死んだふりと愛犬
ふと思いついて、愛犬にドッキリを仕掛けてみることにした。
リビングで遊びながら、唐突に「ううううー苦しいー」と唸ってうつ伏せに倒れこんで死んだふりをしてみた(演技はちょっと下手だったかもしれないけど)。
さあどうするかと薄目を開けて様子を伺った。
愛犬は数秒ほどきょとんとしたこちらを見ていたが、やがてこちらにやってきて私の頭のにおいをくんくんと嗅ぎ、左頬を舐めた。
けどそれっきりで、さっさとお気に入りのぬいぐるみを咥えて遊びだしてしまった。
(ちょっとちょっと、もう終わりー⁉︎お姉ちゃん死んじゃったんだよ⁉︎もっと心配してー⁉︎)
愛犬が戻ってくるのを期待して、しばらくそのまま動かずにいたが、全くこちらを気にする素振りを見せないため、ため息をついて立ち上がりかけた。
そこへ、廊下につながるドアが開き、姉が入ってきた。
「あ、姉ちゃん。聞いてよ…」
駆け寄って今の出来事を愚痴ろうとした。
が、姉は私の横を素通りしていった。
まるで私が見えていないみたいに。
姉は私の好きなクッキーをのせたお皿を持っていた。
戸惑う私の前で、それを仏壇に供え、手を合わせる。
うちに仏壇なんてなかったはずなのに、いつの間にか現れていた仏壇に。
遺影に写っていたのは、満面の笑みを浮かべた私だった。
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