布団と愛犬

親戚が小型犬を飼い始めたばかりの頃のこと。


夜、寝室に布団を敷いてから入浴し、戻ってくると掛け布団の真ん中あたりがわずかに盛り上がり、もそもそと動いていた。

寝室のドアを開けっ放しにしていたから、布団が好きな愛犬が中に潜り込んだのだろうと思い、めくってやろうと掛け布団に手をかけた。


プピー プピー


背後から聞こえた間抜けな音に振り向くと、音が鳴る玩具を咥えて遊ぶ愛犬の姿があった。

え、と思って布団に目をやると、盛り上がっていた部分は消えていて、もう微動だにしていなかった。念のためめくって調べたが、何もいなかった。


考えてみれば、身体の小さな愛犬が自力で冬用の分厚く重い掛け布団の下に入り込むのは難しそうだった。


膝の上で丸まる愛犬をいとおしそうに撫でながら、もしあの時後ろにこの子がいるのに気付かないまま布団の中を見ていたらどうなっていたんだろうね、と親戚は独り言のようにつぶやいていた。

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