もうすぐだよ

 お姉ちゃんと、入院した親戚のお見舞いにいった。


 初めていく病院だったけど、迷子にならずに行けたし、親戚も思ったより元気そうで安心した。


 帰り道、お姉ちゃんとおうちに向かって歩いていた。


「お姉ちゃん、ここ右に曲がるんだよね」

「うん。右にまがって、歩いていけばおうちまでもうすぐだよ」


「お姉ちゃん、あのわんちゃんなんて種類だろ?」

「そうだね。お母さんわんちゃんに詳しいから帰ったら訊いてみようね。もうすぐだよ」


「お姉ちゃん、晴れてるのに雨が降ってるよ」

「お天気雨だよ。ほら、傘さして。もうすぐだよ」


「お姉ちゃん、来るときここにこんなお店あったっけ?」

「覚えてないけどあったんじゃないかな? もうすぐだよ」


「お姉ちゃん、なんでたくさんの人達が私達を舌なめずりしながらまばたきもしないで見てるの?」

「あんたがかわいいからじゃない? もうすぐだよ」


「おねえちゃん、なんで虎さん達に羽が生えて空を飛んでるの?」

「なんでだろうね。もうすぐだよ」


「お姉ちゃん、なんで木の枝が伸びて私達をぴんぴん叩いてるの?」

「さあねえ。もうすぐだよ」


「お姉ちゃん、なんで私達歩けば歩くほど地面に沈んでくの?」

「もうすぐだよ」


「お姉ちゃん、どうして泣きそうな顔と声をしてるの?」

「もうすぐだよ」


「おねえちゃん、私達おうちに帰れるの?」

「もうすぐだよ」

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