ねずにはいられなかった。

「こ、こんなもの! こんな危険なもの! 公共の場で明らかにするにはふさわしくありません! 没収です! こ、これは責任を以って私が処分いたします!」

「なるほど! さすがです、会長!」

「そんな恥ずかしいポスターを自ら処分なんて…会長、勇ましいです!」

「ふ、ふふ、ままままあね…」

 幸か不幸か、コスプレを重ねるうちにあしほの演技力は板についてきた。

 この場合は虚勢そのものであったが。

「これは多分まだいい方の嫌がらせだわ。でももしも万が一にも十八歳未満には見せられないようなものが混ざっていたら…」

 反旗を翻した一団は文化祭を惑乱させるのが第一の目的だろう。

 破壊活動の宣言をしたものの公序良俗を乱すことがきわどい行為であると承知しているのか。だからポスターという視覚的テロリズムで訴えたのだろう。

 あしほはポスターの端をとんとんと綺麗に揃える。

 没収というわりには丁寧な仕舞い方だ。

 そこらに備品として置いてあったポスター収納用の長細い筒に慎重に仕舞いこんだ。きちんと蓋をする。

「あの、会長…何だか釈然としない行動を目の当たりにした気がしますが…処分されるんですよね?」

「うっ…と、当然よ! け、けれどもこれはひとまず彼女たちの目論見に関連する証拠品として押収します」

「なるほど!」

「健全な文化祭を汚そうという輩…許されることではないわっ!」

 あしほは相手の手強さを実感する。

 一般人には理解されがたいポスターを至る所に張り出すことの危険性は承知しているはずだ。むしろ、こうした文化を公道で詳らかにされることを畏れての抵抗であるはず。

 禁忌を敢えて犯すことで生徒会の施策の矛盾を摘発しているつもりだろうか。地図を置いていったことからも意図が伺える。

 妨害というよりも単なる嫌がらせだろう。

 宣戦布告だ。

 しかし、蘭の拘束は一歩誤れば犯罪だ。

 なかったことに、としのぶは言った。

 学校の運営者から見てもこれは充分に悪質な妨害だろう。

 コンテストを通じて準備したポスターまでもテロリストたちは取り去っていったのだから。

「手分けして文化祭に関係ないポスターを回収してください。各団体に口頭で一旦活動を停止して、身の周りに異常がないか確認するように伝えて」

 あしほは指示を出した。

「もし文化祭と関係のないポスターを見付けて剥がして持ってきたら生徒会が報償を約束するとも伝えてちょうだい」

「え?」

 一同は首を傾げる。

「これは生徒会が一部の生徒たちの手を借りて仕掛けた宝探しのイベント。あの犯行声明の放送もそのパフォーマンス。そういうことにするの」

 生徒会の一同は顔を見合わせた。

 あしほの発想はこの場で最大限の効果を発するだろうと理解する。

 この夏休みの間、生徒会にとっては通常業務に加えてイレギュラーな仕事が増えた。不満を抱いて然るべきところだ。しかし、お飾りであるはずの生徒会長がその爪を隠さずに才を発揮する様子をこのひと夏で体感してきた。以前のように

無機質だった会長よりも、現在のように柔軟な指示を出せるあしほに今では信頼を寄せていた。確かに、あしほの提案は生徒たちを動揺させずに危険物を取り払う案に思われた。ごまかしきれるとは限らない。

 しかし、それが唯一残された妙案だろう。

「わかりました、会長!」

「お願いします」

 一同は散り散りになって駆け出した。

 あしほは階下に向かう。

 放送室には何か痕跡があるだろうか?

 姉と合流するのが先決だろうか。

 迷いが生じたとき、階段をあがってくる頼もしい人の姿を見つけた。

 頬を緩めた。彼女は、あしほの意図を汲んでこう告げた。

「放送室はもぬけの殻でしたわ、あしほ様」

「有子! 助かるわ。あなたがいてくれれば…」

 あしほは侍女の到着に安堵する。

 しかし、有子は沈うつな面持ちだ。

 彼女はこう告げた。

「要求を呑みましょう、あしほ様」







 体育館裏の倉庫。

 バスケットボールや、古くなったマットが詰まれている庫内。

 そこに各文系クラブの代表者や運動部の一団が集まっていた。

 部員たちはとうにポスターを貼り出しに向かわせた。

 一部は伝令のために残した。

 時に応じて展示や催事を妨害できるよう要所にまだまだ人員を密かに待機させている。放送室はグラウンドに面した一階にある。少女たちは放送を終えると、すぐにグラウンド側の窓から抜け出た。教員らが駆けつける前に逃れるのは運動部の生徒らには朝飯前だった。このアジトに蘭を囲い、あしほの出方を伺う。

 ここまでは良かったのだ。すべてが計画通り。

 しかし一同はげっそりしていた。

 人質がとにかくうるさいのだ。

「うぬううう!」

 蘭は自分を縛る縄をほどこうと必死だ。

「無駄なのだ」

 文芸部部長が忠告する。

「うんぬううう!」

「無駄ですうう」

 剣道部部長も吐息する。

「それにしても何かこう…卑猥な縛り方ですうう…」

「参考文献がこれしかなかったのだ」

 文芸部の部長が手にしているのは一冊の参考書だ。


『メンズカップル・ポーズ集 ~緊縛編~』だ。


 男性の体にさまざまな緊縛を施し、あらゆる角度から撮影した画像が掲載されている。BL漫画を描く少女たちのために用意された男性のポーズ集。

 実際に御剣蘭を拘束しようとロープを用意したはいいものの縛り方がいまいち

わからず引っ張り出されてきたのは漫研の少女たちが持参していたこのポーズ集だったというわけだ。従って蘭は今横たえられた状態でどことなく卑猥な縛り方をされている。しかしなかなか抜けられないのは確かだ。

