マッて

中学校の登下校に使う道に古い駄菓子屋があり、よくそこでお菓子を買っている。

今日も学校帰りに小さい羊羹をいくつか買い、店を出ようとした。


あと一歩で店の外というころまで来たとき、後ろからぐいっ、と引っ張られたような感覚があった。

服が何かに引っかかったのかと思い振り向いた。


手があった。

カラフルな駄菓子が並べられたケースから、日焼けしたように小麦色の腕が生えていて、5本の指がコートの左脇腹辺りをがっしりと掴んでいた。


でも、ほんの一瞬だった。

私が息を飲むのと同時に、それは黒っぽい煙になってふわりと消えてしまった。


(何今の? 疲れてるのかな? 確かに最近忙しかったけど… まあいい。早く帰ろう)

そう思って、前に踏み出そうと片足を上げかけたときだった。



ガッシャーンッ


老朽化した駄菓子屋の看板が地面に落下した。


もし私があの手に止められずに店の外に出ていたら、直撃していたであろう場所に。


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