「上に参ります」
その朝、私は酷くぼんやりしていた。寝ぼけている、というのとはまるで違っていた。
脳内に靄がかかっているような、半分眠っているような、目の前の光景をTVの映像でも眺めるようにどこか他人事として認識しているような…… そんな状態だった。
どうにか出勤の準備を整え、玄関から出てドアに鍵を閉めることはできたが、まだまだぼんやりはおさまらなかった。
だからだろうか、「上に参ります」という言葉と共にやって来たエレベーターに乗り込みそうになったのは。
足がエレベーターの床に触れる寸前、それまでのことが嘘のように急に意識が明瞭になり、事態を把握した途端、ゾッとして階段へと走った。
上に行きたかったわけではないし、そもそも私は2階建てアパートの2階に住んでいる。
もっとそもそもの話をすれば、うちのアパートにエレベーターはない。
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