第九十九話『バンドマニア購入』
「クエスト終了ね、街に戻るわ!」
と水晶さんが言う。
僕らの体が光り、転送が開始された。
僕らは『冒険者の街』に戻ってきていた。
「よっしゃ、おつかれさん」
と、みんなに見えるように手を上げて、珊瑚が言う。
「お疲れ様でした!」
「お疲れ様でした!」
みんなで挨拶をした。
「ジュン達はこれからどうするんや?」
と、珊瑚が僕に聞く。
「うーん、僕は休みたいけど・・・」
と言いながらチラリと格闘少女のサラの方を見る。
そこには、キラキラと光る少女が見えた。
聞くまでもなく、顔に
『お姫様ベッド!』『お姫様ベッド!』『お姫様ベッド!』
と描いてあった。
「僕らは、これから買い物してから、買えるよ」
と、僕は空気を読んで、珊瑚に言う。
「よっしゃ、分かった、また今度な!私らは、家でゆっくり休むとするわ、な、瑠璃!」
「うん、つかれた」
「確かに、疲れたわね!」
と水晶さんも言い、三人は帰ることに決めたようだ。
「じゃあ、また今度会いましょう!みなさん」
と水晶さんが言い手を可愛らしくひらひらと振る。
「ほな!」
と、水晶さんとは対照的に、珊瑚が関西人らしく手を上げてくるりと背を向けた。
「またね、サラ」と瑠璃がサラに言った。
「ばいばいー」と瑠璃に応えて、両手を振るサラ。
大規模クエストを終えて、彼女たちは帰っていった。
「さってぇ!買い物するわよ〜!!」
彼女たちをしっかり見送った後。サラがピョンピョンしながらそう言った。
「さっきまでボロボロだったのに、この元気はどこから来るのだろう?」
僕がそう訊ねる。
「お姫様ベッドパワー!略して『姫パワー』」
僕の質問に、応えるサラ。
「ざっくり略したなぁ」と笑う僕。
「ベッドはどっか言っちゃった」と付け加える。
「『おひべパ』の方が良かった??ベッドも残して」と笑うサラ。『おひべパ』は『お姫様ベッドパワー』を一文字ずつ適当に取ったのだろう。
「それは、もはや何のことかわからない・・・」と僕。
少し考えて「『姫パワー』採用で・・・」言う僕。
「うむ。」
と、サラは腕を組んで深く頷いていた。
まず僕の買い物に向かった。僕は『ラスト・オンライン』の制作会社『アーカイブ社』が昔作った、ゲームセンター用のアーケードゲーム『バンドマニア』を購入した。特殊な電源だったはずだから、大丈夫かな、ブレーカ落ちないかな、と思ったので、店員さんに聞いたら、大丈夫との事だったので、安心した。
「どうやってもっていくの?それ」とサラが僕に聞く。とても持っていける重量ではない。
「もう、家の中にあるんだって!!」
「え、そうなの??超便利」
そう、リアルすぎて忘れていたが、ここはバーチャル空間なのだった。ところどころ、物理世界ではできない便利な現象が起きる。
「よーし、次は奈緒子ちゃんの『木目調の食器棚ね』!」と言うサラ。
やった!と胸に手を持ってきて、喜ぶ奈緒子であった。
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