第三百五十〇話『さんすくみ』

「すごい。とんでもない身体能力だね」

見ていたタカヒロが言った。


===

「へっへーん!どうだい!」

サラは胸を張って言った。


「いや、すごいよ。普通に運動が得意な人はフェイントいれるんだね」

僕がサラに言う。僕は運動がまったくできないので、自然にそこにたどり着く人がいるということにびっくりした。


「どういうこと?」

サラが聞く。彼女にとっては当たり前のことだから僕が何に驚いているのかわからない様子だった。


「格闘ゲームって普通3すくみになっているんだ」

僕がサラに説明する。運動ができる人の理屈ではなく、ゲームの仕組みとしての説明をはじめた。


「さんすくみってなに?サンクスみたいなこと?」

サラが言う。


「ぜんぜんちがう」

僕が笑う。そもそも英語じゃない!


「じゃんけん、みたいなことですね!」

美少女魔法使いの奈緒子がサラに説明した。


「ぐーちょきぱー?のこと??」

サラが奈緒子に聞いた。


「そうですね!グーはチョキには勝てるけれども、パーには勝てない。チョキはグーには勝てるけれど、パーには勝てない。パーはグーには勝てるけれども、チョキには勝てないみたいなことです!」

奈緒子はサラにむかって両手をグーパーしながら説明した。


「なるほどですねー・・・」

サラはつぶやく。


「ほんとにわかった?」

僕がサラに聞く。わかってない時のリアクションだった。


「じゃんけんはわかったけど、フェイントとどう関係するの?」

サラが僕に聞いた。


「いい質問だね。格闘ゲームの場合はグーチョキパーじゃなくて、攻撃、防御、投げになるんだね。防御は攻撃を防げるけど、投げを防げない」

僕がサラに説明する。


「防御してても投げられちゃうわけね」

サラが納得する。ある程度ゲーム独自の概念といえるだろう。


「なので相手に防御させて投げるということがしたいわけだね」

僕がサラに説明する。


「なるほど、わかった!そこでフェイントが出てくるのね!」

サラは大きく腕を動かしてポンと叩いた。


「そう、パンチをしようとして、ガードをさせたところを投げるというのが、格闘ゲー厶の基本的な概念なんだ。それを知らずにサラはいまやってのけたんだよね」

僕はサラに説明した。


「と、見せかけてキィィィィィックね」

サラが言う。さっきの技はそういう必殺技名だったようだ。


「そう、すごかったです!」

奈緒子が言う。


「単純にパンチしようとしたらガードしようとしたからキックに変えただけなんだけどね!」

サラが言う。


「キャンセル攻撃か」

「キャンセル攻撃ですね」

僕と奈緒子が言う。


「いや、なに!二人して!なにもキャンセルしてないけど?」

サラが言う。そうこれは格闘ゲームの特殊な用語といえる。


「格闘ゲームでは、特定の攻撃をすると、前の攻撃のモーションをキャンセルして素早く次に攻撃できるキャンセル攻撃というのがあるんだ」

僕が説明する。


「キャンセル攻撃?もさんすくみ?もよくわからないけど目の前の敵を倒したいとおもったらできた!」

サラは元気よく言った。


「天才のそれだ」

僕は笑った。そしてウォーマシンは立ち上がった。


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