再会したひ
楽しみ 楽しみ あの人に会える
大好きな大好きな あの人に
いつぶりだろう 懐かしい
前はよく一緒に買い物に行ったり遊園地に行ったりしたなあ
どんな格好で来るんだろう
きっと素敵な格好で来るんだろう 私もおしゃれしなきゃ
お土産も買って行こう
あの人の好物のお菓子 喜んでくれるかな
会ったら何の話をしよう
話したいこと いっぱいありすぎて困るほどあるなあ
あー ほんとに楽しみ!
待ち合わせ場所のレストランの扉
私はわくわくしながら開いた
帰り道
私の目から 滝のような大雨が降ってた
通りすがりの人達は 心配そうに見つめたり 声をかけてくれたけど 私は何も返せなかった
私の大好きなあの人は、私の大嫌いなものが大好きだった
あの人が突然その話を始めて
私はとても美味しい料理を口に運ぶ手が止まった
あの人が嬉しそうにその話をしているのを見て
私はとても美味しい料理を食べる食欲がまったくなくなった
しばらく会わない間に大好きになったの?
それとも ひょっとして ずっと前から??
そう考えたらとても美味しい料理を吐きそうになった
もう帰る
テーブルにお代を置いてそう告げたら
あの人は心配そうに手を伸ばしてきた
その手が気持ち悪くて走って逃げ出した
大好きだから もっともっと知りたかった あの人のこと
知れば知るだけもっと大好きになるって信じてた
もうすでにたくさん知ってるけど
もっと知りたかった
もっと大好きになりたかった
でも違った
知ったら 大嫌いになった
あの話をする前までは本当に楽しかったのに
すべてがひっくり返った
今までのあの人との日々がいやな思い出になった
綺麗なものが醜くなる瞬間を見た
一番悪いのは
見抜けなかった
愛が足りなかった
私だよね
だけど あれと あれが好きな人のそばにいるなんて耐えられない
家に帰っても 滝のような大雨はやまなかった
うああああああ という雷鳴まで聴こえ始めた
私はあの人からのメールや電話の履歴をすべて消し
連絡先も写真も動画も全部消した
明日
あの人に関するものをすべて捨てて
新しい携帯を買って
引っ越す準備を始めよう
そう思った
その夜 ベッドが海に沈んだ
あの出来事から随分経った
あの人とはあれから一切関わってない
もう二度と関わることはない
でも 私は あれから人と仲良くなるのが怖くなった
楽しく話している最中も思う
「この人は私の大嫌いなものが大好きかもしれない」
途端に嫌になり その人から離れる
そうして 私の周りに人はいなくなった
それでも
街中ですれ違う人が
バスで隣に座った人が
たまたま入ったお店の店員さんが
あれが大好きかもしれないと思うと怖くて 怖くて
最近 全然外に出てない
このまま私は死ぬんだろう
でも もし 私の死体を見つける人が
警察や病院の人が
お葬式をする人が
あれが大好きだったら
そのときはどうすればいいの?
今ではそれが、怖くて、怖くて、怖い
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