猫の声の家

みゃーお、みゃーお


朝、猫達の声が起こしてくれる。



みゃーお、みゃーお


仕事に行く準備をしている間、猫達のはしゃいでいるような声が響いている。



みゃーお、みゃーお


猫達の声が「行ってらっしゃい」をしてくれる。



みゃーお、みゃーお


帰ってくると、猫達の声が「おかえり」と伝えてくれる。



みゃーお、みゃーお


夜眠りに落ちる時、猫達の声に包まれる。




この家に猫はいない。だけど、この家の中では四六時中猫達の声がしている。


私が生まれる10年前に建てられたこの家は、築年数の割にはきれいで、しっかりしていて。

なのに「事故物件」扱いされていて値段が破格だった。


内見に来る人はそれなりにいたけど、うるさいとか、不気味だとか。

みんな嫌がったそうだ。


以前この家に住んでいた人は、住み始めた時から亡くなるまで、たくさんの猫達と暮らしていたらしい。


長い間猫達と一緒にいたこの家は、猫の声がするのが当たり前だと思ってるだけなんだ。


だからずっと聞き続けてきた猫達の声を、自分で再現しているだけで。

この家にとっては何もおかしなことじゃないんだ。


だから、私はここに住むことにした。


引っ越してきた日から毎日一日中。

どこにいても猫達の声がする。

でも気にしてない。これがこの家にとっての普通なんだから。


それに、猫をずっと飼いたかったけど、色々な事情で飼えなかったから、声だけでもたくさんの猫達と過ごせるのは私も嬉しい。



みゃーお、みゃーお


今日も、のんきで平和な声がする。

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