岩の顔

 親友を亡くした私の知人。長年ふさぎ込んでいたが、ある時電話で自宅に招待してくれた。妙に元気な声だったので、かえってどうしたんだろうと不安になった。


 当日、知人宅のリビングに通されてびっくり。テーブルいっぱいに大きな岩がでんとのっていた。


 見て、この岩。亡くなったあの子にそっくりなの。ここが目で、ここが口で……


 愛おしそうに岩を撫でる知人。


 まあでも、どんな形であっても元気を取り戻せたなら良かったなと思えた。


 私には、その岩は知人を睨みつける全く知らない人の顔のように見えたが、それは言わないことにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る