「この文章を翻訳してください。翻訳サイトでもダメでした。お願いします」

　そんな説明と共に、1000単語ほどの外国語の文章がSNSに投稿されていた。

　たしかにこの外国語、日本ではあまり見かけないしな…… 困ってるみたいだから訳してあげよう。

　よし、終わった。

　けど、これ内容が…… メチャクチャ怖い話なんだが……。

　一体どこで拾ってきた文章なんだか……

　いきなりこんなの送ったらビビっちゃわないかな……

　まあ、本当にこういう内容だったんだからどうしようもない。とりあえず送ってあげよう。

　あれ、投稿ボタンを押そうとしたら、急に咳が止まらない……

　息が、苦しい……

　うわっ、血! 血吐いた! 咳するたびにどんどん出てくる!

　真っ赤だ! 手も胸元も、もう足元まで真っ赤だ!

　どうなってるの? もう赤しか見えないよぉ!

　苦しいよ、助けて! 助けて! 誰か……

　この世には、意味を理解した人間を死に至らしめる文章がある。

　それらは時に繁華街にある建物の壁の隅に。

　時に古本に挟み込まれたメモ用紙に。

　時につい先程まで空白だったスーパーの広告の裏面に。

　時に誰のものかもしれないSNSのアカウントの投稿に。

　時には外国語で、時には古語で、時には難解な文体で、時にはクイズ形式で。

　発見した人にとって、パッと見ただけではまず意味が分からない状態で、ひっそりと現れる。

　ひっそりと、誰かが考えて、理解するのを待っている。

　ひっそりと、誰かが死ぬのを待っている。

　いつどこにどんな形式で、誰の前にそうした文章が出現するのかは分からない。

　分かっているのは、書いているのはこの世の者ではないということだけ。

　最近、意味の分からない文章を見かけたことはありませんか?

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