第11話 国王が獲得した金メダル

オリンピック開会式で行われる開会宣言は、『開催国の国家元首によって行われる』とオリンピック憲章に明文化されており、国王、大統領もしくは、それに準じる立場の人物が行う。1936年のガルミッシュパルテンキルヘン冬季オリンピックと、同年のベルリンオリンピックでは、アドルフ・ヒトラーが開会宣言をしている。


開会宣言の内容も、オリンピック憲章で定められており『私は、第……回(オリンピアードの番号)近代オリンピアードを祝し、オリンピック(開催都市の名前)大会の開会を宣言します』と述べる。同時多発テロの翌年2002年に行われた、ソルトレークシティ冬季オリンピックの開会式では、アメリカのブッンュ大統領が開会宣言を行ったが、宣言の前に「誇り高く、優雅なこの国を代表して」と、政治的色彩のある言葉を付け加えて波紋を招いた。これは規定以外の宣言をした初のケースである。


●近年の夏季五輪の開会宣言

1964年 東京五輪 昭和天皇

1968年 メキシコ五輪 グスタボ・ディアス・オルダス 大統領

1972年 ミュンヘン五輪 グスタフ・ハイネマン西ドイツ連邦大統領

1976年 モントリオール五輪 エリザベス2世

1980年 モスクワ五輪 レオニード・ブレジネフソ連共産党書記長

1984年 ロサンゼルス五輪 ロナルド・レーガン大統領

1988年 ソウル五輪 盧泰愚大統領

1992年 バルセロナ五輪 スペイン国王フアン・カルロス1世

1996年 アトランタ五輪 ビル・クリントン大統領

2000年 シドニー五輪 ウィリアム・ディーン総督

2004年 アテネ五輪 ステファノプロス大統領

2008年 北京五輪 胡錦涛国家主席

2012年 ロンドン五輪 エリザベス女王


そんな開会宣言を行った人物の中に、白身もオリンピック選手だった人が一人いる。

バルセロナ大会で開会宣言をした、スペイン前国王のフアン・カルロス1世である。

前国王は、ヨッ卜のスペイン代表選手としてミュンヘンオリンピックに出場し、15位という結果を残している。同じくスペイン王室のクリスチーナ王女はソウル大会に、現国王のフェリペ6世は皇太子時代にバルセロナ大会に、それぞれ選手として出場している。

フェリペ6世はスペイン選手団の旗手も務めており、出場したヨット・ソリング級では6位に終わっていた。とは言え、カタルーニャ人のパートナーと3年間一緒に練習し続け、選手村で一般選于と同じ生活をするなど、対立しているスペインとカタルーニャの融和に努めた活躍は、金メダル級と評価されている。

他の王室関連にも、オリンピック出場選手はいる。モナコのアルベール王子は、リレハンメルオリンピックのボブスレー2人乗りに出場。イギリスのアン王女は、モントリオールオリンピックに、馬術の代表選手として出場している。

 

だが、最もすごいのは、1960年のローマオリンピックのヨット・ドラゴン級で金メダルを獲得したギリシャ国王コンスタンティノス2世だろう。ギリシャ最後の国王で、現在はロンドンに住む。当時は20歳。即位前だったとはいえ、国王の金メダルは史上唯一である。

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