第七十九話『お姫様ベッド』

「珊瑚ちゃん・・・これは・・・」

そこには、お姫様ベッドが置いてあった。純白のかわいらしいお姫様ベッドだった。


「だから言うたのに・・・」

と真っ赤になった顔を、両手で押さえる珊瑚。

珊瑚の部屋を勝手に散策して、格闘少女のサラは、お姫様ベッドを見つけて、喜ぶ。


「めちゃくちゃ、かわいいーーー!!」

と、サラは言いながら、お姫様ベッドの周りを歩く。どうやら隅々までチェックしているようだ、納得がいけば自分も同じものを買おうという算段だろう。


「やっぱり、ベッドは天蓋よね」

と、お姫様ベッド特有のカーテンをみて、にっこりと笑う。天蓋というのは、お姫様ベッド特有の、ベッドについてくる、天井とそこから、流れるように降りてくる、カーテンのようなものを指す。


「天蓋、これは、中世のお城などは天井が高かったため、埃がたまりやすかったから、ガードとして、取り入れられたんだ」と僕は、たまたま覚えていた、知識を口にした。

「お姫様のための、バリアーなんですね!」と奈緒子が、相づちを打つ。


「少女はいろんなものから、自分をガードしなきゃいけないからね!!」と、ちらりと僕を見て意味ありげなことを言った。

「心当たりがありません」と言いながら首をふるジェスチャーをサラに返した。


それを華麗にスルーして、サラは観察を続ける。

「これは、なかなかですなー」と、顎に手を当てて、低い声で言うサラ。白く半透明な天蓋を見ながら、感想を述べる。


「かわいいですね!」と同じく見ていた、魔法使いの少女、奈緒子も同意した。


「なるほど、だから、サラがお姫様ベッドをほしがったときに、特に突っ込まなかったのかぁ、いつもなら突っ込むのに」と、そのときのことを思い出しながら言った。


「珊瑚は少女趣味」と、いつのまにか寝室に来ていた、瑠璃が言った。

「ふ、ふん、わるいんか!!」と珊瑚が腕を組みながらそう言った。


「あ、抵抗をやめた」と僕は笑った。


「え!?全然わるくないよ!!と、話を聞いていたサラが肯定的な意見を口にした。

「お姫様ベッド同盟イエーイ!!」とハイタッチをするサラと珊瑚。

「ぃぇーぃ・・・」と、サラのノリに流されて、声を振り絞る珊瑚。もうやめて、珊瑚のライフはゼロよ!!


「じゃあ、サラちゃん、フリフリしたお洋服着ましょうよ!!」と、奈緒子が珊瑚に助け船をだしつつ、自分の願いを叶える一挙両得の話題転換を行った。

「それはちょっとなー、機動力が下がるし」

と、ばっさりと奈緒子の意見を却下するサラ。動きにくくなるのが嫌らしい。

「機動力・・・そういう理由だったのか」と僕が笑う。


「ジュン!!『服』と『ベッドやぬいぐるみ』がかわいいのは全然違うんだよ!!」ビシっと、宣言するサラ。

いろいろあるらしかった。


「逃げられました!」と奈緒子は僕の方を向いて、笑った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る