第百十七話『最終コーナー』

「とりゃあああぁぁぁぁ!」

と言う掛け声とともに、ほとんど直角なんじゃないかという感じで軌道を変えて、追いかけてきた。

円軌道を描くという概念は、サラとカピバラ、コンビにはないようだ。


「負けないぞ!!」

サラが追いかけてきつつ笑った。


そして、最終カーブの戦いが始まる。

先頭は颯爽と走る奈緒子。

それを追う僕。


さらにそれを追う、脱線から復帰したサラ。


「あ、でもこれはなかなか」

と言いながら走る僕。

前回のカーブよりかなりスピードを落とさずカーブを曲がりきれた。


「あ、ジュンさんいいですね!コツつかみましたか?」

と後ろを確認する余裕のある、奈緒子。


「うん、なんとなくわかってきた!」

そう、奈緒子のライン取りを見ていたらなんとなく見えてきた。

奈緒子は常に安定した軌道を描いている。


僕とサラはめちゃくちゃだ。

つまり毎回違う軌道を描いてしまっている。

コントロールしきれていないということなのだ。


奈緒子は高速かつ、きちんと安定したラインを通っているのだ。


「とりゃあぁぁぁぁぁ」

そして、その乱れもお構いなしのサラ。


そして意外に速い。

カピバラも、緩急をつけるより、つまり速く走ったり遅く走ったりするより、ただいつも全速力の方が楽しいのかもしれない。


なにげにカピバラのモチベーションコントロールをしているのかもしれないサラだった。


「つまり、サラとカピバラは相性がいいってことだな!」

と僕が笑った。


「そうですね!サラちゃんとカピちゃんはなかなかいいコンビですね!」

と奈緒子も言った。あのデタラメ走法もなんだかんだであの二人にはあっているのかもしれない。

そもそもあの低重心の直進で振り落とされないのは、サラの体術があってこそではある。


そして最終コーナー。


「とりゃあああああぁぁぁぁあ」

と最後のラストスパートに向うサラ。


「負けませんよ!!」

と、前傾姿勢になる奈緒子。


「よし、行こう!」

とサイに語りかける僕。


三人のラストスパートが始まった。


ドッドッドと走る僕とサイ。

パカッパカッと走る奈緒子と馬。

ダダダダダと走るサラとカピバラ。


全員違うリズムで歩みを進めていた。

その音がそのまま全員のキャラクターを表しているかのようだった。


そして最初に到着したのは・・・


もちろん奈緒子だった。

「やりました!」

と小さくガッツポーズをしていた。


その姿はとても可愛らしかった。


「よし!二番!」

次に僕がゴールした。


「ぬおぉぉぉぉぉ、くやしーーー!」

とサラ、カピバラ、コンビも到着した。


「いやぁ、なかなかいい勝負だったよ!直線のサラ、安定の奈緒子って感じだね!」


「むぅぅぅぅ!くやしい!!」

とカピちゃんからジャンプして飛び降りるサラ。


「でも、カピちゃん頑張った!えらいえらい!」

とカビちゃんを撫でる。


「あー!楽しかった!!次はなんの勝負する?」

とサラがみんなに聞く。


「次は、勝負じゃなくてツーリングにしませんか?」

と奈緒子が言った。


うん。それは楽しそうだ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る