「ううううっ…まさかボーイズラブの雑誌が点々と道端に置かれているのを拾っていったら掴まってしまうとは不覚おおお!」

「いえ、簡単すぎますううう! 逆にこちらもびっくりしましたああ」

「わかってないな、剣道部部長。あれは全て今月発売されたばかりの最新号だったのだ」

「基準がわかりませええん」

 蘭はがんじがらめの縄から抜け出そうとがんばってみる。

 だが力を入れれば入れるほど食い込んでくる。

「やだ! やだお! 帰る! 会長のところに帰るううう! こんなことしたって、あしほは動じないっ! もうやめるお! どうして、あんたたちがこんなことするおっ! 会長は…会長は、がんばってるのに!」

 文芸部部長は蘭を見下ろした。

「貴様、本当にやかましいな。御剣蘭。それより聞きたいことがあるのだ」

「何だおっ」

「どうして会長を唆したのだ? いや…そもそも『学校革命プロジェクト』の提案者がおまえだというのは本当なのか?」

「そうだよ?」

 蘭は隠し立てしなかった。何も考えずにべらべら答える。

「あれは蘭の考えっ。だから会長は関係ない! こんなことするのは間違い、早くやめる!」

「御剣。わかっていないようなのだ」

「ふ、うっ…?」

 蘭の喉元に、文芸部部長は上履きのまま足を載せた。

「この文化祭を台無しにするつもりは最初からないのだ。そんな危険をおかすほど馬鹿ではないのだ」

「じゃ、じゃあ何が目的だお!」

「私は個人的におまえに怒りを感じているのだ」

 暗い瞋恚が灯る瞳に、見下ろされた。

「貴様のようにチャラチャラ着飾った生徒がBLを愛好すると吹聴したりオタク趣味を伝播させるために会長を操作するなど不届き千万。本来は隠されるべき秘密の趣味、暗号であるべきだろう? それを何なのだ! 特殊な趣味で粉飾することで自らを特権階級のようにオタクという特徴を単なる属性として周囲に呼称させ、ただのファッションのように他者との差別化のアイテムに用いるとは言語道断! おまえの趣味の在り方はそれでいいのか!」

 蘭を囲む生徒たちも少女の言説に聞き入っている。

 ここにいて沈黙する文系の少女たちは多かれ少なかれ彼女の意見に賛同している。

「引いてはおまえが嫌いなのだ。御剣蘭」

「ら、蘭、だって」

 蘭は泣きそうな声で訴えた。

「蘭だって…おまえらなんか好きになれない!」

 声を張りあげて訴えた。

「おまえらはまだいいっ! 友達がいるんだから! こうやって結束して共謀できるパワーがあるんなら、もっと別のことに使ったらどうだ! 友達どころか、監視されて満足にBLのことを語り合えない子だっているのにっ! む、無理に脅しでもしなければ…友達になってくれない子だって…」

 文芸部部長は怪訝な顔をする。

「…何の話だ?」

「う…だ、誰だっていいお。とにかく! 会長は待ってたんだから…!」

「…何をだ?」

「おまえらが宣伝コンテストに申し込んでくれるのを待ってたっ! 文化部なんだから…! 参加するかもって! でも申し込むどころか、こんな…こんなつまらないこと画策して…許さない…」

「な、何だ?」

 蘭の瞳が輝く。

 冴えた、獣のような輝きだ。

「許さない!」

 どん、と倉庫全体が揺れた。

「きゃあああ!」

「な、何なのだ!」

 あたりの備品が揺れ、床から突きあがって来た振動で窓硝子が震えた。

 少女たちが怯えて身を寄せ合う。

 衝撃は、一度きりだった。すぐに静まる。

「地震、か…?」

 よろけてしまった文芸部部長は、蘭を見遣ってびくりと肩を震わせた。

 冷たい眼差しで睨まれていた。思わず怯む。

「に、睨んでも無駄なのだ。安心しろ。おまえや豊田会長に生徒会の権力を私的に用いないと約束させたら解放してやるのだ。実際、会長だっておまえから解放されてほっとするんじゃないか?」

 何気なく口にしたことだった。

 しかし、それは蘭の瞳を曇らせるのに充分だった。

「そ、んなこと、おまえらがしなくても……いずれ…」

「…何だ?」

「と、とにかく…余計なお世話お!」

「何なのだ? ふん。そうか。やはり実際には会長に邪険にされているのだな」

「違うっ! 会長は、蘭にとって天下無敵の唯一無二の友達!」

 高らかにそう叫んだ蘭の瞳は、わずかに潤んでいた。


 








確かめたことはないの、あの子の気持ち。

だって信じているから。

邪魔をしないで。

お願いだから。

鍵を持っているのはあたしじゃない。

力があるのはあたしじゃないの。

あたしは王国のお姫様。

それを代表するもの。

典型例。

けれど力があるのはあたしじゃない。

王子様が助けてくれるって?

そうかもしれないわ。

助けてくれる人がいるなら、きっと、それが本当の。





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